2013年6月3日月曜日

重症ARDSにおけるprone positioningの意義

Prone Positioning in Severe Acute Respiratory Distress Syndrome
NEJM 2013
May 20, 2013

背景
ARDS患者に関する過去の臨床研究において,人工呼吸管理中に行うprone positioningのアウトカムに対する有用性を示すことはできなかった,我々は重症ARDS患者において早期にprone positioningを行うことがアウトカムに対して効果的か否かを検討した.

方法
multicenter, prospective, randomized, controlled trial
重症ARDS患者466例を少なくとも16時間のprone-positioning sessionsを受ける群,supine positionのままの群にランダムに割り付けた.「重症」ARDSの定義は,少なくともFIO2 0.6,PEEP 5cmH2O, 1回換気量がほぼ6ml/kg (predicted body weight)の時,P/F ratio≦150mmHgならば重症とした.primary outcomeは症例選択後28日以内の全原因死亡患者の割合であった.

結果
Prone group 237例,supine group 229例に割り付けた.28日死亡率はprone群で16.0%,supine群で32.8%であった(P<0.001). prone positioningの死亡に関するHRは0.39 (95% confidence interval [CI], 0.25 to 0.63)であった.未調整90日死亡率はprone群で23.6%,supine群で41.0%であり(P<0.001),HRは0.44(95% CI, 0.29 to 0.67)であった.
Supine群でcardiac arrestの頻度が高かったことを除いて,両群間の合併症頻度に有意差はなかった.

結論
重篤なARDSにおいて早期に長時間のprone positioningを行うことは,有意に28日,90日死亡率を減少させた.

2013年5月30日木曜日

第376回熊本チェストカンファレンス

2013年5月23日(木)19:00~
第376回熊本チェストカンファレンス定例会

症例1
60歳代,女性.胸部異常陰影精査目的に胸部CT施行し,前縦隔腫瘍を指摘.
内部は不均一な円形の腫瘤.造影すると周囲が非常にenhanceされるのが特徴.内部はlow.液体が存在しているようにも見えるが・・・.
前縦隔腫瘍の鑑別診断
thymoma, thymic cancer, germ cell tumor, malignant lymphoma(discussionには出てこなかったが・・),mediastinal goiter
造影効果が高い腫瘍は何か?が重要になる.

⇒血流が豊富な腫瘍と考え,生検は行わず切除術を行った.
答えは迷入性甲状腺腫aberrant mediastinal goiter
(参考)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jacsurg/24/2/24_2_195/_pdf
甲状腺と連続性のない迷入性甲状腺腫は非常にまれ.甲状腺機能異常をきたすことも少ない.本症例も正常.

症例2
毛包性ムチン沈着症の診断にてステロイド内服中(PSL10mg/day)の20歳代,女性.dry cough, 頸部リンパ節腫脹,微熱出現.
顔面,上背,上肢に丘疹,結節散在.
採血データ Eosの増加 4260/μL,LDH 634U/Lと上昇.
全肺野にすりガラス影,粒状影を認める.小葉間隔壁肥厚あり.⇒呼吸不全となる.すりガラス影(geographic appearence),右下肺野に強いdense consolidation,粒状影

画像はperilymphatic distributionと思うが・・
鑑別診断
感染
viral, 非定型,結核(⇒ARDS),PCP
非感染
Lymphoproliferative disorders
Sa症,Castleman`s disease
ML,
HTLV-I associated

その後の検査
sIL-2R 12000 U/mLと著増.HTLV-I陰性.BALF; Ly 80.5%(異型Ly 60.5%),CD4/8= 25.93, TBLB; 細気管支周囲にTリンパ球浸潤.TCR Cβ1/Jγ再構成あり.
診断はmycosis fungoides (MF)
皮膚原発のT cell由来ML,肺病変は通常terminal stageで出現.本症例のようなcaseはまれ.

ステロイド投与⇒EPOCH療法開始.
肺病変はMFの(直接)肺浸潤と考えられた.
ステロイド投与が経過や,症状,画像所見を修飾していた可能性がある.
 
(参考)
http://www.derm-hokudai.jp/textbook/pdf/22-09.pdf

熊大呼吸器外科,森都総合病院

2013年5月23日木曜日

COPD急性増悪に対する経口ステロイド5日vs14日間治療

COPDの急性増悪に対するステロイドを使用期間に関する論文.ステロイド5日というのは妥当な感じがする.
でも実地診療では十分な量を投与し患者の状態を見ながらできるだけ早く中止するというスタンスが正解だろう.経口predonisone40mg/dayが至適容量なのかはわからんが.
ステロイドは不要か否かを常に判断しながら投与すること.いつまでたってもたらたらステロイドを使用しているCOP/BOOP,放射線肺障害の治療をみると無性にイラつく(減らすと再増悪するcaseがあるのはわかるが)のは俺だけか?

Short-term vs Conventional Glucocorticoid Therapy in Acute Exacerbations of Chronic Obstructive Pulmonary Disease
The REDUCE Randomized Clinical Trial
JAMA. 2013;309(21): 2013-5023.

Importance
国際的なガイドラインは、COPD急性増悪に対し、7~14日の全身グルココルチコイド療法を提唱している.
しかしながら、ステロイドの最適投与量と投与期間はわかっていない.

Objective
COPD増悪患者における短期(5日)全身グルココルチコイド治療が,臨床的アウトカムに関して従来の(14日)治療と非劣性であるか,そして、それがステロイドへの暴露を減少させるかどうかを検討する.

試験デザイン,設計と患者
REDUCE (Reduction in the Use of Corticosteroids in Exacerbated COPD)試験. 5つのスイスの教育研究病院にて行われた,無作為,非劣性他施設試験.2006年3月から2011年2月までの期間.救急治療部を受診したCOPD急性増悪患者314例の患者を登録.喘息の既往歴なし.past or present smokers(0 pack-years以上).

介入
プラセボ対照、二重盲検試験. 5または14日間の40mgのprednisone治療。

あらかじめ定義された非劣性基準は多くて増悪増加率が15%.そして、50%のreference event発生率に対して1.515のcritical hazard ratio.

Main Outcome and Measure
180日以内で次の増悪までの時間.

Results
入院となった314例の無作為抽出患者(289人(92%)は入院)のうち、311例はintention-to-treat解析,296例がper-protocol解析を行った.
短期治療群対従来治療群に対する危険率は、intention-to-treat analysisにおいて0.95であった(90%CI、0.70~1.29; P = .006,非劣性に関して) .そしてper-protocol analysisにおいて 0.93 (90% CI, 0.68 to 1.26; P =.005,非劣性に関して)→我々の非劣性基準を満たしていた.
短期群において、56例の患者(35.9%)は、primary end pointに到達した; 従来治療群は57例(36.8%)がprimary end pointに到達した.
180日以内の再増悪率は、短期群37.2%(95%CI、29.5%~44.9%); 従来治療群38.4%(95%CI、30.6%~46.3%)であり,その差は-1.2% (95% CI, -12.2% to 9.8%)であった.
再増悪患者における、再増悪までの期間の中央値は、短期群で43.5日(四分位範囲[IQR]、13~118),従来群29日(IQR、16~85)であった。
両群間で死亡までの時間,増悪または死亡あるいはその両者と肺機能の改善の複合エンドポイントに差はなかった.
従来治療群において、平均累積的なプレドニゾン用量は有意に高かった(793mg[95%CI、710~876mg]対379mg[95%CI、311~446mg]、P< .001)、しかし、治療関連の副反応(高血糖と高血圧を含む)の頻度はそれほど頻回ではなかった.

Conclusions and Relevance
COPD急性増悪にて救急治療部を受診した患者において、6ヶ月以内のfollow-up期間における再増悪に関して,全身性グルココルチコイドによる5日間の治療は、14日治療に対して非劣性であった.更に,有意にグルココルチコイド暴露を減らした.
これらの所見より,COPDの急性増悪に対し、5日間のグルココルチコイド治療が支持される.

 

 

気管切開をいつ行うか.critical care unit入室4日以内と10日目以降の死亡率の比較

Effect of Early vs Late Tracheostomy Placement on Survival in Patients Receiving Mechanical Ventilation
The TracMan Randomized Trial
JAMA. 2013;309(20):2121-2129.

背景
Tracheostomyをいつ行うかについてのevidenceはほとんどない.

目的
早期の気管切開と後期の気管切開で死亡率に差があるかについて検討.

試験デザインと設計
open multicentered randomized clinical trial .2004年から2011年まで.13の大学病院と,それ以外の59病院のadult general and cardiothoracic critical care units.1032例の登録症例のうち909例が4日以内の人工呼吸管理をうけ,更に7日以上人工呼吸管理が治療医によって必要と判断された.

介入
early tracheostomy (4日以内)群, late tracheostomy (10日後―その時点で適応があれば)の2群を無作為に1:1に割り付けた.

Main Outcomes and Measures
primary outcome measureは30-day mortalityであり, intention to treat解析を行った.

結果
早期気管切開群に割り当てられた455例の患者のうち、91.9%(95%CI、89.0%-94.1%)は気管切開を受けた、そして、後期気管切開群に割り当てられた454例の患者のうち、44.9%(95%CI、40.4%-49.5%)が気管切開を受けた。

早期群において,ランダム化30日後の全死亡率は30.8%(95%CI、26.7%-35.2%)であり,後期群では31.5%(95%CI、27.3%-35.9%)であった.リスク低下の絶対値は0.7%(95%CI、-5.4%-6.7%)であった.

2年死亡率は早期群51.0%(95%CI、46.4%-55.6%),と後期群53.7%(95%CI、49.1%-58.3%)(P = .74)であった.

生存群におけるcare unit入院期間の中央値は、早期群13.0日,後期群13.1日(P = .74)であった.

気切関連の合併症は患者の6.3%(95%CI、4.6%-8.5%)に報告された(早期群5.5%,後期群7.8%).

Conclusions and Relevance
UKにおいて,adult critical care unitsにて人工呼吸管理を行っている患者の入室4日以内の気管切開は30日死亡およびその他の重要なsecondary outcomesの改善をもたらさなかった.

2013年5月20日月曜日

5月17日江津湖のホタル

初めて江津湖のホタルを見た.旭志のホタルより数は少ないのだろうが,ホタルと人間の距離が近いのがとてもいい.子どもたちも大喜び.
江津湖の自然と関係者の努力に感謝.

2013年5月15日水曜日

antisynthetase症候群における肺高血圧:有病率、病因と生存

ASS (antisynthetase syndrome)に関しては,以前このブログで触れた.
http://edukobiyori.blogspot.jp/2012/12/antisynthetase-syndromemgh-medical.html

ERJに肺高血圧症に関する報告があったので掲載する.

Pulmonary hypertension in antisynthetase syndrome: prevalence, etiology and survival.
Eur Respir J erj01563-2012; published ahead of print February 8, 2013

abstruct
Antisynthetase症候群(ASS)は、様々な抗-tRNA-合成酵素抗体を伴った筋炎と間質性肺疾患(ILD)の合併によって特徴づけられる。
肺高血圧症(PH)の発生、病因と予後はまだ評価されていない.
203人の連続した患者において、超音波心臓検査(TTE)と右心カテーテル法(RHC)の結果を、臨床生物学的、形態学的,および機能的なパラメータを考慮しつつ、後ろ向きに分析した。
PHの定義はESC/ERS 2009ガイドラインに基づいた。そして、重篤なPHは平均肺動脈圧(mPAP)>35mmHgと定義された。
TTEにてPHは47例(23.2%)で疑われた.possibleがn=27(13.3%)、likelyがn=20(9.9%)であった.
RHCは21例の患者で行われた。5例でPHが除外され、16例(7.9%)で前毛細血管性PHを確認した。
すべての症例においてILDとの関係があったが、前毛細血管性PHは重症が13例(81,3%)(平均mPAP:46±9mmHg)であり,しばしば低い心係数(平均2.3±0.8l/分/m2)と高いFVC/DLCO比率(2.5±0.6)に関連した.
PHは明らかに低い生存と相関し(p < 0.001),3年生存率は、58%であった.
ASSにおけるPHの発症は、有意で予後を劇的に悪化させる。
系統的にILDと関連するにもかかわらず、PHは通常重症であった.そのことは特異的な肺血管性病変を示唆した。



PH-ILDを有するこれらの患者の81.3%は重篤なPH(mPAP>35mmHg)を示した。そして、それは肺実質病変と不釣合いである.⇒ASS関連のPHは一部,特異的肺血管病変が関与した可能性が示唆される.
 (抗Jo1抗体陽性のASS患者血清は,vitroで血管内皮細胞を活性化させるという報告もある)