2012年7月17日火曜日

UCTD-ILDとは何か?

KinderらのUCTDに関する論文を改めて読んでみる.

Idiopathic Nonspecific Interstitial Pneumonia
Lung Manifestation of Undifferentiated Connective Tissue Disease?
Brent W. Kinder
AJRCCM 2007;176:691697.

Rationale

ATS/ERS International Consensus Classification panelは,特発性NSIPを暫定的診断とし,更なる研究を推奨した.

Objectives

我々は,特発性NSIPが自己免疫疾患であり,分類不能のCTD (UCTD)(最近記載された異なった疾患単位)の肺病変と仮定した.

Methods



我々は特発性間質性肺炎があり,事前にUCTDのクライテリアを満たす,連続した28例の患者を,カリフォルニア大サンフランシスコ間質性肺疾患センターに登録した.UCTDのクライテリアは以下のとおりである.①CTDの特徴を少なくとも1つ有す,②臨床的な感染症状がなく,全身的な炎症の血清学的エビデンスがある,②他のCTD診断に関するACRのクライテリアを満たさない.

Medical recordを調べ,画像の評価と,肺生検のスコアリングを行った.コントロール群はUCTDクライテリアを満たさないIIPを有する他のすべての患者(n=47)である.

Measurements and Main Results

UCTDの患者はIIPコントロール群と比較して,女性が多く,より若く,非喫煙者が多かった.コントロール群と比較して,UCTD-ILD患者はHRCTにおいて有意にGGOが多く,生検にてNSIPパターンが多く,HRCTにて蜂巣肺は少なく,生検にてUIPが少なかった.我々のセンターでは特発性NSIPの患者の大半(88%)UCTDのクライテリアを満たしていた.

Conclusions

特発性NSIP患者と診断される多くの患者は,UCTD症例の定義を満たしていた.更にこれらの結果は,特発性NSIPclinical entityIPFと異なり,自己免疫疾患であるように見える.

イントロダクション

病理組織学的NSIPパターンは,臨床と画像上,広範に認められる(文献8-10).最近ACRのクライテリアを満たすCTD患者にNSIPが最もよく認められることが示された(文献11-13).


Rheumatologic studyでは,全身的に自己免疫疾患の特徴を有する25%ほどの患者が,ACRCTD診断クライテリアを満たさないことを示した(文献14-18).これらの患者はdiffuseまたはundifferentiated CTD (UCTD)を有すると考えられている.そのような症例の大半(65-94%)は数年のフォローアップの後も”differentiated CTD(たとえばRA, SLE, SSC, MCTD)にならなかった(文献14-19).従ってUCTDは以下のクライテリアを満たす異なった疾患概念であることが推測された.すなわちそのクライテリアとは①CTDの少なくとも1つの症状,徴候を有する,②血清学的検査にて陽性を示す,③少なくとも1年間その疾患が続く.UCTDのもっとも一般的な臨床症状は,Raynauds phenomenon, arthritis/arthralgias, pleuritis/pericarditis, sicca symptoms, cutaneous involvement (photosensitivity, rash), esophageal involvement, fever, and myositis (文献14)である.UCTDに特異的な呼吸器症状はこれまで検討されていない.

 

考察

UCTD-ILD患者と,CTD-ILD患者との間に類似性がある.

・臨床的特徴:女性,より若い,非喫煙者が多い,ANAが陽性でtiterが高い,clubbingがない.

・画像の特徴:GGOが優位に多い,honeycombingがない

・病理組織的特徴:NSIPパターン.


すなわちUCTD-ILD患者の基礎をなす病態は,自己免疫疾患であると考える.

もしILDを有する患者が,UCTDの患者と一般に,同じ経過をたどるなら,他のCTDのクライテリアを満たすようになる症例は少数(25%)である.さらにUCTDの患者で他のCTDの診断クライテリアを満たすようになる患者の中で,その大半はfollow-upの最初の年にそのことがおきる.我々のUCTD-ILD患者は,登録時,約3.5年の平均罹病期間(最初の呼吸器症状から来院まで)を有していた.


UCTD-ILDのもっとも一般的な臨床的症状

Diffuse arthralgias, Raynaud’s phenomenon, and esophageal symptoms, whereas oral ulcerations, renal and neurologic disease (data notshown)


UCTD-ILDにおいて少ない臨床的症状
alopecia, clubbing, and muscle weakness


これらの所見の相対的頻度は,他のnon-ILD UCTDコホートにおいてみられる所見の相対的頻度と同じである.


この研究の限界

UCTDに関するもっとも最近publishされた文献に合わせるため,UCTDの診断に関して,膠原病の症状は一つのみでよいとした.このアプローチは幾分特異度を犠牲にして,誤った分類を導く可能性がある.

サンプルサイズが小さい.


まとめ

我々は,過去に特発性NSIPと分類された患者のほとんどは臨床,血清学,画像,病理所見が,自己免疫疾患を示唆する特徴を有していることを示した.今後他のILD患者のコホートにおいて,更なる研究を行い,これらの所見を証明し,UCTD-ILDnatural historyを明らかにし,治療介入のよくデザインされたcontrolled studyの適切なターゲットを同定すべきである.