Medscapeより.
Pathology of Airway-Centered Idiopathic Interstitial Pneumonia
Airway-centered idiopathic fibrosis (ACIF)は,比較的最近報告された疾患単位であり,気道線維形成と慢性間質性肺疾患の合同の所見を認める.
その特徴は,女性優位,呼吸困難の進行性発症と乾性咳である.
組織学的に,それは細気管支中心性肺障害パターンの存在が小葉中心の線維化と軽度の慢性炎症性細胞浸潤をもたらし,それは周囲の間質に及ぶことを示している.
ACIFはまず最初に2002年,「idiopathic bronchiolocentric interstitial pneumonia」としてYousemらによって述べられた.
著者らは,進行性呼吸困難と乾性咳の患者から得られた楔状生検組織において,細気道線維化を伴った細気管支中心性慢性炎症のユニークな組織像を有する10例の患者を報告した.
airway-centered idiopathic fibrosisという言葉は2004年Churgらによって作られた用語である.[2]
Epidemiology
ACIFは比較的新しい疾患単位である,そして,その正確な発生率と有病率はわかっていない.
2つのcase seriesにおいて,それぞれ10例と12例の患者が報告された.
更にこの疾患の単一症例報告が4つ存在する.
ACIFは,いくつかの名称(例えばidiopathic bronchiolocentric interstitial pneumonia,centrilobular fibrosis,peribronchiolar metaplasia)で報告されてきた.
前述のように,この疾患は,女性が多い(男:女=1:2).
年齢の範囲は広く(23-69歳)で平均年齢46歳である.
白人の,アフリカ系アメリカ人,中国人の報告がなされている.
Etiology
ACIFの病因は,明らかでない.ACIFはさまざまな有害な環境因子への暴露から生じると推測する者もいる.
文献で報告された患者はcurrent smokersまたはex-smokersであり,タバコの適度の消費者または元喫煙者であったが,喫煙はその病因に対し有意に寄与しているとは考えられていない.
さまざまな著者は,病因病態において役割を果たすことが推測される2,3の可能性を提案した.
Yousemらは,ACIFが過敏性肺臓炎の燃え尽きた相(burnt-out phase)または非典型例である可能性を示唆した.[1]
彼らのcase seriesにおいて鳥暴露歴のある2例の患者が報告された.
血清沈降素はこれらの患者で陰性だった,肺生検は過敏性肺炎に類似の組織像を示したが,広範な線維化と肉芽腫のない炎症の乏しい組織であった.
近年,組織学に関してACIFパターンを伴い,過敏性肺炎の臨床,放射線学的および血清学的evidenceを有した1例が報告された.
しかしながら,Churgらによる2番目に大規模なseriesにおいて,過敏性肺炎の臨床的,血清学的,組織学的evidenceを見つけることはできなかった.[2]
その代わりに,彼らはその患者コホートにおいて,さまざまな環境物質(例えば木煙とチョーク)への暴露歴を記録した;しかしながら,病因病態でのそれらの役割は,確立されなかった.
全体として,ACIFは現在知られていない環境因子に反応して,肺損傷のパターンを示している可能性がある.
de Carvalhoらは,特発性肺線維症の臨床,放射線学的および組織病理診断を有する患者から得られる肺生検の後向き分析を行って,小葉中心性線維化の組織像を有する12例の患者を見つけた.[3]
12例の患者は,58.4歳の平均年齢で,男女比は同じであった.
それらの研究の興味深い発見は細気管支内腔の中の異物の存在(41%の症例)と細気管支上皮の広範囲な壊死が再生に至りつつある所見(91%の症例)であった.その特徴は他の著者によって示されなかった.
これらの所見に基づいて,著者は細気管支上皮の壊死性変化と同様に線維化は胃内容物の慢性吸引に起因することがありえると仮定した.
de Carvalhoらによって示されたパターンは,ACIFと異なるように見える.ACIFは気管支中心性の線維化が優位な特徴であり,壊死や再生のないintactな細気管支上皮を伴っていた.
更にその研究は先行研究との比較のため,予後に関するデータを含まなかった.
福岡らは,間質性肺疾患の病歴を有する15例の患者の直視下生検において,細気管支周囲の異形成(PBM)を唯一の組織学的所見と報告した.[4]
この研究において,PBMは実態的人口統計学でACIFと類似しているようである.両者とも類似の年齢集団を示し,女性優位であった.
しかしながら,予後に関して,ACIFと対照的にPBMを有するすべての患者(2.4年の平均追跡期間)は,予後良好であり死亡例の報告はなかった.
PBMはこれまで慢性間質性肺疾患患者から得られる肺生検のかなりの割合において,全く臨床的な意義のない偶発的に見つかった組織所見と報告されてきた.
PBMがACIFの進行段階を示しているのか,または意義のない偶発的な発見なのか否かわかっていない.
現在では,ACIFの病因病態において確立した役割を有することが知られている因子はない.
より大規模な数の被験者における更なる研究は,その正確な原因を解明するために必要である.
特発性であることは驚くことではない.それは他の特発性間質性肺炎と同じである.
Location
ACIFは上葉から始まり後に下葉に広がる.Clinical Features and Imaging
ACIFを有する大部分の患者は,呼吸器症状を呈する.
進行性呼吸困難と慢性咳嗽は,最も頻度が高い症状である.
喘鳴と胸痛は,まれな主症状である.
身体検査で,両側肺底区にinspiratory cracklesが聴取される.
肺機能試験は拘束性のパターンを明らかにする.すなわちTLC,FVC,FEV1とDLcoの減少を伴う.
RV/TLCとFEV/FVCは,正常範囲内である.
細気管支肺胞性洗浄(BAL)液分析は,いかなる特定の所見も示さない.
それは,1-4%の好酸球を伴い,リンパ球の軽度増加を示すことがある.
胸部X線は,両側肺底区に網状間質性陰影,中枢側に有意な広汎性粒状網状影,気管支壁の肥厚と小さい中心性リング状陰影を示す.
HRCTは,肥厚した気道壁と周囲の線維形成で気管支血管束周囲の間質性の濃厚化と牽引気管支拡張症を示す.
中心気道に隣接した複合的な線維性腫瘤は,みられる場合がある.
細気管支拡張と蜂巣肺は,あまり見られない特徴である.
まれに,GGAが認められることがある.
Gross Findings
マクロ像は非常に限られたデータしかない.Colombatらは,ACIF類似の障害と診断された患者からの移植肺においてマクロ像を報告した.[5]
肺は滑らかな胸膜面を有し小さかった,そして気管支血管周囲と,細気管支血管周囲束線維化肥厚像は下葉においてより明らかだった.
上葉と中葉はびまん性線維化を示した.しかし,蜂巣肺変化は示されなかった.
Yiらは,楔状生検の割面を軽微なねばり強い性質を伴った灰白色と報告した.[6]
Microscopic Findings
名前が指示するように,ACIFは二次小葉において小葉中心を有意に傷害する気道中心性疾患である.肺楔生検標本は,低倍率(下の画像を参照)で,病変の優位な細気管支中心性パターンを伴った斑状分布を示す.
細気管支壁は,内腔のゆがみを伴い肥厚する.
図1) 気道中心性特発性線維症(ACIF).弱拡大において,細気管支と血管周囲に存在する優位な小葉中心性線維化を認め,小葉辺縁はスペアされる.
強拡大において,細気管支は細気管支周囲上皮下または粘膜子遊走の線維化を認める.線維化は全くないか,軽度の単核球性炎症細胞浸潤(下の画像を参照)を伴う.
図2)気道中心の特発性線維形成(ACIF).線維形成と平滑筋過形成を示している細気管支壁.細気管支に存在する上皮はintactである.
線維化は間質性中隔に達しており,次第に消退する.
慢性の炎症細胞浸潤は,それが存在する場合,細気管支周辺に認め,そして,細葉辺縁は比較的スペアされ周囲の間質中隔へ及ぶ.炎症性の構成要素は,Churgらによって報告された症例シリーズと比較してYousemらによって述べられる症例においてより顕著だった.[2, 1]
Churgらによって述べられるように,報告される細気管支中心性特発性間質性肺炎はおそらくACIFの炎症相である.[2]
細気管支と血管壁の平滑筋は,過形成を示す可能性がある.
隣接している線維性肺胞壁は,細気管支異形成を示す可能性がある.
細気管支内腔と肺胞腔は,最小の量の肺胞マクロファージを含む.
胸膜下および小葉辺縁のスペースは,線維形成と炎症から比較的スペアされる.
形態的なリモデリングはない.
顕微鏡的蜂巣肺はまれであるが,認められることがある.
陰性所見:
細気管支内腔または肺胞腔には,器質化組織ポリープを認めない.
有意な炎症は通常ない.そして,fibrogenic fociは存在しない.
間質は,肉芽腫性炎症を示さない.
Special Stains/Immunohistochemistry
マッソントリクローム染色法(下の画像を参照)は,細気管支中心性線維化パターンを強調するのに用いる.
図3)気道中心性特発性線維症(ACIF).コラーゲン染色は細気管支周囲,血管周囲の線維化を強調し,相対的に周囲の肺胞中隔はスペアされる.
Molecular/Genetics
ACIFの背景にある分子機構は,研究されてこなかった.
Prognosis and Predictive Factors
ACIF患者は優位な割合で,比較的劣った予後を有する.Yousemらの研究において,4年の平均追跡期間内に,患者の33%は肺疾患で死亡した.[1]
同様に,Churgによるcase seriesにおいて(2.9年の平均追跡期間),利用できる追跡調査データを有する患者の50%は疾患で死亡したか,病変の進行が見られた[2].
わずかの割合であるが,疾患はステロイド療法で安定し,まれに可逆的にみえた.
組織学的特徴のいずれも,予後を予測するのに有効であるとわからなかった.
しかしながら,1つの研究において,病死した患者は,診断時に重篤な肺障害を呈した.
ステロイドは,治療の頼みの綱である.
肺移植は,ステロイドに反応しない進行性の患者で必要とされる.
Differential
Diagnosis
肺損傷の細気管支中心性パターンは,多種多様な疾患(例えばリウマチ性/結合組織性疾患,塵肺と慢性期HPのような)で見られる.患者が特発性気道中心性間質性線維症と診断される前に,アレルゲン,抗原,職業で使用する物質,薬剤,結合組織疾患への暴露に関する広範な病歴を得ることは重要である.
臨床検査は,自己抗体を除外するためにされなければならない.
組織学に関するACIFの重要な鑑別診断は,過敏性肺炎,呼吸細気管支炎間質性肺疾患(RB-ILD)と分類未定間質性肺炎(NSIP)である.
過敏性肺炎(HSP)
過敏性肺炎(HSP)の典型像は,弱い肉芽腫の形成,細胞性細気管支炎と間質性慢性炎症性浸潤の3主徴を伴った細気管支中心性間質肺炎を示す.しかしながら,この3主徴は,症例の60-80%のみで見られる.
臨床的に,患者は抗原への暴露の歴史とアレルゲンに対する血清抗体の存在によって特徴づけられる.
画像診断に関する特徴的な所見は細葉中心性小結節とGGAである.その所見はACIFにおいてはまれでfocalにみられる所見である.
組織学的には,ACIFはHSPと比較するとより広範囲な線維形成とより少ない炎症を示す.
HPSはより良好な予後を有しているので,ACIFをHSPと区別することは重要である.
呼吸細気管支炎間質性肺疾患(RB-ILD)
呼吸細気管支炎間質性肺疾患(RB-ILD)は,細気管支内腔と周囲の肺胞腔内に色素を貪食した大食細胞を有意に認め,細気管支中心性パターンを示す.対照的に,ACIFは細気管支内腔と肺胞腔において,わずかな色素貪食性マクロファージを認める.
画像研究においては,両側性GGOを示す.
RB-ILDはACIFと比較してより良い予後を有し,ほとんどの場合禁煙に反応する.
ステロイドは,不応性症例のみに必要とされる.
閉塞性細気管支炎(OB)
細気管支壁線維化と内腔の狭小化が認められる可能性があるので,OBはACIFと若干の重なり合う特徴を示す可能性がある.閉塞性気管支炎(OB)は,線維化の広がりと,間質の病変の広がりにおいてACIFと異なる.
OBの初期には,細気管支は狭くなった内腔を伴い,同心円的な壁の線維化を示す.
器質化肉芽組織は,症例によっては細気管支内腔において見られる可能性がある.
後期には,管腔は進行性線維化により完全に閉塞する.
間質中隔は,微小および巣状病変を示す.
臨床的にOBを有する患者は,肺機能試験に関して閉塞性パターンを示す.
画像研究では,過膨張のような非特異的特徴を示す.
OBは,予後不良で常に進行性である.
上述の疾患に加えて,ACIFはNSIPとUIPから区別される必要がある.
NSIP
ACIFは,時相の均一な線状線維化のため,NSIPの線維化パターンに類似しているように見える可能性がある.しかしながら,NSIPにおいて間質の優位な障害を伴い,細気管支中心性領域が相対的にspareされる.
NSIPは予後良好であるので,ACIFと区別することは重要である.
UIP
UIPパターンは,4つの組織学的特徴を有する.すなわち,temporal heterogeneity(時制の不均一),fibrogenic
foci,蜂巣肺変化を伴う間質の線維化と小葉辺縁優位の病変を伴った胸膜直下の分布である.対照的に,ACIFはfibrogenic fociがなく,小葉中心性病変優位である.
Temporal heterogeneityと蜂巣肺は,ACIFにおいて認められない.