2024年5月20日月曜日

抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022 VRCZ executive summary更新版

 抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022

VRCZ executive summary更新版


日本人では主に副作用予防が目的

3-5日目(重症歴では3日目)に実施

PMでは3日目以降も濃度上昇の可能性あり

肝硬変患者も半減期延長

負荷投与なしの場合(予防投与など)、5-8日目

●目標トラフ値1μg/ml以上4μg/ml未満

●初日6mg/kgx2/day、2日目~3mg/kgx4/day

・経口薬はバイオアベイラビリティが80-90%を考慮、腎機能や透析での用量調整は不要

・肝機能に応じた用量調整は必要

・妊婦への投与は避ける

・アスペルギルス症では≧2 μg/mL を考慮する





2021年3月23日火曜日

アナフィラキシー アレルギー学会2020 教育講演など

食物アレルギーによるものが最も多いが、アナフィラキシーによる死亡は医薬品、ハチ毒が多い。

何故か? 曝露からショックまでの時間は、医薬品が5分、ハチ毒が15分、食物は30分。症状を呈するまでの時間が短い。

バイオマーカー ヒスタミン、トリプターゼの診断意義は低い。

診断

〇抗原がわからない場合

皮膚粘膜症状を必須条件とする。他の臓器症状があると診断。

〇アレルゲンが疑われる場合

〇既知のアレルゲンに曝露

鑑別診断:急性蕁麻疹や血管浮腫。

治療

・下肢挙上 

・アドレナリン0.01mg/kg 大腿外側に筋注 成人最大量0.5mg、小児0.3mg

(*適正量を投与するなら絶対的禁忌は存在しない。)

・酸素 6-8L/min マスク

・0.9%生理食塩水 全開で投与


・ヒスタミン 皮膚粘膜症状の緩和

・ステロイド 効果発現に時間がかかる。2相性の増悪に効果

・β2刺激薬 喉頭閉塞には無効である

・極軽症でない限り、アドレナリンの自己注射を処方する。同時に軽い症状に使用するために経口抗ヒスタミン薬、ステロイド薬を頓用で処方。原因不明で症状を繰り返す場合抗ヒスタミン薬を処方する。

・アクションプランなどの指導。

海外ではエピペンは2本セットで処方。気道閉塞症状、循環器症状、持続する消化器症状があれば使用する。

<アドレナリン処方が必須>

①重症のアナフィラキシー症状が1回でも出現

②特に喘息の様なリスク因子をもつ人

③外食での誤食の頻度が高い

④過去にアナフィラキシーをきたし、原因アレルゲンが同定できない。

<アドレナリン処方の必然性なし>

軽症(皮膚、粘膜症状のみ)


その他

WDEIA 小麦粉による運動誘発アナフィラキシー

運動により閾値を低下させる。運動がなくても症状が誘発される可能性あり。したがって運動しなければ大丈夫とは言えない。日常生活指導に注意。他のFDEIAにも当てはまると思われる。


皮膚症状がなくてもアナフィラキシー起こる

30-60%が特発性アナフィラキシー 必ずしも発症要因を認めない。

できるだけ速やかにアドレナリンim 大腿外側部に。絶対的禁忌無し。皮下や吸入投与は勧められない。

2相性反応。いったん症状が改善して4-12時間後に出現。







進行性フェノタイプを示す慢性線維化性間質性肺疾患

 進行性線維化を伴う間質性肺疾患

IPFは一般にFVCが年間約200ml低下する。


RAにおいてIP合併率が高くなってきている。理由は不明。IPを合併したRAは予後不良。RA-IP 5年生存率38%。生存期間中央値は2.9年。

RA-IPは思っていたより予後不良。

しかしすべてのRA-IPが進行するわけではない。

RA-UIPはIPFと同じく予後不良。

INBUILD試験

RA-IP Nintedanibが効く。他の抗炎症薬とどのように使用していくか。

抗ARS抗体陽性は免疫抑制剤併用の方が再燃がすくない。

抗MDA5抗体陽性例でも予後良好例が存在する。

慢性型、フェリチン>500 いずれも全例生存。(フェリチン上昇はマクロファージの活性化と関連?)

アスペルギルス症

 欧米    

①IPA    ②subacute IPA (CNPA) ③CCPA (complex aspergilloma)  

④simple aspergilloma

日本

①IPA  ②CPPA(旧CNPA)欧米のCNPAとCCPAを含む概念 ③simple aspergilloma


CNPAとCCPAはどう違うか? 本邦での検討。

2つの疾患は違うが、臨床的に区別はつかないという報告。Jpn J infect Dis 66;312-316,2013.

→2014年深在性真菌症ガイドライン。




微生物検査を使いこなそう~薬剤耐性菌を判定するために~

感染症学会西日本地方会


MRSA

どの抗菌薬のMICを見ればよいか

MPIPC (オキサシリン)

CFX(セフォキシン)

上記のいずれかがRならMRSAと判定する。

MPIPCとCFXともにRならmecA発現

MPIPCがSでとCFXがRならmecA低レベル発現

MPIPCがRでとCFXがSならBORSA:mecA以外の機序




VRE

VCM

TEIC参考

耐性遺伝子はvanA、vanB

vanA :VCM≦64、TEIC≦16 が目安

vanA :VCM16~64、TEIC≦1


ESBLs産生菌のMIC

以下のいずれかのMICが上昇

CAZ

CTX

CTRX

CPDX

AZT


以下のMIC値は通常パターン

TAZ/PIPC

CMZ


確認試験

CVA添加ディスクあるいは添加培地で5mm以上の阻止円拡大など・・


AmpC産生菌のMIC値はここを見る

以下の薬剤のMIC値が上昇

CTX

CTRX

CPDX

AZT

CMZ

以下の薬剤のMIC値は通常パターン

CFPM

CLSIに明確な判定基準はない。染色体性にAmpCを保有している菌種に注意。

遺伝子検査をしないと確定できない。



第434回熊本チェストカンファレンス

2020年11月26日

症例1

労作時呼吸困難を主訴とした63歳男性。

安静時SpO2 88%、労作時70%台。

労作時はRM 10L/minでもSpO2 80%

呼吸音異常なし。

D-dimerの上昇、ALPの上昇、LDHの上昇。


CT上は気管支血管側に沿ったすりガラス影、fissureの不整?小葉間隔壁の肥厚は少しあるようにも見えるが・・


refractory hypoxemiaがあり、D-dimerの上昇などから考えると血管系の異常だろう。

悪性腫瘍の有無がどうなのか

PTTMはありうる。PVODは? 


心エコー上右室収縮気圧は64mmHgと上昇。


診断はPTTM

現疾患は前立腺がん。PSA↑↑

肺動脈吸引細胞診でも悪性細胞を認めた。


タダラフィル、マシテンタン+抗前立腺腫瘍薬併用で救命。肺動脈収縮圧も低下(32mmHg)。


きわめて予後不良。平均生存期間は3-4週


discussion

血管拡張薬 適応はないがどう使う?


【補足】

1991年 von Herbay  Cancer

「悪性腫瘍において、肺の亜区域枝よりも末梢の細動脈への腫瘍塞栓に引き続き、内膜の線維・細胞性(fibrocelluar)肥厚により特徴づけられる病態であり、腫瘍塞栓部での凝血亢進と内膜肥厚により、肺動脈内腔の狭小化、あるいは閉塞をきたし、肺高血圧をもたらす。」

<PTTMの病理学的な特徴>

①細動脈の線維細胞性内膜肥厚     →PTTMの最も特徴的な所見

②腫瘍塞栓

③血栓の器質化、再疎通像

〇肉眼でも認識しうる太い肺動脈に認められる腫瘍塞栓→

〇血管外の浸潤巣の一部にみられる腫瘍塞栓     →これらはPTTMから除外される。


*PTTMにおける内膜の線維細胞性肥厚について

BMC Cancer 2014, 14:14

血管内の腫瘍塊のみでは肺高血圧症を惹起できない。血管内皮障害+腫瘍の内膜への付着により肺高血圧症がおこるとされる。


<PTTMの機序>

①細動脈レベルの腫瘍塞栓

②腫瘍細胞の内膜付着、内皮障害

③腫瘍細胞が局所でtissue factorなどの因子を放出

㋐凝固系の活性化⇒血栓形成

㋑炎症性メディエーターやVEGFを含む成長因子⇒血管内膜の線維細胞性肥厚→血管内膜の線維化

㋐㋑により血管内腔の狭小化・閉塞 →  肺高血圧症  DIC


<PTTMの進展経路>

1.大静脈系へ腫瘍が直接浸潤→右心系→肺動脈

2.腫瘍の所属リンパ管浸潤→胸管→上大静脈→右心系→肺動脈


フロアから、「末梢の採血で腫瘍細胞が認められるのか」という質問があったが、上記の進展経路を考えると末梢血での診断は難しいだろう。肺動脈吸引細胞診が重要。


症例2

86歳男性

1週間前からの倦怠感、食思不振で受診。検査前のvital checkでSpO2低下を認めた。

発熱あり。WBC 8870/μl、Neu 81.2%、CRP 19.9 mg/dl


CT画像は上葉から下葉にかけてすりガラス影、traction bronchiectasisもある。


この時期ならやはりCOVID-19を疑う。でなければIPか他のウイルス性肺炎など。


SARS-CoV2 PCR陽性。診断はCOVID-19。




CTで発見された小結節の扱い。Pure GGN、Heterogeneous GGN、Part-solid GGN。

 日本肺癌学会学術集会教育講演

肺癌縮小手術の理論と実際

mainのテーマとは外れるが・・


JTO 2016;11:1012-1028.

subsolid lesionsの観察研究

4.3±2.7年のfollow up


subsolid nodulesの3つのカテゴリー

①Pure GGN

②Heterogeneous GGN

(solidの部分が縦隔条件で消失)

③Part-solid GGN


pure GGNが2mm以上増加する確率

最大径と性別によって分けると

女性で最大径が10mm以下では5年後に2mm以上増加する確率は10%程度。男性でも10数%⇒経過観察可能な腫瘍。

Pure  GGNからPart-solid GGNが出現する確率は4.6%でほとんどない。

 

日本CT健診学会

https://www.jscts.org/pdf/guideline/gls5thfig201710.pdf

⇒CTで発見された小結節のope適応

①Solid:直径10mm以上のもの

②Part-solidまたはPure GGN:全体径≧15mmのもの

③Part-solid GGNで全体径はく15mmだがsolidの部分の径が>5mmのもの


縮小手術を行うときC/T ratioを重要視している。

C/T比:consolidationの最大径 / 最大腫瘍径

JTO 2011;6:751-6.

直径≦2cmの肺腺癌

C/T比が<0.25はnon-invasiveと考えられる。特異度98.7%

JCOG 0804ではC/T<0.25のGGO tumorに対するwedge resectionで

5年無再発生存率は99.7%