2013年7月4日木曜日

末梢肺野病変における,VBN併用極細径気管支鏡検査の有用性

末梢肺野病変におけるEBUS-GSの有用性が本邦より報告されている.



本研究は,末梢肺野病変における極細径気管支鏡±VBNについての検討.

直径30mm以内の末梢肺病変を有する350名の患者が登録された.
極細径気管支鏡+VBN群,極細径気管支鏡+CT axial画像群(VBN非併用群)に無作為に割り付けた.
結果
334例を解析.
diagnostic yieldについて;
VBN-assisted group (67.1%)
non-VBN-assisted group (59.9%) p = 0.173で有意差なし.
サブグループ解析;
右上葉の病変(81.3% vs. 53.2%, p = 0.004),
P-A X-ray films で見えない陰影(63.2% vs. 40.5%, p = 0.043,
末梢肺1/3にある病変(64.7% vs. 52.1%, p = 0.047),
VBN-assisted groupdiagnostic yieldは有意に高い.
結論
VBN併用極細径気管支鏡検査は末梢肺病変のdiagnositic yieldを改善しなかったが,subcategories (right upper lobe, invisible, peripheral third)において病変のdiagnositc yieldを改善した.
・VBN software (Bf-NAVI; Cybernet Systems, Tokyo, Japan)
an ultrathin bronchoscope (type XP260F, XP40; outer diameter, 2.8 mm; working channel diameter, 1.2 mm; Olympus Medical Systems)

 

2013年7月2日火曜日

IPFにおけるMUC5B Promoter Polymorphismとsurvival

Association Between the MUC5B Promoter Polymorphism and Survival in Patients With Idiopathic Pulmonary Fibrosis
JAMA, Published online May 21, 2013

Abstruct
IPF死亡に関する最近の予測モデルは,臨床的かつ生理学的パラメーターに基づいており,どの患者が進行するかを予測するには適度の(あまりよくない)価値を有する.予後モデルを改善させる能力に加えて,IPFの死亡に関与する遺伝的,分子生物学的特徴を同定することは,疾患背景に洞察を与え,臨床試験に情報を与える.

目的
肺線維化の進展に関与することが過去に報告されているMUC5B promoter polymorphism (rs35705950)が,IPFの生存に関与しているかどうかを検討した.

Design, Setting, and Participants
IPF患者の2つの独立したコホートにおける生存の後ろ向き研究.
INSPIRE cohortinterferon-γ1bトライアルに登録された患者(n=438; December 15, 2003–May 2, 2009; 81 centers in 7 European countries, the United States, and Canada.
Chicago cohort, Chicago大学間質性肺疾患クリニックよりリクルートされ登録された患者(n=148; 2007-2010).
INSPIRE cohortMMP-7の血中濃度と他の人口統計学的,臨床的共変数の効果を説明しMUC5B genotypeと生存との間の関係を示すために用いられた.
Chicago コホートは再現性の確認のため使用された.

Main Outcomes and Measures
主要エンドポイントは全原因死亡率.

結果
それぞれ、INSPIREコホートのGGGTTT遺伝子型は148例(34%),259例(59%)と31例(7%)であり,Chicago cohortはそれぞれ41 (28%)98 (66%)9 (6%)であった.
追跡調査期間の中央値はINSPIREコホートで1.6年,Chicagoコホートで2.1年であった.
追跡調査期間中、INSPIREコホートにおいて73例の死亡(GG 36例,GT 35例,TT 2例),Chicagoコホートにおいて64例の死亡(GG 26例,GT  36TT  2例)があった,両コホートにおいて未調整の2年間累積死亡率は, 複数のIPFリスクallele (T)のある患者において低かった⇒INSPIREコホート (0.25 [95% CI, 0.17-0.32] for GG0.17 [95% CI, 0.11-0.23] for GT0.03 [95% CI, 0.00-0.09] for TT) Chicagoコホート(0.50 [95% CI, 0.31-0.63] for GG0.22 [95% CI, 0.13-0.31] for GT0.11 [95% CI, 0.00-0.28] for TT)INSPIREコホートにおいてTTGT遺伝子型(IPFのリスクあり)はGG遺伝子型と比較して生存の改善と関連があった(hazard ratios,0.23 [95%CI,0.10-0.52] and 0.48 [95%CI,0.31-0.72], respectively; P<.001)
この所見はChicagoコホートでも再現された(hazard ratios, 0.15 [95%CI, 0.05-0.49]0.39 [95%CI, 0.21-0.70]respectively; P<.002).観察されたMUC5Bと生存の関係は、年齢、性別、努力性肺活量、一酸化炭素の拡散能力、MMP-7と治療状態から独立していた.INSPIREコホートとChicagoコホートにおいて,MUC5B遺伝子型の生存モデルへの追加は,有意にモデルの予測精度を改善した⇒ INSPIREコホートC=0.71 [95% CI, 0.64-0.75] vs C=0.68 [95% CI, 0.61-0.73]; P<.001,とChicagoコホート(C=0.73 [95% CI, 0.62-0.78] vs C=0.69 [95% CI, 0.59-0.75]; P=.01)

結論と意味
IPFを有する患者の間で,MUC5Bにおける一般的なリスク多型は,有意に改善された生存と相関があった.リスク評価を改良しこれらの所見の臨床意味を決定するために更なる研究が必要である.

Introduction
どのIPF患者が進行するかの予測に関して臨床的および生理学的パラメータは適度の価値を有するが、ケモカインリガンド18KL-6、サーファクタントプロテインASFTPA)とSFTPDを含む血清バイオマーカーは、独立してIPFのアウトカムに関連している.
近年では、IPF 患者においてMMP-7ICAM-1IL-8の高い血漿濃度は予後不良に関連していた.そして、臨床像と組み合わせると、これらの血漿蛋白はIPFにおける死亡率を予測した.
SFTPCSFTPA2、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT),テロメラーゼRNA成分(TERC)におけるまれな変異は、肺線維症の発現を伴った。
近年では、ムチン遺伝子(MUC5B)のプロモータ領域における一般的多型が、家族性,孤発性IPFの進行のリスク増加にアレル用量依存的に関与していることが明らかとなった.
肺のMUC5B発現がIPFを有する患者で14.1倍より高い間、MUC5Bプロモータ多型は無影響の参加者だけでこのコピーの上方制御を伴った。
本研究の目的は、MUC5B(遺伝子ID727897; http://www.ncbi.nlm .nih.gov/gene/727897)プロモータ多型(rs35705950)(以前、肺線維症の発現と関係していることが報告された)がIPFで生存と関連するか明らかにすること。


2013年6月28日金曜日

EBUS-TBNA

6月13日,27日
EBUS-TBNA検査の依頼があり以前勤務していた病院へ.1例はSa症と診断確定.他の症例は結果待ち.1例はepithelioid cellが認められるとの報告があり検査終了.検体が取れているかをROSE (rapid onsite evaluation)で確認するので,効率よく検査できるのはいい.
1例は他科からの依頼.全身状態等を考えるとindicationはどうなのか?早々に検査を終了.

第377回熊本チェストカンファレンス 2013年6月27日

377回熊本チェストカンファレンス
2013627

I.教育症例
平成とうや病院
Aex of IP後のリハ目的に入院となった症例.
2例とも縦隔気腫

II82歳,男性,past smoker
胸部異常陰影,貧血の精査目的.発熱なし,呼吸器症状なし(血痰なし).
両側胸水貯留(右>左)
左下肺野心臓と重なる陰影
右肋骨に腫瘤,骨破壊像
Hb 6.9 小球性低色素性貧血,CRP上昇
胸部CTでは2nd carinaの高さから尾側に広がり,左上葉の気管支を閉塞するような腫瘤影.

LC; PD-ADSQ,アルブミン値(Ab 2.3)の割にはTP(7.2)高い⇒plasma cytomaMPMなどが鑑別に挙がった.内視鏡所見は左2nd carinaの肥厚,上葉支口は壁外性に圧排し尖型閉塞,下葉支も尖型閉塞様に見えるが出血所見も認める,気管支内腔病変は画像上不明.

経気管支鏡生検(左下葉入口部)にて診断.定型的カルチノイド
核分裂像は認められず.免染;クロモグラニンACD56NSE, MIB-1陽性
骨シンチ;椎体,両側肋骨,左上腕,左大腿に多発骨転移

診断は定型的カルチノイド

肺腫瘍性病変の12%,そのうち定型カルチノイドが70-80%を占める.気管支肺原発のものが20%を占める.
5生率90-98%
FDG-PET;有用でないとする報告.
(下記の記載はUpToDateより)
PET scans — Positron emission tomography (PET) scanning with fluorodeoxyglucose (FDG) as a means of identifying a solitary pulmonary nodule as a carcinoid has yielded conflicting results, probably related to the small size of these tumors and the fact that they are often hypometabolic [11,55-57]. In a retrospective review of 16 patients with surgically resected bronchial carcinoids, preoperative PET detected only 12 (75 percent) [55].

III82歳,男性
Sinusitisにて4年前より近医耳鼻科通院中.
2年前から嗄声出現.同じころより労作性呼吸困難.かかりつけ医よりアドエアを処方されたが改善なし.吸気,呼気時の喘鳴.
採血データ上WBC, CRPの軽度上昇.腎障害(Cr 2.86, BUN 45.6).
FV curve
呼気流速が平坦となり,吸気流速にも制限がありそう.
胸郭内病変か,胸郭外病変か? Discussionがあった(吸気のcurveは小さいが,平坦ではないので胸郭内とする意見が多かった)が,断定するのは難しい・・.
http://edukobiyori.blogspot.jp/2012/05/whistling-in-dark.html
CT所見;vocal cord直下が全周性に狭窄.CT上狭窄部位は限局している印象.

鑑別疾患
Relapsing polychondritis
Granulomatosis with polyangiitis GPA, Wegener肉芽腫症)

診断
PR3-ANCA >350
GPAと診断.

UpToDateでは気道病変について以下の記載がある.
Tracheobronchial disease
Tracheobronchial involvement with GPA has several manifestations, including tracheal and bronchial stenosis, mass lesions (inflammatory pseudotumors), tracheobronchial malacia, and tracheoesophageal fistulae [10,27].

気管気管支病変
GPAによる気管気管支病変は、気管および気管支狭窄症、腫瘤性病変(炎症性偽腫瘍)、気管気管支軟化症と気管食道瘻10,27を含むいくつかの症状を示す
Associated symptoms include dyspnea, stridor, cough, sputum production, and hemoptysis.
関連する症状は、呼吸困難、喘鳴、咳、喀痰と喀血である.
Subglottic stenosis is the most common manifestation of tracheobronchial GPA; reported frequencies vary from 8 to 50 percent [27,30,31].
声門下狭窄症は、気管気管支GPAの最も頻度が高い徴候である;既報告の頻度は、8から50パーセントである27,30,31].
In a referral population, 22 percent of patients with GPA had subglottic stenosis [30].
referral populationにおいて、GPAを有する患者の22パーセントは、声門下狭窄を呈した30]。
Subglottic stenosis may be the sole manifestation of GPA and may be severe enough to necessitate tracheostomy [10,32].
声門下狭窄症はGPAの唯一の徴候であり,重篤で気管切開を必要とする場合がある10,32].
 Stridor is a sign of severe subglottic obstruction and requires urgent evaluation.
喘鳴は重篤な声門下閉塞の徴候で、緊急の評価を必要とする。
Bronchial ulceration and stenosis are less common than tracheal stenosis and may be asymptomatic or cause dyspnea, hemoptysis, and/or symptoms of postobstructive pneumonia.
気管支潰瘍と狭窄は気管狭窄より多くない.無症状のことや,呼吸困難喀血および/または閉塞後性肺炎の症状を引き起こすことがある.
Bronchial disease is almost always associated with GPA disease elsewhere.
気管支疾患は、他にほとんど必ずGPA病変を伴う.
Mass lesions in the trachea and bronchi due to GPA can ulcerate leading to hemoptysis or cause airway obstruction leading to dyspnea and postobstructive infections.
GPAによる気管・気管支の腫瘤性病変は、喀血や,気道閉塞による呼吸困難と閉塞後の感染症を引き起こす.
Uncommonly, bronchial involvement leads to symptoms and signs of bronchiectasis, such as productive cough, hemoptysis, wheezes, or crackles [9,10,33].
まれに、気管支病変は、気管支拡張症の症状と徴候(例えば湿性咳嗽、喀血、喘鳴またはクラックルを認める9,10,33].

症例IV
82歳,男性
右足関節内果骨折術前精査目的に施行した胸部Xpにて異常陰影を認めた.
Never smokerDMコントロールは良好.

rtS2tumor,胸膜直下より連続する3cm程度の腫瘤性病変.Pleural indentationあり.内部は均一,気管支拡張が目立つ.縦隔条件では腫瘤性病変は認められない.
Bubble like appearanceを呈する肺腺癌を第一に疑うが・・・.その他鑑別としてCOP/BOOP, TB, Sarcoidosis,寄生虫感染,emboliなど

気管支鏡検査にて診断.→(原発性)肺クリプトコッカス症

血清クリプトコッカス抗原128倍,組織学的に証明.
血清クリプトコッカス抗原の感度 60-80%,特異度90%
なお髄液中クリプトコッカス抗原は陰性
フルコナゾールにて治療.陰影はやや改善?
新しい陰影はhalo sign時間が経過すると,空洞形成が見られるので,時間の経過した陰影ではないか(自然治癒傾向?そうすると陰影は今後変わらないかも?)とのコメントあり.うーん・・・.