2012年7月5日木曜日

Autoimmune-featured interstitial pneumonia (AIF-ILD)

2011年 Chestに報告された概念だが,あらためて読んでみた.


Autoimmune-Featured Interstitial Lung Disease : A Distinct Entity

Chest 2011;140:1292-1299.


症状および自己抗体より自己免疫疾患を疑うが,ACRCTD診断クライテリアを満たさないILD患者のサブセットがある.これらの患者はundifferentiated connective tissue disease (UCTD) を有するが,IIP患者と考えられている(文献5).しかし,リウマチ関連の文献で示されているように,性質はmildで,ILDの中の罹患率は低い(1%).これらを鑑みて,我々はACRの診断クライテリアは満たさないがCTDの特徴を有したILDを有する患者のサブセットに対して,autoimmune-featured ILD (AIF-ILD)という新しい名称を提案する.

5 . Kinder BW , Collard HR , Koth L , et al . Idiopathic nonspecific interstitial pneumonia: lung manifestation of undifferentiated connective tissue disease? Am J Respir Crit Care Med . 2007 ; 176 ( 7 ): 691 - 697 .



背景

ILDの患者はCTDの診断クライテリアを満たさない自己免疫異常の特徴を有していることがある.我々はautoimmune-featured ILD (AIF-ILD)の罹患率とその特徴を調べ,IPFおよび既知のCTD-ILDと比較した.

方法

CTDの診断クライテリアを満たさないILD患者において,CTDを疑う徴候や症状があり,かつ自己免疫プロセスを反映する血清テスト陽性のときAIF-ILDと診断した.臨床的特徴,HRCT像,肺生検検体を解析し,IPFCTD-ILDの患者のそれらと比較した.生存はカプランーマイヤー曲線を使用し評価した.

結果

200例の患者が質問票に回答し,血清検査を行った.AIF-ILDはその32%(63)に,IPF29%(58)に,CTD-ILD19%(37)に認められた.性,年齢,人種は群間で異なった(p<.01)AIF-ILD62%CT画像にて典型的UIPパターンを示した.AIF-ILD31例の患者のうち,肺生検検体にて81%UIPを認め,NSIP6%であった.AIF-ILDIPFの患者は生存が同一で,CTD-ILDより予後不良であった(P<.01)AIF-ILD においてANA  titer 1:1280は,生存の改善と関連があった(P=.02)

結論

ILDにおいて症状の全身的評価と,血清検査の評価によりAIF-ILDを同定することが可能である.CT画像と,病理組織におけるUIPパターンはAIF-ILDにおいて多い.AIF-ILDの患者の予後は不良であるが,ANA  titer 1:1280は予後の改善に関連がある.





シカゴ大学のILDクリニックに紹介された患者で,このstudyへの参加の意志のあるもの.

症状質問票の記入,CTDのスクリーニングのための血清検査を網羅的に行った.

環境暴露によるILD,既知の原因によるILDは除外.CTDに関するACRクライテリアを満たさない患者で,CTDを疑う徴候や症状が少なくとも1つあり,かつ自己免疫プロセスを反映する血清テストが少なくとも1つ陽性のときAIF-ILDと診断した.

血清テストはリファレンス値を超えたときに陽性と診断するが,ANAは≧ 1:160以上の時を陽性とした. CTD ACRクライテリアを満たす患者,およびIPFATSクライテリアを満たす患者を対照群とした.


 Radiographic Review
categorized as typical for UIP

a subpleural reticular pattern with honeycombing was the predominant finding

categorized as atypical for UIP

the HRCT scan lacked honeycombing and/or displayed predominantly ground glass opacities

categorized as havingboth

at least one displayed the typical UIP pattern and at least one displayed the atypical pattern


AIF-ILD63例中,HRCTにおけるUIPパターンは42例.atypical UIPパターンは21例であった.AIF-ILDHRCTatypical UIPパターンを示す患者に生検を行うと,UIPNSIPより3倍多かった(6例対2例).一方CTD-ILDatypical UIPパターンを示す患者に生検を行うと,UIPNSIPの頻度は同等であった(3例対3例).

CTD-ILD以外の患者でHRCTパターンがatypical UIPの場合は大半がAIF-ILDの診断クライテリアを満たした.


生存に関して

1年生存率
CTD-ILD 100%, IPF 87%, AIF-ILD 82%

5年生存率
CTD-ILD 95%, IPF 48%, AIF-ILD 52%

生存の悪化に寄与する因子
          アルドラーゼ陽性(HR 5.31; 95% CI, 1.89-14.92; P<.01
          加齢(HR 1.06 for each year increase; 95% CI, 1.00-1.13; P=.04

生存の改善に寄与する因子
          FVC高値(HR 0.96 for each 1% increase; 95% CI, 0.93-0.99; P.01
          DLcoの高値(HR 0.96 for each 1% increase; 95% CI, 0.92-0.99; P=.01
          徐々にANAが上昇(HR 0.81 for each titer increase; 95% CI, 0.67-0.99; P=.03

AIFグループの死亡例が少ないことより,多変量解析は行えなかった.

ANA titier1:1280AIF-ILD患者は17例(男8, 9).<1:1280の患者と比較して生存の改善が認められた(Fig 3).

この研究のlimitation

臨床的特徴と生存に関して多変量解析ができなかった.

ANA titerを連続して測定していない.

AIF-ILD患者の中に,最終的にCTDの診断クライテリアを満たすものがいる可能性(本研究のフォローアップ期間は中央値で1.7年であるが,そのような患者はいなかった).

症状は自己申告制である.症状の中でleg/foot swellingは非特異的症状であり,浮腫が含まれる可能性がある(本研究ではこのような症状のみでAIF-ILDと診断した患者はいなかった).

肺生検が全例行われたわけではない.