2012年12月7日金曜日

antisynthetase syndromeと間質性肺炎 MGH medical recordより

Case 37-2012 —A 21-Year-Old Man with Fevers, Arthralgias, and Pulmonary Infiltrates
N Engl J Med 2012; 367:2134-2146.

生来健康.自己免疫疾患の家族歴がある.本院入院前14ヶ月にわたり発熱,関節炎,皮疹,症状が続き,肺病変(間質性肺炎)も認めた.

鑑別疾患
Infection
Cancer
Collagen vascular disease
・成人発症Still
合わない点:rash hyperpigmentatedでありサーモンピンク様ではない.IPが合併することはまれ.
SLE
合わない点:IPの合併はまれ.ANA陰性→SLEの除外に関する感度は99%
RA
合わない点: RAそのもので発熱をきたすことは典型的でない.RArashなし(SLEDMのような他のCVDとの合併例を除く).本症例は抗CCP抗体陰性→RAR/Oが可能.
・シェーグレン症候群
合う点:anti-Ro抗体陽性,ILDの存在―ILDはシェーグレン症候群でもっともよくみられる.発熱,関節痛,ILDはシェーグレン症候群に合併する.
合わない点:シェーグレン症候群に特徴的なsicca symptomsがない.
MCTD
独立した疾患か否かという議論があるが・・・
筋炎,SLESScの特徴を有する.両手の浮腫,滑膜炎,筋炎,レイノー現象,acrosclerosisの臨床症状を有し,抗U1-RNP抗体陽性である.
本症例は抗U1-RNP抗体陰性であり,MCTDは否定的.
DM
antisynthetase syndromeの観点からDMが最も考えられる.

antisynthetase syndrome
antisynthetase抗体の1つが陽性,
②以下の3つの臨床症状のうち少なくとも1つが存在
 IP, 炎症性myopathy,炎症性多関節炎
他のsupporting featuresとして,発熱,レイノー現象,mechanic's hands(肥厚してひび割れた皮膚,ふつう手掌と指の橈骨側表面にみられる).
現在まで8つの抗体が同定されている.すべてtRNAをアセチル化する酵素に対して作用する.①anti-Jo-1,②anti-PL-12,③anti-PL-7,④anti-EJ,⑤anti-OJ,⑥anti-KS,⑦anti-YRS,⑧anti-Zo抗体.
ほとんどのstudyにおいて,antisynthetase抗体陽性患者の大半はILDを有すると報告されている.それに対して,既知のantisynthetase抗体陽性患者において筋炎とILDを有する患者の割合は1/3-2/3である.198例のIP患者においてantisynthetase抗体の存在を調べたretroの報告がある.この報告では13(16.6%)が陽性であった.このことはかつて特発性と考えられていたIPの理解を深めるものである.他のantisynthetase抗体,特にanti-PL-12(直接alanyl-tRNA synthetaseに作用)抗体は,臨床的に明らかな筋炎のないILD患者において認められた.このことは診断における混乱と診断の遅れを引き起こす.


本症例におけるANA陰性,抗細胞質抗体陽性 の意味は?
抗細胞質抗体は視覚的に同定可能は細胞内構造(ミトコンドリア,ゴルジ装置,細胞骨格),またはcytoplasmic antigenに反応する.本症例はhigh titerの抗細胞質抗体陽性である.したがってanti-PL-7, anti-PL-12抗体のような非Jo-1抗体を最も疑う.

Ro抗体陽性の意味
60-D Roは核に対する自己抗体,52-kD Roは細胞質に存在し,しばしばanitsynthetase抗体とともに認められる.これら2つの抗Ro抗体はanitsynthetase抗体とともにより重篤な肺疾患のリスクを示すかもしれない.

まとめ
anitsynthetase抗体が存在する可能性と,症状等を合わせて考えると,診断はanitsynthetase syndromeの観点からDMと考える(特にanti-PL-7, anti-PL-12抗体との関連を疑う).診断のためのもっとも有用な検査はmyositis自己抗体パネルである.そしてopen lung biopsy ILDの診断を確定する.
Clinical diagnosis
DM associated with antisynthetase syndrome
Anatomical Diagnosis
Interstitial lung disease (bronchiolitis and nonspecific interstitial pneumonitis) and myositis with anti–PL-12 autoantibodies (antisynthetase syndrome).

VATS下肺生検所見
Mixed pattern
呼吸細気管支における肉芽種性炎症,呼吸細気管支におけるorganizing myxoid fibrosis→それは閉塞性細気管支炎の構成要素になる(Fig 2B).他の領域は線維化と気腔の減少を伴った慢性器質化肺炎を示し (Fig 2C),びまん性の炎症を伴う間質の線維化を示していた(Fig 2D).この線維化所見はは非特異的間質性肺炎として示されるかもしれない.呼吸細気管支には,好中球が充満し膿を含むものもあった.この所見は急性細気管支炎の特徴である.胸膜の線維化を伴う慢性胸膜炎もまた存在した.