①ガイドラインセッション5 NHCAP
●耐性菌のリスク因子の精度を上げたい→点数化?問題点として,スコア化はコホートが変わるとあてはまりが悪くなることあり. リスク因子を検討したものClin Infect Dis 2011; 54: 193-198.
HCAP, NHCAPは施設間差が大きい.各施設のローカルデータに基づいた治療ストラテジーが必要.抗菌薬選択に役立つ耐性菌のリスク因子は何か?
治療区分の考え方
●倉敷中央病院 2007-2009年 肺炎で入院治療の80%が70歳以上,1997-1999年では45%であった.NHCAPの半数はDNR.
B群 初期治療失敗 18.5%,院内死亡12.4% C群 初期治療失敗 19.9%,院内死亡12%,傑出される菌は P aeruginosa,S pneumoniae,SBT/ABPCが効果的な症例あり.D群 初期治療失敗 22%,院内死亡 33.3%,S pneumoniae,MSSA,E coli
そもそも耐性菌が出たら予後不良なのか?それが起炎菌になっているのか?→今後の問題.誤嚥を繰り返す患者さんにどこまで治療するのか.2012年1.28日本老年学会声名.
●肺炎球菌ワクチン 5000億円の医療費削減効果があることがわかっている.公的補助の導入を早急に.薬剤耐性→不適切治療→予後不良→というループは本当に正しいのか.今後検証を.
誤嚥性肺炎主体のガイドラインを考えるべき,CAP, HAP, NHCAPのガイドラインは将来的に1つにまとめるべき,などの意見.
②ガイドラインセッション6 改定ALI/ARDSガイドラインから見た診療の進歩と問題点
●2011 ESICM (European society of intensive care medicine), Berlin
新しい診断基準が示された
ALIがなくなり,ARDSをPF ratio(201-300 with PEEP/CPAP 5以上, 200以下with PEEP 5以上, 100未満 with PEEP10以上)によりmild-moderate-severeの3段階に分類.
治療
low tidal ventilationによる呼吸管理のevidenceのみ.
PEEPについて.ALVEOLI, LOVS, Expressの3つのstudyからhigh PEEPの有用性は示されなかったが,Anesthesiology 2009; 110: 1098-1105.のメタアナリシスからhigh PEEPの有用性が示されている.
steroidについて:メタ解析ではlow dose steroidが有効 Intensive Care Med 2008.
ARDS発症予防:
LIPSスコア(肺障害予測スコア)ARDSを当初は伴わない患者に低用量換気を行うとARDSの発症を防げる可能性.またARDSがおきやすい状態ではTRALIが出現しやすい.輸血を避けることも重要.
● AJRCCM 2011から人工呼吸管理中の患者にPETを使用した肺の炎症評価を行った.周期的に虚脱,含気を繰り返している領域に18FDGの取り込みあり.=VALIと関連した領域.
③ランチョンセミナー22 院内肺炎ガイドラインの検証結果から見えてきたこと
昨年の震災では,被災地で肺炎が急増したとのこと.発症のピークは2週間後.普段の5倍以上の発生率.H influenzae, M catarrhalis, S pneumoniae.が多かった.起炎菌判明率は80%.耐性菌は少ない.S pneumoniae ABPC 80%, PIPC 80%, CEX 90% sensitive.遺伝子検査ではアウトブレークではない.基礎疾患のない人からも肺炎が多数発生.
その理由は不明.水との関連?
HAPガイドラインの検証:ガイドライン推奨薬剤が使用されていた割合.軽症16.1%,中等症80%,重症 12.7%.使用されている薬剤を詳細に調べると,結局SBT/ABPC, TAZ/PIPC, MEPMの3剤がワンパターンの様に使用されている実態が浮かび上がってきた.重症例では推奨抗菌薬治療を使用したほうが有意に効果的があることが示されている.
④ポスター発表
前勤務施設の発表.NTMのまとめであるが,症例も多く何らかの形で文書による報告をお願いします.質問も多く結構盛り上がったか.
MAC症は急速に呼吸不全に至る症例と(診断の遅れによる症例も一部はあるが),そうでない症例があるようだ.この点が鑑別できればMAC症患者に対する治療の「モヤモヤ」が少しは解消するんだがなあ.
⑤ICD講習会 再考MRSA感染症の診断と治療
S aureus肺炎の頻度は少ない.最大のリスクはDM,次のリスクはope後,透析(要するに皮膚に損傷をきたす状態).
ただしMMWE 2009; 58:1071ではFlu A (H1N1)の29%に細菌性肺炎が合併していたが1位がS pneumoniaeで2位がS aureusであったとのこと.
●外来にてS aureus→3割がMRSAで,入院の場合は6割がMRSAであった.
良質の喀痰でも,下気道に定着して局所の炎症が伴う場合は,肺炎を発症していなくても,高知好中球の貪食像がみられることがある.定量培養,半定量培養でもMRSA肺炎を診断する根拠とはならない(たとえば106-7 CFU/ml).
●倉敷中央病院にてMRSA分離294例中MRSAと判断されたのは33例と少ない.米国ではVCM使用の増加に伴いVancomycin MIC creepingと言われる現象(MIC値上昇)がみられる.MIC> 1μg/mlの菌株においてVCMによる治療効果は期待しがたい.日本では感受性が維持されているが今後の薬剤感受性の動向に注意すること.
●血液培養でブ菌が疑われたら,MRSAの可能性を考慮し,薬剤の選択を考える.MRSAに対する薬剤として,VCM, TEICO, ABK(以上3剤は要TDM),LZD, DAP(ダプトマイシン).キュビシン(ダプトマイシン)は肺サーファクタントにて不活化されるため,肺炎には無効なんだそうな.薬剤感受性を調べる時の培地のCaイオン濃度に注意する必要があるとのこと(Caイオン濃度が上がるとMIC低下).
●CA-MRSA(市中感染型:SCC mec IV)→mainly skin infection, HA-MRSA(院内感染型:SCC mec II)
DAPは壊死性筋膜炎,DMによる皮膚感染症の治療に期待.DMは病巣局所の血流が不良で,薬剤の組織移行性が悪そうだがDAPの効果は良好とのこと.