2012年8月9日木曜日

肺の血管炎① IPIPCについて

The Pulmonary Vasculitides

AJRCCM 2012;186:216-224.

このレビューのなかで,肺の血管炎をきたす4つの疾患が挙げられている.①GPA, MPA, CSS,そして④Idiopathic pauci-immune pulmonary capillaritis (IPIPC) である.
IPIPCはGPA,MPA,CSS, CVDなどがなく,抗基底膜抗体やANCAは陰性で,組織における補体の沈着がなく,systemic vasculitisを疑う所見のないというものだが,組織で毛細血管炎を認める以外は陰性所見ばかりで,どちらかというとwaste basket的存在?

IPIPCについて本文中に次のような記載がある.

Idiopathic pauci-immune pulmonary capillaritis (IPIPC) is an isolated small vessel vasculitis that by definition is isolated to the lungs and, hence, presents with diffuse alveolar hemorrhage as its primary clinical manifestation (35, 36). In a case series of 29 patients who presented with diffuse alveolar hemorrhage, 8 of these patients (28%) were found to have IPIPC (35). Clinically, the entity appears to behave as a “lung-limited MPA,” and as such, decisions regarding the management of IPIPC are extrapolated from the AAV (ANCA-associated vasculitis) experience and data.

ここに引用されている文献35は以下の論文である.最初にIPIPCを報告したこの論文ではidiopathicではなくisolated pauci-immune pulmonary capillaritisと記載されている.


Diffuse Alveolar Hemorrhage with Underlying Isolated, Pauciimmune Pulmonary Capillaritis

AJRCCM 1997;155:1101-1109.

要旨
肺の毛細血管炎から発症するびまん性肺胞出血(DAH)は,全身の血管炎とCVDを伴うことが典型的である.全身性疾患のない孤立性肺毛細血管炎によるDAHが,抗好中球細胞質抗体を伴う患者に出現する.しかし,孤立性肺毛細血管炎+DAHは,臨床,血清学的に基礎疾患のない患者で示されていない.そのような患者を示すために,7か所のDenver hospitalsより, DAHがありかつ生検にて肺毛細血管炎を有する29例の患者のretrospective chart reviewを行った.8(28%)が臨床,血清,組織学的に基礎疾患を伴わない孤立性肺毛細血管炎(isolated pulmonary capillaritis)と診断された.その年齢中央値は30歳であった.職業や薬剤の暴露との関連は認めなかった.全例が下気道症状を有していた;7例は上気道症状を有していた.全身性疾患や糸球体腎炎は認めなかった.全例好中球細胞質抗体陰性であった.他の血清所見に有意な所見はなかった.肺組織の直接免疫蛍光検査では5例で陰性であった.6例は急性呼吸不全を示し,4例は人工呼吸管理を要した.最初の入院で1例が死亡した;7例は生存した.追跡期間中央値は43か月(7-73か月)であった.5例は寛解状態にある.2例はDAHの多発性の再発があったが,治療中に全身疾患の出現はなかった.ここに我々は臨床,血清,組織学的に基礎疾患のない孤立性肺毛細血管炎によるDAHの特徴を示した.このグループの予後は良好であった.

29例が毛細血管炎によるDAHの組織所見を示した.28例は開胸または胸腔鏡下肺生検で診断,1例がTBLBで診断.

毛細血管炎の診断クライテリアは以下の通り.

The criteria for diagnosis of pulmonary capillaritis included the following: patchy infiltration of alveolar septa by neutrophils, accompanied by nuclear dust; local expansion, disruption, and necrosis of the alveolar septa which is sometimes replaced by the neutrophil infiltrate; proteinaceous exudate with nuclear debris within alveolar spaces; and acute and chronic alveolar hemorrhage containing fragmented neutrophils (13).

→この病理所見でcapillaritisが証明できているのか?更に言うと,この所見でIPIPCと特発性肺ヘモジデローシスが鑑別できるのか素人にはわかりませんな.

Lung immunofluorescence
肺組織に対し,IgA-IgMの免疫グロブリン,アルブミン,補体の沈着を調べた.行ったのは5例.

死亡例 免疫抑制剤治療に関連した敗血症性合併症で死亡 

考察の中で成人発症のIPH(特発性肺ヘモジデローシス)との鑑別について触れている.
IPHの病態について2000年日本呼吸器学会誌 岸本らの報告を引用させていただく.

IPH の原因は不明であるが,Soegel らは肺胞上皮細胞の発育と機能不全により,肺胞毛細血管領域に出血すると述べている.一方,Ceelen らは弾性線維の異常を血管破綻の原因としている.また,Crussi らは活動期の小児の肺生検組織の検討で,弾性線維の異常はなく,基底膜の異常を血管破綻の原因としている.」

 IPIPCIPHの鑑別には,血管炎の有無が重要ということであろう. TBLBでは証明は困難である.胸腔鏡下肺生検が必要となる.