熊本感染症フォーラム in Kumamoto
2017年12月18日 ホテルメルパルク熊本
MRSA感染症
熊大
MRSA分離率は減少熊大
CA-MRSAの割合が増加
POT型によりSCCmecの推定
CA-MRSA 66%、HA-MRSAが33%
TEIC上昇傾向、LZD減少傾向
菌血症ではFAP 8-10 mg/kgを考慮
(大学では感受性不明のGPCは抗MRSA薬投与)
C. difficile感染症の最近の話題
広島大学感染症科 大毛宏喜教授
CDI
Clostridium difficile↓
Clostridioides difficileに改名
(※通常偽膜性大腸炎とは言わない。これは病理組織学的診断名。)
北米で重症のCDIを起こすCD出現
PCR-ribotype 027通常の細菌の16倍の毒素を産生。
Lancet 2005;366;1079-1084.
北米ではCDIの死亡率高い。HAIの主要原因微生物(12.1%)。
北米の市中型
JAMA Int Med 2013;173:135936%は抗菌薬未使用。
NEJM 2015;372:825-834.
CDIのリスク
①腸内細菌叢の乱れ。 PPI、抗菌薬使用、経鼻胃管②環境因子 長期入院、食事、ペット
③宿主要因
食材からの分離
市販の生肉からの分離、貝、家禽類
では食物由来?まだはっきりしない。
ペットからCD分離。ペットから人への伝播の証拠はない。しかしペットが人への感染のリザーバーとなりうる。
空気中への散布過去2年間に9例のCDIが出ている長期療養型の6人部屋:53~426 cfu/m3のCD芽胞検出。
エアロゾルでの感染がおこりうる
北米の重症型(027)は日本で検出されていない。
日本でのCDI
消化器外科受診143,652例のデータ。重症型はいないが死亡率の有意な上昇。□MNZ、VCMについて
重症例が少ない日本では安価なMNZが第一選択
MRSA腸炎を念頭に置く必要がない(なのでやはりMNZ)
10-14日間の投与が多い。実際は数日で効く。
再発するので長く使う?→長く使えば再発しないということはない。
どうしたら再発予防?
VCM漸減?→効果なし。
MNZとVCMの再発率に差はない。
□Fidaxomicin vs. VCM
再発率はFidaxomicinで低い。
□Probioticsの効果について
Gastroenterology. 2017;152(8):1889-1900.投与時期について効果に有意差あり。
抗菌薬治療開始直後(2日以内)からの投与は有効
どのProbioticsが良いかは不明
□便移植
よく効く。NEJM 2013;368:407-415.どんな便が良い便か、どの成分が有効なのかわからない。
(菌だけでは効果なし。)
安全性が担保されていない。
再発予防にはよさそう。
□ワクチン
Tox AとBの不活化ワクチン。Phase III stopした。
□CD Toxに対する抗体療法
Bezlotoxumab:Tox Bに対する抗体。日本では再発率が46.2%→21.4%に減。
まとめ
日本では重症型は少ないものの、高齢化の進行で、症例数は増加すると予測される。再発対策の重要性が増すことが予測される。
フロアからの質問
CD 027 輸入例はあると思うが、アウトブレイクはあるか?→ない。
CD 027が日本でほとんどない理由。
人種差なのか、環境なのか?よくわからない。
MNZ、VCMについて
MNZを使用すると他の嫌気性菌(バクテロイデスなど)も抑制されるので、VCMと比較して腸内細菌叢をみだすのでは?→ CDが非常に増加した状態なので、どの程度他の腸内細菌叢を乱しているかわからないが、治療効果は同じ。
Probioticsの効果について
メタ解析などで有効性を報告した信頼性の高いデータはなかった。しかし今年、開始のタイミングについて有意差を示したデータが出た。しかしどのくらい効果があるのか不明。
CDIの院内感染対策について
個室隔離を推奨しているが、部屋がない。Toxの結果は感度が低い。Ag(+)、Tox(-)→PCRを行う という推奨がある。
現実的には・・疑わしきはMNZ etc.を投与。
投与期間は疑わしさの程度などで。必ずしも10-14日投与しているわけではない。
メモ
Gastroenterology. 2017;152(8):1889-1900.
背景新たな知見
抗菌薬投与中の入院患者において、タイムリーなprobioticsの使用はCDI予防に効果的である。もし抗菌薬を投与して2日を超えてprobioticsを開始すると効果が半減した。
限界
これらの所見は、各研究から除外された患者に対しては適応されない。最適なprobioticsの種類とdoseはなお明らかでない。
インパクト
抗菌薬が治療で必要な入院患者に対して、probioticsの同時処方は、CDIを50%以上減少させる。すなわちUSにおいて毎年約200,000のCDI症例の発症が予防できる。
本文
背景及び目的システマティックレビューはこれまでCDIの予防におけるprobioticsの使用のエビデンスを示してきた。しかしガイドラインではCDIの予防に対するprobioticsの使用を推奨していない。我々は実地診療のために、最新のシステマティックレビューを行った。
方法
(省略)。プライマリーアウトカムはCDIの発症、セカンダリーアウトカムは有害事象。
二次解析は、probioticsの種類、量、投与のタイミング、製剤、投与期間、研究の質
結果
19の発表された論文。患者数6261例。
Probioticsコホート vs. コントロール
1.6% (3277例中54例)対3.9% (2984例中115例) (P<0.001)
Probiotics使用患者におけるCDI発症のpooled relative riskは0.42 (95%信頼区間 0.30-0.57)
感染対策
https://janis.mhlw.go.jp/participation/material/2017_lecture_4_kato.pdf