T.J. Corte
Eur Respir J 2012; 39: 661–668.
Abstruct
IIPにおいて,特異的なconnective
tissue disease (CTD)の診断が得られない時のCTD症状の意義ははっきりしない.我々は生検にて診断したIIP患者においてUCTD診断の臨床および予後的有用性を検討した.
外科的肺生検(1979-2005年)を受けたIIP患者を対象とした.NSIP 45例,IPF 56例であった.血清抗体が存在し,CTDを疑う症状や徴候の存在があるときUCTD ありと診断した.UCTDとNSIPの病理組織の関係を評価した.NSIPの病理組織を最もよく予測する臨床的アルゴリズムを,事前定義変数を使用して行った.UCTDとこのアルゴリズムの予後的有用性を評価した.UCTDはNSIPの31%(14例)に,IPFの13%(7例)に存在した.UCTDはsurvival benefitと相関がなかった.NSIPを予測するアルゴリズム(OR 10.4, 95% CI 3.21-33.67; p<0.0001)は,典型的なIPFのHRCT所見がないこと,そして1)demographic profileがcompatibleであること(50歳未満の女性)または 2)レイノー現象の存在,が含まれる.HRCT画像が典型的でないIPF患者において,このアルゴリズムはIIPの重症度と独立して,改善された予後を予測する(HR 0.35, 95% CI 0.14–0.85; p=0.02).
UCTDはNSIPの組織型と相関があるが,IIP患者におけるUCTDの意義は不明なままである.
Introduction
NSIPは特異的なconnective tissue diseases (CTDs)のACRクライテリアを満たし,肺線維化病変の診断のために肺生検を受けた患者においてNSIPはもっとも一般的な病理組織所見である.しかしCTDの特徴を示す患者の25%は特異的なCTDのACRクライテリアを満たさず,このような患者はUCTDとみなされる.通常,12ヶ月をこえてCTDの兆候や症状を示し自己抗体陽性である場合,UCTDが存在するとみなされる.UCTD患者の少数が経過中に特異的なCTDを示す.
IIP患者がUCTDの症状や,血清学的所見を有有することはまれではない(13-15).最近のexpert commentaryにおいて,多くのIIP患者が特異的CTDクライテリアを満たさないが明らかに有意な末梢臓器疾患を有する事実について焦点を当てた.これらの自己免疫疾患的特徴を有する患者の大半は,外科肺生検においてNSIPを有していた(17,18).すなわち肺においてUCTDはその特徴を「特発性NSIP」として示すことが示唆された(9).特発性NSIPとIPFの違いは重要な予後的,治療的意味を有する.しかしNSIPの信頼できる診断は外科的肺生検が必要である.最近の広い(broad),そして幾分controversialなUCTDの定義を用いてKinderらは(9)UCTDがIIP患者において一般的であること,特に少数ではあるが17例の生検にて確定診断された特発性NSIPの患者において一般的であることを示示した(9,16).このことから, UCTDの診断によって,外科的肺生検を行う前に特発性NSIP患者を見分けられることが示唆された.
これらの報告に基づいて,我々は以下の目的で検討を行った.
最初に,生検にて特発性NSIP,IPFと診断された患者のlarge cohortにおいてUCTDの診断とNSIP病理組織との関係を示す.
第二に,外科肺生検にてNSIPを同定すること関する,そしてIIP患者の予後評価におけるUCTD診断の臨床的有用性を明らかにする.
対象患者
Hospital databaseよりIPF, NSIPの外科生検の組織学的クライテリア,臨床クライテリアを満たす患者.期間は1978年1月1日から2005年6月30日.IPF 91例,NSIP 61例.→データ不備等で除外されたものがあり,最終的にIPF 56例,NSIP 45例を対象とした.
IPFの診断:ATS/ERS診断クライテリア(2000年)に基づく.
NSIPの臨床診断クライテリア:①両側,肺底部優位,または広範なクラックルを聴取,②肺底部,③拘束性障害,または拡散能の障害,④過敏性肺炎または器質化肺炎を示唆する特徴がない,⑤肺線維化の既知の原因がない,またはそれに関連した疾患がない.臨床診断はmultidisciplinary consensusによって確定した.
特異的CTDのACR診断クライテリアを満たす患者はいなかった.
患者のfollow up期間:死亡,または肺移植まで.または2008年6月1日まで.
101例中93例がfollow upを行えた.52例(51%)がfollow-up期間に死亡(中央値44ヶ月,range 2-258ヶ月).Follow-up期間に肺移植を受けたものなし.
病理組織
IIPsのATS/ERS分類に基づいて診断を行った.
HRCT
全例HRCT施行.typical IPF, intermediate or compatible with NSIP
consensus score:疾患の広がり,GGO, fine reticular changes, micro- and macrocystic changesの割合(5つのレベル),それぞれの所見の全体の広がり を計測.
Laboratory testing
CRP, ESR, ANA (indirect immunofluorescence, 3+以上なら陽性).ENAとdsDNAを測定.ENAが陽性ならanti-Ro, La, Scl-70, centromere, RNP, Jo-1抗体を測定.RFも測定.
UCTDの診断
特異的自己抗体(anti-Ro, La, Scl-70, centromere, RNP, Jo-1抗体)の少なくとも1つを有する,または抗ENAまたはANA陽性.更にCTDの症状,徴候の少なくとも1つを有する(レイノー現象,Sicca syndrome,関節痛,朝のこわばり,近位筋筋力低下)がある.我々はまた,Kinderら(文献9)が提唱したあまいUCTDの定義に患者が合致するかを調べた.
いわゆるIIPにおいて,CTDの症状は珍しくない.NSIPの21%,IPFの13%がUCTDのMosca's診断クライテリアを満たしていた.Kinderらの広いUCTDの診断クライテリア(文献9)を使用するとNSIPの71%,IPFの36%がUCTDと診断された.UCTDの診断の様に,特異的CTDクライテリアを満たさないCTDの特徴を有する患者の診断が臨床的,または予後的意義を有するかどうかは明らかでない.我々はUCTDとNSIPの間の関連を示したが,この関連は過去に報告された結果ほど強力ではなかった.我々はNSIP病理組織に特異的な臨床アルゴリズムを作成した,IPFに典型的なHRCT所見または病理学的情報がない時,この臨床的アルゴリズムを満たす患者またはUCTDの診断クライテリアを満たす患者はCPI(composite physiologic index=機能的重症度を示す)で補正すると生存を延長した.すなわちUCTDの診断は診断的外科生検を受けていないIIP患者において予後的価値を有する(特にHRCTの特徴がIPFに典型的でないとき).
UCTDはほとんど常に特発性NSIPと関連があるかもしれないことを示唆する初期の報告を再現することはできなかった.Kinderらによって定義されているUCTDは,NSIP患者の~70%に存在したが,IPF患者の1/3が広いKinderらのクライテリアを満たした.実際今回のstudyでは52%の患者がKinderらの広いUCTDの定義を満たし,NSIPの組織に関して中等度に特異的(64%)だが,比較的感度が高かった(71%).それと比較して標準的なUCTDのクライテリアを満足する患者の21%は比較的特異度が高く(88%),感度が低かった(31%)(no sensitive).
NSIPの病理組織に対して,特異的なUCTD診断クライテリアは,エンピリックに好まれるが,特に外科的生検ができないとき,標準的な診断クライテリアはNSIPに対してsensitiveではない.一方でKinderらの広いクライテリアはNSIPの病理組織に対してよりsensitiveであり,IPF患者をNSIPと誤分類する可能性がある.しかしそのような誤分類の臨床的または予後的な影響は明らかでない.Kinderらの診断クライテリアの価値は,リウマチ科医によって疑問視され,更に我々の所見は,その価値に対する更なる疑いを投じるものである.とりわけ,これらのクライテリアはIPFとNSIPを区別する際,診断的生検の代わりとして使用してよいという考えは,今回の研究結果からは賛成できないし,Kinerらのクライテリア(文献9)の使用が予後的評価に価値を与えることもない.
まとめると,我々の研究結果は,実地診療におけるUCTDの同定に関し, Kinderらのクライテリア(文献9)の将来的使用を支持しない.