2012年11月2日金曜日

asthmatic granulomatosisー新しい疾患なのだろうか?

先日旧清和村の道の駅で購入した新米はうまかった..食べ物ネタはそのくらいにして

Asthmatic Granulomatosis
A Novel Disease with Asthmatic and Granulomatous Features
AJRCCM 2012;186:501-507.

 Sally E. Wenzelらの報告である.

Abstruct
重症喘息は,気管支喘息患者全体の5-10%を占めるが,十分に理解されていない.
喘息は多くのヘテロなフェノタイプから成り立っているという理解が強くなっているが,その免疫病理,特に末梢気道,間質における免疫病理は十分に理解されていない.
目的
非典型的な難治性喘息の病態生物学を同定すること.
方法
重症喘息の定義を満たす19例(17例が女性,2例が男性)から10例を報告する.19例の患者は,連日全身性ステロイド(CS)が必要であり,胸部のCTにて矛盾した異常があり,更なる診断と管理のためVATSを行った患者である.
測定と主要な結果
19例のうち10例の病理で,喘息に一致した細気道変化(好肉芽種の酸球増多,杯細胞過形成)を伴っていたが,同時に喘息としては説明のつかない間質の非壊死性肉芽種の所見を伴っていた.これらの患者に過敏性肺炎の所見はなかったが,70%の症例が自己免疫性疾患を伴っていたり,家族歴を有していた.10例はアザチオプリン,ミコフェノール酸,メソトレキセート,インフリキシマブによる治療を受けた.10例中9例はCSの必要性が低下し,より低いCS投与量にもかかわらずFEV1の改善,または維持が得られた.残り9例のうち6例は喘息の細気道病変を示していた.または肺胞隔壁の単核細胞浸潤を伴っていた.しかし肉芽腫は認めず,更に3例は他の病理所見(誤嚥,肺炎,または血栓塞栓)を示していた.

結論
これらのデータは重症「喘息」の一つのサブセットとして肉芽種病理を示すものがあり,それを我々は「asthmatic granulomatosis」と命名する.この疾患の同定は現在のところ胸腔鏡下生検が必要であるが,治療のための他のアプローチがアウトカムの改善をもたらす.

19例の重症喘息患者
CT scanでは肺実質の異常なし.非典型的な喘息(DLco低値),成人発症,持続性好酸球増多,またはforced expiratory flow midexpiratory phase (FEF2575% predicted)が非常に低下した患者で,経過中改善しないかまたは増悪した患者に対してVATSを勧めた.

Follow up
19例中17例がほかの抗炎症治療,または細胞障害性薬剤による治療をおこなった.すなわちアザチオプリン,メソトレキセート,または抗TNF-α製剤(レミケード)を使用した.これらの薬剤をまず3か月間投与し,反応があれば12-48ヶ月続けた.効果がなかったり,つづけられない場合は中止した.「responder」は,①プレドニゾロンを5mg以下に減らすことができる,②経口CSの量が少ないにも関わらず,%FEV1が維持できるか,または改善,③follow up1年間に経口CSを必要する増悪が1回以下である場合である.

Table1
Demographics and clinical characteristicsTable 1に示す.19例中この10例は重症喘息と診断され,VATS生検を行った患者で,病理学的に喘息性の細気道病変があり,間質および気道中心性の非壊死性肉芽種を認めた.全患者は紹介医により重症喘息と診断されており,経口CS dependent5-60mg/day服用していた.1omalizumabを使用していたが,MTXを使用したものはいなかった.全例白人,9/10が女性,8/10が中年.ほとんどが成人発症で,全例副鼻腔疾患を有していた.患者は現在症状があり,咳,喘鳴,chest tightness,息切れの症状があった.GERDを疑う症状なし.1/10はアスピリンにより増悪する呼吸器疾患があった.全例ICS, LABA, LTRAの典型的気管支喘治療を受けていた.夜間覚醒は一般的でなく,過去1年間に3回以上の増悪が多く,増悪した副鼻腔疾患によりそれは誘発された.全例10 pack-yearsの喫煙歴があったが,過去1年間喫煙したものはいなかった.Wheezingは一般的であったが,cracklesは認めなかった.

 胸部CT 5例は正常,残り5例は非特異的細気管支拡張,細気管支壁肥厚,pacthyな亜区域のair trapping,亜区域の無気肺,tree-in-bud opacities,中枢気道の小粘膜結節の所見があった.

末梢血Eosの増加はほとんどの症例で存在.全身性CSsの投与にも関わらず,FENOは上昇していた.IgEは全例高いわけではなかった.過敏性肺炎の沈降抗体スクリーニングは陰性.アトピーは6/10例で認めた. CTスキャンにて副鼻腔疾患を9/10例で認めた.5/10例で副鼻腔疾患の手術歴があった.10例中60%に自己免疫疾患の家族歴があった:RA, Crohn病,MCTDCRST症候群,DM2例の患者は自己免疫疾患の病歴があった(乾癬,非活動性のCrohn病).

病理学的なコントロール群:十分に喘息がコントロールされ肺疾患以外の疾患で死亡した17例の喘息患者の剖検所見.喘息性の気管支炎,細気管支炎の所見が認められたが,肉芽種は認めなかった.単核細胞のpatchyで目立たない間質への浸潤が35%の患者に認められた.

Autoimmune diseaseとの関連
アスピリンにより増悪する呼吸器疾患や最近では鼻ポリープは自己抗体の形成と関連している.
クローン病と喘息との関連
など

治療に対する反応
10例中が経口CSsによる治療が行われ,投与量は5-60mg/dayであった.治療期間は20年にわたる症例もあった.10例中6例でアザチオプリンが投与され,1例でMTX1例でinfliximab1例でミコフェノール酸が投与され,CS投与量を5mg/day1に減量することができた.

 結論として,この新しい疾患は喘息,自己免疫疾患,肉芽種性疾患の特徴がオーバーラップしており,高容量のCSよりも細胞障害性薬剤や,抗炎症薬により反応しやすい.特に女性で,成人発症,自己免疫疾患の家族歴があり,DLcoが低く, FEF25-75%が予測値よりも不均一に低い値を示し,末梢血好酸球増多があり(200/ml),全身性のCS使用にもかかわらず FENO30 ppb以上と高い値を示すCS依存性の非典型的重症喘息患者においてVATS生検を考慮すること提案する.関与する免疫pathwayの解明と,より容易にこの疾患を診断し,治療するためのバイオマーカーの開発が必要である.