2018年3月6日火曜日

CDIについての講演会 熊本感染症フォーラム


熊本感染症フォーラム in Kumamoto
2017年1218日 ホテルメルパルク熊本

MRSA感染症
熊大
MRSA分離率は減少
CA-MRSAの割合が増加
POT型によりSCCmecの推定
CA-MRSA 66%HA-MRSA33%
TEIC上昇傾向、LZD減少傾向
菌血症ではFAP 8-10 mg/kgを考慮
(大学では感受性不明のGPCは抗MRSA薬投与)

C. difficile感染症の最近の話題
広島大学感染症科 大毛宏喜教授

CDI
Clostridium difficile

Clostridioides difficileに改名

 (※通常偽膜性大腸炎とは言わない。これは病理組織学的診断名。)

北米で重症のCDIを起こすCD出現
PCR-ribotype 027
通常の細菌の16倍の毒素を産生。
Lancet 2005;366;1079-1084.
北米ではCDIの死亡率高い。HAIの主要原因微生物(12.1%)。

北米の市中型
JAMA Int Med 2013;173:1359
36%は抗菌薬未使用。
NEJM 2015;372:825-834.

CDIのリスク
①腸内細菌叢の乱れ。   PPI、抗菌薬使用、経鼻胃管
②環境因子        長期入院、食事ペット
③宿主要因
食材からの分離
市販の生肉からの分離、貝、家禽類
では食物由来?まだはっきりしない。
ペットからCD分離。ペットから人への伝播の証拠はない。しかしペットが人への感染のリザーバーとなりうる。
空気中への散布過去2年間に9例のCDIが出ている長期療養型の6人部屋:53426 cfu/m3CD芽胞検出。
エアロゾルでの感染がおこりうる
北米の重症型(027)は日本で検出されていない。

日本でのCDI
消化器外科受診143,652例のデータ。重症型はいないが死亡率の有意な上昇。
MNZVCMについて
重症例が少ない日本では安価なMNZが第一選択
MRSA腸炎を念頭に置く必要がない(なのでやはりMNZ
10-14日間の投与が多い。実際は数日で効く。
再発するので長く使う?→長く使えば再発しないということはない。

どうしたら再発予防?
VCM漸減?→効果なし。
MNZVCMの再発率に差はない。

Fidaxomicin vs. VCM
再発率はFidaxomicinで低い。

Probioticsの効果について
Gastroenterology. 2017;152(8):1889-1900.
投与時期について効果に有意差あり。
抗菌薬治療開始直後(2日以内)からの投与は有効
どのProbioticsが良いかは不明

□便移植
よく効く。NEJM 2013;368:407-415.
どんな便が良い便か、どの成分が有効なのかわからない。
(菌だけでは効果なし。)
安全性が担保されていない。
再発予防にはよさそう。

□ワクチン
Tox ABの不活化ワクチン。Phase III stopした。

CD Toxに対する抗体療法
BezlotoxumabTox Bに対する抗体。
日本では再発率が46.2%21.4%に減。

まとめ
日本では重症型は少ないものの、高齢化の進行で、症例数は増加すると予測される。
再発対策の重要性が増すことが予測される。

フロアからの質問
CD 027 輸入例はあると思うが、アウトブレイクはあるか?
→ない。
CD 027が日本でほとんどない理由。
人種差なのか、環境なのか?よくわからない。

MNZVCMについて
MNZを使用すると他の嫌気性菌(バクテロイデスなど)も抑制されるので、VCMと比較して腸内細菌叢をみだすのでは?
→ CDが非常に増加した状態なので、どの程度他の腸内細菌叢を乱しているかわからないが、治療効果は同じ。

Probioticsの効果について
メタ解析などで有効性を報告した信頼性の高いデータはなかった。しかし今年、開始のタイミングについて有意差を示したデータが出た。しかしどのくらい効果があるのか不明。

CDIの院内感染対策について
個室隔離を推奨しているが、部屋がない。
Toxの結果は感度が低い。Ag(+)Tox(-)PCRを行う という推奨がある。
現実的には・・疑わしきはMNZ etc.を投与。

投与期間は疑わしさの程度などで。必ずしも10-14日投与しているわけではない。

メモ
Gastroenterology. 2017;152(8):1889-1900.
背景
最近発表されたガイドラインや、システマティックレビュー、大規模無作為試験では、抗菌薬使用中の入院患者において、CDIを抑制するためのprobioticsの使用に対する矛盾した推奨がなされている。
新たな知見
抗菌薬投与中の入院患者において、タイムリーなprobioticsの使用はCDI予防に効果的である。もし抗菌薬を投与して2日を超えてprobioticsを開始すると効果が半減した。
限界
これらの所見は、各研究から除外された患者に対しては適応されない。最適なprobioticsの種類とdoseはなお明らかでない。
インパクト
抗菌薬が治療で必要な入院患者に対して、probioticsの同時処方は、CDI50%以上減少させる。すなわちUSにおいて毎年約200,000CDI症例の発症が予防できる。

本文
背景及び目的
システマティックレビューはこれまでCDIの予防におけるprobioticsの使用のエビデンスを示してきた。しかしガイドラインではCDIの予防に対するprobioticsの使用を推奨していない。我々は実地診療のために、最新のシステマティックレビューを行った。
方法
(省略)。プライマリーアウトカムはCDIの発症、セカンダリーアウトカムは有害事象。
二次解析は、probioticsの種類、量、投与のタイミング、製剤、投与期間、研究の質
結果
19の発表された論文。患者数6261例。
Probioticsコホート vs. コントロール 
1.6% (3277例中54)3.9% (2984例中115) (P<0.001)
Probiotics使用患者におけるCDI発症のpooled relative risk0.42 (95%信頼区間 0.30-0.57) 

感染対策

https://janis.mhlw.go.jp/participation/material/2017_lecture_4_kato.pdf