2021年3月23日火曜日

微生物検査を使いこなそう~薬剤耐性菌を判定するために~

感染症学会西日本地方会


MRSA

どの抗菌薬のMICを見ればよいか

MPIPC (オキサシリン)

CFX(セフォキシン)

上記のいずれかがRならMRSAと判定する。

MPIPCとCFXともにRならmecA発現

MPIPCがSでとCFXがRならmecA低レベル発現

MPIPCがRでとCFXがSならBORSA:mecA以外の機序




VRE

VCM

TEIC参考

耐性遺伝子はvanA、vanB

vanA :VCM≦64、TEIC≦16 が目安

vanA :VCM16~64、TEIC≦1


ESBLs産生菌のMIC

以下のいずれかのMICが上昇

CAZ

CTX

CTRX

CPDX

AZT


以下のMIC値は通常パターン

TAZ/PIPC

CMZ


確認試験

CVA添加ディスクあるいは添加培地で5mm以上の阻止円拡大など・・


AmpC産生菌のMIC値はここを見る

以下の薬剤のMIC値が上昇

CTX

CTRX

CPDX

AZT

CMZ

以下の薬剤のMIC値は通常パターン

CFPM

CLSIに明確な判定基準はない。染色体性にAmpCを保有している菌種に注意。

遺伝子検査をしないと確定できない。



第434回熊本チェストカンファレンス

2020年11月26日

症例1

労作時呼吸困難を主訴とした63歳男性。

安静時SpO2 88%、労作時70%台。

労作時はRM 10L/minでもSpO2 80%

呼吸音異常なし。

D-dimerの上昇、ALPの上昇、LDHの上昇。


CT上は気管支血管側に沿ったすりガラス影、fissureの不整?小葉間隔壁の肥厚は少しあるようにも見えるが・・


refractory hypoxemiaがあり、D-dimerの上昇などから考えると血管系の異常だろう。

悪性腫瘍の有無がどうなのか

PTTMはありうる。PVODは? 


心エコー上右室収縮気圧は64mmHgと上昇。


診断はPTTM

現疾患は前立腺がん。PSA↑↑

肺動脈吸引細胞診でも悪性細胞を認めた。


タダラフィル、マシテンタン+抗前立腺腫瘍薬併用で救命。肺動脈収縮圧も低下(32mmHg)。


きわめて予後不良。平均生存期間は3-4週


discussion

血管拡張薬 適応はないがどう使う?


【補足】

1991年 von Herbay  Cancer

「悪性腫瘍において、肺の亜区域枝よりも末梢の細動脈への腫瘍塞栓に引き続き、内膜の線維・細胞性(fibrocelluar)肥厚により特徴づけられる病態であり、腫瘍塞栓部での凝血亢進と内膜肥厚により、肺動脈内腔の狭小化、あるいは閉塞をきたし、肺高血圧をもたらす。」

<PTTMの病理学的な特徴>

①細動脈の線維細胞性内膜肥厚     →PTTMの最も特徴的な所見

②腫瘍塞栓

③血栓の器質化、再疎通像

〇肉眼でも認識しうる太い肺動脈に認められる腫瘍塞栓→

〇血管外の浸潤巣の一部にみられる腫瘍塞栓     →これらはPTTMから除外される。


*PTTMにおける内膜の線維細胞性肥厚について

BMC Cancer 2014, 14:14

血管内の腫瘍塊のみでは肺高血圧症を惹起できない。血管内皮障害+腫瘍の内膜への付着により肺高血圧症がおこるとされる。


<PTTMの機序>

①細動脈レベルの腫瘍塞栓

②腫瘍細胞の内膜付着、内皮障害

③腫瘍細胞が局所でtissue factorなどの因子を放出

㋐凝固系の活性化⇒血栓形成

㋑炎症性メディエーターやVEGFを含む成長因子⇒血管内膜の線維細胞性肥厚→血管内膜の線維化

㋐㋑により血管内腔の狭小化・閉塞 →  肺高血圧症  DIC


<PTTMの進展経路>

1.大静脈系へ腫瘍が直接浸潤→右心系→肺動脈

2.腫瘍の所属リンパ管浸潤→胸管→上大静脈→右心系→肺動脈


フロアから、「末梢の採血で腫瘍細胞が認められるのか」という質問があったが、上記の進展経路を考えると末梢血での診断は難しいだろう。肺動脈吸引細胞診が重要。


症例2

86歳男性

1週間前からの倦怠感、食思不振で受診。検査前のvital checkでSpO2低下を認めた。

発熱あり。WBC 8870/μl、Neu 81.2%、CRP 19.9 mg/dl


CT画像は上葉から下葉にかけてすりガラス影、traction bronchiectasisもある。


この時期ならやはりCOVID-19を疑う。でなければIPか他のウイルス性肺炎など。


SARS-CoV2 PCR陽性。診断はCOVID-19。




CTで発見された小結節の扱い。Pure GGN、Heterogeneous GGN、Part-solid GGN。

 日本肺癌学会学術集会教育講演

肺癌縮小手術の理論と実際

mainのテーマとは外れるが・・


JTO 2016;11:1012-1028.

subsolid lesionsの観察研究

4.3±2.7年のfollow up


subsolid nodulesの3つのカテゴリー

①Pure GGN

②Heterogeneous GGN

(solidの部分が縦隔条件で消失)

③Part-solid GGN


pure GGNが2mm以上増加する確率

最大径と性別によって分けると

女性で最大径が10mm以下では5年後に2mm以上増加する確率は10%程度。男性でも10数%⇒経過観察可能な腫瘍。

Pure  GGNからPart-solid GGNが出現する確率は4.6%でほとんどない。

 

日本CT健診学会

https://www.jscts.org/pdf/guideline/gls5thfig201710.pdf

⇒CTで発見された小結節のope適応

①Solid:直径10mm以上のもの

②Part-solidまたはPure GGN:全体径≧15mmのもの

③Part-solid GGNで全体径はく15mmだがsolidの部分の径が>5mmのもの


縮小手術を行うときC/T ratioを重要視している。

C/T比:consolidationの最大径 / 最大腫瘍径

JTO 2011;6:751-6.

直径≦2cmの肺腺癌

C/T比が<0.25はnon-invasiveと考えられる。特異度98.7%

JCOG 0804ではC/T<0.25のGGO tumorに対するwedge resectionで

5年無再発生存率は99.7%



2021年2月10日水曜日

尿路感染症の適切な治療期間

 急性単純性腎盂腎炎、グラム陰性桿菌菌血症

提出菌が抗菌薬に感受性があり、治療反応が良好なら治療期間7日間は妥当。

膀胱炎

CPFX、ST合剤を用いた3日間が最短。

LVFX単回投与も検討されるが、E.coliの感受性は問題。

NSAIDSのみによる加療は抗菌薬加療と比較して、症状が強く、追加処方が多くなるかもしれない。

2020年12月10日木曜日

HPVワクチンは子宮頸がん予防ワクチンである

 https://www.nejm.jp/abstract/vol383.p1340

「HPVワクチンは子宮頸がんの発症を予防するエビデンスはない」と主張してきた反ワクチン派の主張にとどめを刺す論文が10月New Engl J Medに公開された。

「薬害」運動が陥りやすい問題

健康被害の問題のみを訴えるのならまだ理解できるが、「効果がないのに上市され使用されている!」と何者かが運動をミスリードし始める。

それじゃあ効かない薬やワクチンがなぜ上市され使用される?

→「金儲けに走る製薬メーカーや、製薬メーカーから金をもらっている研究者、それを黙認する国の陰謀だ。」

こうなると、某トランプ支持者の陰謀論と本質は変わらない。陰謀論が根底にある運動はカルト化して外に広がらなくなる。

イレッサに対する薬害訴訟も然り。

イレッサは肺腺癌治療の歴史において、個別化治療の輝かしい幕開けを築いた薬剤であることは今や誰も否定できまい。

IV期肺腺癌の患者は年単位の生存が期待できるようになった。かつて10か月程度で患者がほぼ全例死亡していた時代と隔世の感がある。




2020年10月29日木曜日

PTTM

2019年内科学会学術講演会CPCより

PTTM  pulmonary tumor thrombotic microangiopathy

症例は60歳代の男性、主訴は労作時呼吸困難、咳嗽

縦隔リンパ節腫脹、肺内は気管支血管側に沿った微細粒状影。

診断は

1.低分化型腺癌(印環細胞癌)(骨転移、癌性リンパ管症、リンパ節転移)

2.PTTM


1991年 von Herbay  Cancer

「悪性腫瘍において、肺の亜区域枝よりも末梢の細動脈への腫瘍塞栓に引き続き、内膜の線維・細胞性(fibrocelluar)肥厚により特徴づけられる病態であり、腫瘍塞栓部での凝血亢進と内膜肥厚により、肺動脈内腔の狭小化、あるいは閉塞をきたし、肺高血圧をもたらす。」

<PTTMの病理学的な特徴>

①細動脈の線維細胞性内膜肥厚     →PTTMの最も特徴的な所見

②腫瘍塞栓

③血栓の器質化、再疎通像

〇肉眼でも認識しうる太い肺動脈に認められる腫瘍塞栓→

〇血管外の浸潤巣の一部にみられる腫瘍塞栓     →これらはPTTMから除外される。


*PTTMにおける内膜の線維細胞性肥厚について

BMC Cancer 2014, 14:14

血管内の腫瘍塊のみでは肺高血圧症を惹起できない。血管内皮障害+腫瘍の内膜への付着により肺高血圧症がおこるとされる。


<PTTMの機序>

①細動脈レベルの腫瘍塞栓

②腫瘍細胞の内膜付着、内皮障害

③腫瘍細胞が局所でtissue factorなどの因子を放出

㋐凝固系の活性化⇒血栓形成

㋑炎症性メディエーターやVEGFを含む成長因子⇒血管内膜の線維細胞性肥厚→血管内膜の線維化

㋐㋑により血管内腔の狭小化・閉塞 →  肺高血圧症  DIC


<PTTMの進展経路>

1.大静脈系へ腫瘍が直接浸潤→右心系→肺動脈

2.腫瘍の所属リンパ管浸潤→胸管→上大静脈→右心系→肺動脈

本症例は原発巣の静脈浸潤が明らかでなく、リンパ管侵襲が高度であり、2の機序が考えられる。


かつて担当したcase

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17539970/

その他の報告

http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/049020122j.pdf

2020年10月28日水曜日

ESBL産生菌 セファマイシンで治療可能か 

日本感染症学会講演より

 Amber分類クラスAあるいはクラスDに属するペニシリン系薬を好適基質とするβーlactamaseの内、第3世代や第4世代に分類されるセファロスポリン系薬を分解する酵素を指す。

当初ESBLはオキシイミノ系β-lactam薬(CTX, CAZ, CTRXなど)に活性が広がったTEM及びSHV型酵素を指しており、後にCTX-M型やCFPMに対する活性が増加したOXA型や変異型AmpC型なども含んで定義されるようになった。

CLSI document

①CTX, CAZ, CTRX, CPDX, AZTのいずれかに耐性を示す菌株で疑い、

②CVAの添加によって、これらの薬剤に対する感受性が回復する菌株をESBL産生菌とする。


in vitroの特徴

①セファマイシン系およびカルバペネム系薬は分解できない。

②オキシイミノ系β-lactam系薬内で感受性が異なって示されることがある。

→TEM型、SHV型はCFPMやPIPC/TAZに感性の様に見える。

 inoclulum effectにより接種菌量によって感受性が変化。

見かけ上CAZやCFPMが感性を示す場合、実際に治療してみると、中間感受性で100%、感性で54%が治療失敗という報告がある。J Clin Microbiol 2001;20:2206-2212.


ならばCarbapenem系か?しかし新たな耐性誘導が懸念される。

<ESBL産生菌治療の代替薬>

BLBLIs

PIPC/TAZ

CTLZ/TAZ     Ceftrozan-Tazobactam

CAZ/AVI       Ceftazidime-Avibactam

Cephamycins

Cefoxitin, Cefotetan, Cefmetazole, Flomoxefなど

Temocillie

Aminoglycosides

Fluoroquinolones

Fosfomycin

Tigecycline

セファマイシン系

 セファマイシン

 オキサセフェム

ESBLを含む複数のβ-lactamaseに安定

①少ない菌量(105-106 cfu/ml)、多い菌量(107-108 cfu/ml)でもTEM型もしくはSHV型ESBL産生菌への活性は変わらない。

②高い接種菌量でもin vitroでは高い活性を維持。


ESBL産生菌に対するセファマイシンの効果(臨床研究)について

多くが菌血症とUTIを対象としている。Carbapenem系と比較した臨床研究であるが少数。

多くがCarbapenem系と比較して同等の効果とされているが、①Carbapenem系投与群で重症例が多い傾向、②サンプルサイズが少ない、③negativeな結果はMICが高い


全例でCephamycinsの使用にはならないだろう

Cephamycin耐性ESBL産生菌の問題

外膜蛋白の変異

ポーリン欠損

AmpC β-lactamase産生株    が含まれる


Cephamycin系感性であっても耐性機序の確認が必要

特にMIC値が高い株   AmpCの関与


まとめ

ESBL産生菌感染症においてカルバペネム系薬の代替としてセファマイシンを使用するのは以下の場合

①軽症から中等症の初期治療である場合(尿路感染症、菌血症)

②病態が安定し、de-escalationとして選択する場合

使用においては、セファマイシンへの抗菌薬感受性を確認することが条件。

→ESBL産生以外の耐性機序がないことを確認

 AmpC産生株やポーリン欠損の様な耐性化の懸念。