Reversed Halo Sign
High-Resolution CT Scan Findings in 79 Patients
Chest 2012; 141(5):1260–1266.
Edson Marchioriら
http://edukobiyori.blogspot.jp/2012/11/reversed-halo-signkyary-pamyu-pamyu.html
下記は同じ著者のRHSに関する報告.
本文にもあるように肺水腫の頻度は少ないようである.例として載せてある症例の画像,心原性の肺水腫ではないし,画像もちょっとどうよ・・って感じである.
他の疾患でdense haloの病理所見を述べている点は興味深い.
Fig 8. 47-year-old woman with noncardiogenic pulmonary edema secondary to use of nitrofurantoin
for treatment of urinary infection.
感染性および非感染性肺疾患のHRCTにおけるreversed halo sign
AJR 2011; 197:W69–W75.
目的
本論文の目的は,HRCTにおけるreversed halo sign (RHS)を呈する可能性がある疾患を述べることである.我々はRHSに最もしばしば関連するCT所見の特徴を強調し,それらを組織学的所見と関連させる.
結論
胸部CTに関して感染性および非感染性の広範な疾患が,RHSを呈する可能性がある.特に付随する背景所見が典型的なとき,RHSの非特異的性質は直接的診断を曇らせてはならない.付随するCT所見の厳密な分析が鑑別診断を補助する可能性があるにもかかわらず,組織学的評価はしばしば原因の限定的な決定のために必要とされる.
RHSはしばしば完全なringを形成するより密度の高い浸潤影のリングに囲まれるスリガラス様陰影の巣状,円形領域と定義されるHRCTパターンである,しかし,時々,それは不完全なこともある.RHSは,まず最初に,COPの診断における比較的特異的な所見と報告された[1].他の研究において,パラコクシジオイデス症[2],結核[3],接合菌症[4],アスペルギルス症[4]のような感染症や,COP[1],ウェゲナー肉芽腫症[5],LYG[6]とサルコイドーシス[7]の様な非感染性疾患を含む広い範囲の疾患にこの徴候を認めた.従って,RHSはさまざまな肺疾患で起こる非特異的徴候と考えなければならない.ときに,感染症のfollow-upの際に,この徴候は,最初の感染に対する反応としての二次性器質化肺炎において認めることがある.本研究の目的は,最終診断が組織病理学によって確認された症例において,HRCT上RHSを呈する疾患の範囲を示し検討することである.
感染症
肺パラコクシジオイデス症
パラコクシジオイデス症は,ラテンアメリカで最も頻繁な風土性の全身性真菌症である.疾患は,Paracoccidioides brasiliensisを含んでいる感染性粒子の吸入によっておこる.肺パラコクシジオイデス症患者のHRCT所見は,スリガラス様陰影の領域,小葉中心性小結節影,空洞化結節,parenchymal bandsとparacicatricial emphysemaの領域を認める[2,8].ガスパレットらは,パラコクシジオイデス症患者においてRHSを148例のうち15例(10%)に認めた.(図1) [2]
肺結核
特に発展途上国で,結核はヒト結核菌に起因する空気細菌症で,罹患と死亡の主要な感染症である.複数のHRCT所見は一次結核の既往歴を有する患者に認められる可能性がある.その所見は,小葉中心性または気腔内小結節と分岐線形構造(tree-in-bud pattern),浸潤影,空洞化,気管支壁肥厚化,粟粒性小結節,結核腫,石灰化,parenchymal bands,小葉間隔壁肥厚,スリガラス様陰影,paracicatricial emphysema線維化を含む.[3,9]結核のRHSの報告は,症例報告に限定される[3].考えておかなければならない重要なことは,活動性肉芽腫症のRHSのringは肉芽腫の存在のため,結節性の所見を呈する場合があるということである.[9]この所見は器質化肺炎の鑑別診断に対する重要なクライテリアとなりうるが,その所見とより結核に典型的なCT画像徴候との関連は原因を疑う際の最も重要な因子である.(図2)[9]
血管侵襲性肺アスペルギルス症
血管侵襲性肺アスペルギルス症は,もっぱら免疫抑制患者(特に著しい好中球減少を伴う人々)だけにおこる.血管侵襲性アスペルギルス症は一つまたは複数の小結節があり,典型的にはスリガラス様陰影の輪によって取り囲まれる所見(CT halo sign)や,浸潤影またはスリガラス様陰影が特徴である。これらの所見は出血梗塞に対応する,そして,空洞化が起こる場合もある.回復期間に,梗塞性肺の断片は隣接した肺実質と分離(pulmonary sequestra)する可能性がある.その結果三日月状空気を伴った空洞が形成される(すなわち,air-crescent sign).[10]WahbaらによってそのRHS(図3)は,1例報告された.[4]
ニューモシスチス肺炎(PCP)
この肺炎,は以前Pneumocystis
cariniiと言われていた真菌性微生物Pneumocystis
jiroveciに起因する.最も頻度の高いHRCT所見は,肺末梢がスペアされ,モザイクまたはほとんど均一なパターンを示す両側性スリガラス様陰影である.あまり一般でない徴候は,airspace consolidations,斑状線状網状陰影,孤立性または複数の小結節,実質性嚢胞性病変と胸腔へruptureした肺嚢胞による気胸を含む.スリガラス様陰影と小葉内線状陰影の組合せは,crazy paving patternを呈する.[11]我々の知る限りでは,PCPとRHSの関係はこれまで報告されていない.(図4)
非感染性疾患
原因不明の器質化性肺炎(COP)
COPは,肺胞内,肺胞管内,範囲は狭いが細気管支(Masson bodies)において肉芽組織ポリープの存在によって特徴づけられるまれな肺疾患である;これらのポリープは,巣状器質化肺炎と関係している.最も頻度の高いHRCT所見は、実質性浸潤影またはすりガラス陰影の領域である.それらはもっとも多いのが両側性で、典型的には胸膜直下または気管支血管束周囲の領域にあって、主に下葉に存在する.小結節または腫瘤は,ときに周囲の輪(すなわち,halo sign)を伴うことがある.最初,RHSは,COPに特異的であると言われたがこの疾患では希である(図5).COPの他のあまり頻繁でない所見は,小葉中心性小結節,気管支拡張と小葉間隔壁肥厚である.[1,12]
細気管支肺胞上皮癌
細気管支肺胞上皮癌は,腺癌のサブタイプである.肺胞内進展と間質構造は保ちつつ置換性に増殖する.HRCT上,細気管支肺胞上皮癌は様々なdensitiesを有する単一,または多発性の肺結節を示す.空洞や,air bronchograms,bubblelike lucencies of pseudocavitation,孤立性または多巣性GGO,crazy paving pattern,肺葉または多肺葉性浸潤影,またはこれら所見の組み合わせを伴う,または,伴わないこともあった.[13]我々の知る限りでは,細気管支肺胞上皮癌にかかったRHSの関係は,これまで報告されていない.(図6)
ウェゲナー肉芽腫症
ウェゲナー肉芽腫症は,優位に上下気道,肺と腎臓を侵す壊死性肉芽腫性血管炎が特徴であり,原因不明のmultisystem diseaseである.壊死性糸球体腎炎の欠如は,“limited form”として定義され,初期疾患であると考えられる.ウェゲナー肉芽腫症の診断は,抗好中球細胞質抗体と生検によって確認される.HRCT所見は,肺小結節または腫瘤,スリガラス様陰影または浸潤影と気道病変から成る.空洞化は一般的である.浸潤影とスリガラス様陰影は,通常出血に関連がある.[5,14]Agarwalらは,RHSを呈するウェゲナー肉芽腫症の1例を報告した.(図7)[5]
肺水腫
肺水腫は,基本的に肺微小血管圧の増加,血漿コロイド浸透圧の低下または微小血管透過性の増大から生じる共通の病態である.これらの現象は,孤発性または組み合わさって生じる場合がある.主なHRCT所見はスリガラス様陰影,小葉間隔壁肥厚,crazy paving pattern,胸水貯留,気管支血管束周囲間質の肥厚である[15].あまり一般でない所見は,増加した血管径,浸潤影,気腔小結節とRHSnである.(図8)
サルコイドーシス
サルコイドーシスは,原因不明のさまざまな身体部位に病変をおこす非乾酪性肉芽腫性炎症が特徴である.HRCT所見は,極めて様々である.両側肺門リンパ節腫脹はサルコイドーシスの最も頻度が高い特徴で,概して両側性肺門および右傍気管リンパ節腫大を呈する.肺病変は,複数の小さいリンパ管周囲の小結節の存在によって特徴づけられる.それは気管支血管束周囲の肥厚と小葉間隔壁肥厚,胸膜表面,葉間裂のサルコイド肉芽種結節性肥厚に対応している.他の特徴は,気管支壁肥厚,GGA,RHS(図9),多数のより小さい小結節の合併から形成される大結節が末梢の衛星結節により取り囲まれる(以前,"sarcoid galaxy" signと述べられた)所見を含む.[7]
結論
様々な疾患が,胸部HRCTにおいてRHSを示す.このパターンは多くの場合原因不明のCOPの徴候である,しかし,それは炎症性であるか,腫瘍であるか,感染性疾患のような他の疾患を伴う場合もある.RHSは比較的非特異性であるにもかかわらず,RHSと臨床所見及び他のHRCTパターンの関連は時々医師が鑑別診断を狭めるのを補助することができる.COPは特発性かまたは,感染症,膠原血管病,好酸球性肺疾患,ウェゲナー肉芽腫症と腫瘍に続発する場合があるので,RHSが原疾患か二次性器質化肺炎の徴候であるかどうかについて知ることは困難である.haloの形態学的側面,特に壁または病変内部の小結節の存在は,通常一次性のCOPよりもむしろ活動性肉芽腫症(感染またはサルコイドーシス)を示す.
Fig. 1—59-year-old man with pulmonary
paracoccidioidomycosis.
B. VATS下に得られた組織.矢印は肺胞隔壁に炎症細胞の浸潤.中心部の肺胞腔は比較的保たれており,末梢のhaloにはdenseまたは均一な肺胞内細胞浸潤を認める(not shown).
C.Grocott-Gomori methenamine染色.真菌の存在を確認.
Fig. 2—32-year-old woman with pulmonary tuberculosis.
B.開胸生検組織.リング状の壁(asterisk)にはconfluentな肉芽種を認める.
Fig. 3—44-year-old woman with chronic
leukemia and invasive pulmonary aspergillosis.
A.左下葉のRHSを伴うmass.
B. VATS下生検にて得られた組織.mass内の出血(asterisk)を示している.
C. Grocott methenamine silver stain.矢印は肺実質を侵す肺末梢病変におけるhyphae of Aspergillus
organismsを示す.
Fig. 4—37-year-old man with AIDS and Pneumocystis jiroveci pneumonia.
B. VATS下生検にて得られた組織.泡沫状の浸出物(主にサーファクタント,フィブリン,細胞性debris)により気腔内が部分的に満たされている(asterisk).また,肺胞隔壁に炎症性細胞の浸潤が認められる(矢印).肺生検組織にてdense haloのcomponentを同定できなかった.
Fig. 5—67-year-old man with cryptogenic organizing pneumonia.
B. 開胸肺生検にて得られた組織.Dense haoはpolypoid
fibroblastic foci (asterisks)による気腔(終末細気管支,肺胞管,肺胞)内の障害によって形成される.
Fig. 6—54-year-old man with bronchioloalveolar carcinoma.
B. 開胸肺生検にて得られた組織.肺の構造は保持され,肺胞壁を裏打ちする腫瘍細胞の増殖が見られる(arrowheads).末梢のhaloは腫瘍細胞のdenseな増殖によって形成される.
Fig. 7—52-year-old man with Wegener granulomatosis and hemoptysis.
B. VATS下生検にて得られた組織.Dense haloは血管を侵す壊死に伴う炎症性細胞浸潤によって形成される(arrows).小血管の壊死性血管炎が認められる.
Fig. 8—47-year-old woman with
noncardiogenic pulmonary edema secondary to us use of nitrofurantoin for
treatment of urinary infection.
A.HRCT 所見は,不完全な浸潤影のリングによって囲まれるnodular GGOである.
B. 薬剤中止4日後のfollow-up CT である.
Fig. 9—44-year-old woman with
sarcoidosis.
B.VATS下に得られた組織.scattered, well-demarcated, nonnecrotizing granulomas (asterisks)を認める.dense haloは末梢病変における高濃度の肉芽種病変によって形成される.