2020年10月28日水曜日

ESBL産生菌 セファマイシンで治療可能か 

日本感染症学会講演より

 Amber分類クラスAあるいはクラスDに属するペニシリン系薬を好適基質とするβーlactamaseの内、第3世代や第4世代に分類されるセファロスポリン系薬を分解する酵素を指す。

当初ESBLはオキシイミノ系β-lactam薬(CTX, CAZ, CTRXなど)に活性が広がったTEM及びSHV型酵素を指しており、後にCTX-M型やCFPMに対する活性が増加したOXA型や変異型AmpC型なども含んで定義されるようになった。

CLSI document

①CTX, CAZ, CTRX, CPDX, AZTのいずれかに耐性を示す菌株で疑い、

②CVAの添加によって、これらの薬剤に対する感受性が回復する菌株をESBL産生菌とする。


in vitroの特徴

①セファマイシン系およびカルバペネム系薬は分解できない。

②オキシイミノ系β-lactam系薬内で感受性が異なって示されることがある。

→TEM型、SHV型はCFPMやPIPC/TAZに感性の様に見える。

 inoclulum effectにより接種菌量によって感受性が変化。

見かけ上CAZやCFPMが感性を示す場合、実際に治療してみると、中間感受性で100%、感性で54%が治療失敗という報告がある。J Clin Microbiol 2001;20:2206-2212.


ならばCarbapenem系か?しかし新たな耐性誘導が懸念される。

<ESBL産生菌治療の代替薬>

BLBLIs

PIPC/TAZ

CTLZ/TAZ     Ceftrozan-Tazobactam

CAZ/AVI       Ceftazidime-Avibactam

Cephamycins

Cefoxitin, Cefotetan, Cefmetazole, Flomoxefなど

Temocillie

Aminoglycosides

Fluoroquinolones

Fosfomycin

Tigecycline

セファマイシン系

 セファマイシン

 オキサセフェム

ESBLを含む複数のβ-lactamaseに安定

①少ない菌量(105-106 cfu/ml)、多い菌量(107-108 cfu/ml)でもTEM型もしくはSHV型ESBL産生菌への活性は変わらない。

②高い接種菌量でもin vitroでは高い活性を維持。


ESBL産生菌に対するセファマイシンの効果(臨床研究)について

多くが菌血症とUTIを対象としている。Carbapenem系と比較した臨床研究であるが少数。

多くがCarbapenem系と比較して同等の効果とされているが、①Carbapenem系投与群で重症例が多い傾向、②サンプルサイズが少ない、③negativeな結果はMICが高い


全例でCephamycinsの使用にはならないだろう

Cephamycin耐性ESBL産生菌の問題

外膜蛋白の変異

ポーリン欠損

AmpC β-lactamase産生株    が含まれる


Cephamycin系感性であっても耐性機序の確認が必要

特にMIC値が高い株   AmpCの関与


まとめ

ESBL産生菌感染症においてカルバペネム系薬の代替としてセファマイシンを使用するのは以下の場合

①軽症から中等症の初期治療である場合(尿路感染症、菌血症)

②病態が安定し、de-escalationとして選択する場合

使用においては、セファマイシンへの抗菌薬感受性を確認することが条件。

→ESBL産生以外の耐性機序がないことを確認

 AmpC産生株やポーリン欠損の様な耐性化の懸念。