2012年11月28日水曜日

ILD in connective tissue disordersーLancetから


 Interstitial Lung Disease 2
Interstitial lung disease in connective tissue disorders
Lancet 2012;380:689-98.

Abstruct

間質性肺疾患(ILD)に伴う結合織疾患関連のILDCTD-ILD)の問題は 潜在的に相当な罹患率と死亡率を有する障害―をいかに定義し,診断し,治療するかということである.
このレビューにおいて、我々はCTD-ILDに関する予後について述べ、そして何がアウトカムを予測する因子かについて,そして全身性硬化症関連のILDと特発性肺線維症の臨床試験からの知見についても述べる.そしてこれらの知見が,将来的なCTD-ILD研究にどのように適応できるかについて述べたい.

Introduction
間質性肺疾患(ILDs)は、特定の臨床、放射線学的および組織病理特徴(パネル)によって分類される一群のびまん性肺疾患である。
しばしば、ILDには定義可能な基礎原因がなく、特発性と考えられている。
しかし、しばしばそれは特定の環境曝露または基礎をなす結合織疾患(CTD)を伴う。
CTは、高い精度でILDの特徴を描写することを可能にした。
その結果、ほとんど全てのILDs(特発性間質性肺炎を含む)の明確な特徴がよく示された。そして、それはアウトカムの予測と、最善の治療の決定に役立った。
おそらく、ILDで最も緊急な課題の1つは,CTD-ILD かなりの罹患率と死亡率を伴う疾患であり,予後と最善の治療をめぐる論争のある疾患である.)の性質と重要性をより明らかにすることである.
重要な問題は,どのようにCTD-ILDの様々なサブグループ,特に全身性疾患の不完全型として存在するCTD-ILDを定義し,特に予後と治療に関するILDの影響を調べるかということである.
問題は、CTDにおける肺障害の広範な性質と肺への異常な変化の多くの組合せ― 特に気道疾患とILDによって更に難しくなる。
CTDcollagen vascular diseaseの呼称が、取り換えられて使われている.CTDとは免疫性臓器機能不全が特徴の様々な全身性自己免疫疾患であり,以下を含む:RA; SLE; SSc(強皮症); 原発性シェーグレン症候群; 多発筋炎、皮膚筋炎とantisynthetase症候群; MCTD;、そして、未分化CTD
かなりのheterogeneityCTDの間に存在する、そして、各々はさまざまな臨床像を伴う。
これらの疾患は、しばしば肺をターゲットとする自己免疫性臓器障害を示し、様々な発現頻度や罹患率をもつ多くの肺症状と関係している-基本的に、気道のあらゆる構成要素が障害のリスク状態にある(表1)。
若干のCTD(例えば、SScantisynthetase症候群とRA)は他の疾患よりILDを伴いやすい、しかし、CTDを有するすべての患者はILDのリスクがある。そして、ILDは最初の,または唯一のCTDの表現型となるかもしれない。
CTDを有する多くの患者は,無症候性患者でHRCT上の間質性肺病変の存在によって定義される無症状ILDであり,それは更に問題を難しくする。
ILDCTDを有する多くの患者におこり、無症候性に確認される.したがって、正確にフェノタイプ化されたコホートの経時的研究は病気の進行、治療の反応性とその結果を理解するために展開できるであろう。
CTD-ILDがクリニックにおいてしばしば遭遇し、集中的に検討されたにもかかわらず、治療介入の予後と選択とタイミングに関するいくつかの疑問は残ったままである。
CTD-ILDの有病率は知られていない。従ってILDの検出のためのスクリーニング評価は価値がある。
診断と分類についての質問が残されるー 例えば、患者はILDの型によって、または、CTDの型によって分類されなければならないか?、特発性ILDのどんな自己免疫側面がCTD-ILDに特徴的なものか、そして、それを見つけることは重要か?。

CTD-ILDの分類
ILDCTDと関係しているか?特発性か?ということは、それが疾患アウトカムや,治療の選択,治療の反応に影響を与えるときのみ,または疾患のメカニズムを研究したり質の高い臨床試験を行う時のコホートを定義するのに役立つときのみ推論する価値がある.
最も重要なのは、CTD-ILDは、同等の重症度の特発性間質性肺炎より良好な予後と関連している。
全身性硬化症の場合、ILDの治療法に関する2つのトライアルにおいて,正確な疾患分類は、うまく患者を登録し、試験を完了させることができた。
その上、CTDの合併は,胸郭外疾患の表現型の背景を提供し、特定の胸郭外症状の調査の必要を強調して、管理方針の決定を導く。
特発性ILDを持つ人々と比較して,CTD-ILDを有する患者における改善された予後は、ILD発症リスクのある患者において肺疾患をより早期に発見し,無症状であるか非進行性ILDCTD-ILDで一般的であるという事実に起因している。
更に、特発性間質性肺炎(特に特発性肺線維症)と比較して、CTD-ILDをもつ患者はより抗炎症性治療または免疫抑制性治療を受けそうである。そして、これらの治療は生存に影響を及ぼすかもしれない。
CTD-ILDがある患者をIPFと誤診してしまうことは、その患者から抗炎症治療法 特発性肺線維症患者にもはや推薦されない治療 を奪う可能性がある.
CTDを有することがより良い予後をもたらさない可能性のある唯一の状況は、関節リウマチがありかつUIP病理組織パターンを有するILDがある場合である.
この状況では、結果は特発性UIP(すなわち、IPF)の患者と比較して少しも良好でない。
しかし重要なことは,関節リウマチに伴うUIPの存在は喫煙と関係しているかもしれない。そして、それがより不良な予後の原因なのかもしれない。
CTD-ILDは通常、改善された生存を伴うので、医師には疾患をCTD-ILDと定義する理由を見つけたいという固有の願望があるかもしれない。
しかしながら、ILDCTDと本当に関係しているかどうかについて確定することは、除外診断のプロセスが必要である。
基礎疾患としてCTDを有する患者は、肺疾患の他の原因(例えば呼吸器感染症、薬剤の毒性、環境曝露または誤嚥によって誘発された肺障害)を除外するために、完全な評価を必要とする。
同様に、ILDは全身性疾患の表現型であるかもしれないので、CTDとの関係を明らかにするのは困難である- 特発性間質性肺炎を呈している患者の約15%はそれに関連したCTDがあると最終的に確認されている。
特定のCTDに対するきわめて特異度の高い自己抗体(例えば、抗CCP抗体とと関節リウマチ)は明らかな全身性の症状がなくても存在することがある.この問題は、更に診断上の課題を提起する。
特発性間質性肺炎の患者、特に女性とCTDの胸部外症状(例えば、レイノー現象)を有する患者または自己抗体陽性患者を評価するとき、医師はCTDが潜在的に存在しているのではないかとすぐに気づく必要がある。
よく特徴を描写された、確立したCTD-ILDformsと比較して、この疾患のoccultまたはprobable formがより良好な結果と関係しているかどうかは、知られていない。
特に組織病理パターンがNSIPと分類されるとき、特発性間質性肺炎はすべて,潜在性CTDにおける肺の表現型になりうるかもしれない。
患者はCTDの諸相を呈するが、しかし、採用されたクライテリアにしたがってリウマチ疾患を正しく診断するには十分でないことがある.
肺が潜在性CTDの唯一であるかまたは最も臨床的に重要な表現型であるように見えるこれらの患者は、全身性自己免疫疾患を有する疑いがあり、血中自己抗体や外科肺生検検体の特異的病理組織学的特徴またはわずかな胸部外症状によって同定され、特発というよりはむしろlung-dominant CTDとして分類できる。
さらに、ILDCTDの不完全な表現型を示しているかもしれないという認識にもかかわらず、米国リウマチ学会基準は、孤立したILDに対する特異的なCTDの名称を持っていない.
そのような呼称が管理方針の決定に影響を及ぼす場合,または、各疾患の自然史が異なる場合にのみ,独特な疾患,またはCTD-ILDを有すると分類することが正当化される。
これらの患者の同定と分類に対する戦略は、論争の中であり不十分である。
そのような患者を分類する用語として提案された名称は、未分化CTDundifferentiated CTD)、肺病変優位CTDlung-dominant CTD)と自己免疫の特徴を有したILDautoimmune-featured ILD)である(表2、図1)。
KinderらはすべてのNSIPが実際は未分化CTDundifferentiated CTD)を有することを提案したが,この提案された再分類は簡単なものではない.
未分化CTDの分類は、リウマチ学領域の中で確立されていて、軽症疾患の進行中,または部分的な表現型疾患のより穏やかな型の進化,または部分的な表現型とみなしており、ILDまたは他の器官を障害する疾患によって出現したとは伝統的にみなされない。(表2
さらにまた、Kinderらによって提案されたより大まかな基準(表2)は,CTD-ILDの不適切な診断をもたらす― たとえば,NSIPGERD,そして亢進したESRを有する患者はCTD-ILDと不適当に分類される可能性がある。
Corteらもまた、特発性間質性肺炎患者を有する患者が,未分化CTDを有すると定義する臨床的妥当性に疑問を持った.
彼らは、レトロスぺクティブに生検にて確認された45例のNSIP患者と,生検で確認された56例のUIP患者を調べた。
彼らはCTDの特徴が特発性間質性肺炎患者で一般的であると報告した.すなわちNSIP患者の31%IPF患者の13%で未分化CTDの確立した診断基準が満たされた。(表2
しかしながら、未分化CTDの提案された診断基準のより幅広い、より特異度の低いセットを使用すると、NSIP患者の71%IPF患者の36%は未分化CTDであると再分類できた。
その劣った特異度のため、彼らは特発性間質性肺炎患者において未分化CTDを定義する基準のより幅広い定義の更なる使用に反対した。
これらの幾分はっきりしない病気の予後的意味を調べることを試みた研究がいくつかある。
Corteらは、狭い基準に従った未分化CTDの診断がNSIPの組織病理パターンと関係していたにもかかわらず、未分化CTDを有すると分類されることがこれらの患者における生存に影響を及ぼさなかったことを示した。
フィッシャーらは、生検で確認された、特発性UIPの患者において、抗核抗体(ANA)検出の予後に関する重要性を評価した。
285例の患者のうちの25例は核小体パターンANAを持っていた、そして、レトロスペクティブな評価においてIPFよりもむしろ全身性硬化症のわずかな胸部外症状を有していた.
核小体パターンANAコホートにはlung-dominant CTD表現型があったにもかかわらず、陽性核小体パターンANAを有するUIP患者(すなわち、possible CTD-ILD)とIPFの患者の間に生存の差は見られなかった。
Vijらは、レトロスペクティブに、AIF-ILDを有すると確認されたUIP優位型ILDの患者コホートを調査した。
ILD紹介センターの200例の患者のうち、63例はdefinite CTDと定義するには不十分な特徴を有しており,CTDを疑う徴候や症状があり,自己免疫プロセスに対する血清学的テスト陽性であったので,AIF-ILDを有していると考えた(表2).
AIF-ILDを有していると考えられた患者はIPFの患者と同じ生存アウトカムを有していたが,definiteCTD-ILD患者よりは生存アウトカムが悪かった.
AIF-ILDを持つ人々のうち、1:1280を超える力価のANAの存在のみが改善された生存と関係していた。そして、それは提案された基準に組み込まれる非特異性症状に対する過剰な依存に不利な証拠を提供する。
たとえCTDがなくても、外科肺生検検体がUIPと整合した組織病理パターンを示した患者からの他のデータは、循環する自己抗体の存在が特定の自己免疫組織病理特徴と関係していることを示唆する。
Songらは、生検で確認されたUIP患者の3つの群の間で、第2の組織病理特徴を比較した。
1n=39)はCTD関連UIPがあった、群2n=27)はANAまたはリウマチ因子陽性特発性UIP(すなわち、抗体陽性IPF)があった、そして、群3n=34)は抗体陰性特発性UIP(すなわち、抗体陰性IPF)があった。
CTD関連UIP患者は、より多くの胚芽中心とplasma細胞,更に特発性UIP患者よりも少ないfibroblastic fociが認められた。
自己抗体状態によって分けられる群23の間で組織病理特徴は異なった;
2のいずれにもCTDの胸部外特徴がなかったにもかかわらず、彼らは群3より多くの胚芽中心とplasma細胞が認められた。
特に、組織病理特徴は、CTD関連UIP(群1)と抗体陽性特発性UIP(群2)を区別しなかった。
特発性UIP(群23)患者のうち、抗体ステータスは生存を予測しなかった、しかし、群23の患者においてはCTD関連UIP(群1)の患者より予後が悪かった。
(非特異的であるが)循環する自己抗体と組織病理学的特徴との関係は興味深く、この患者コホートにおいて全身性自己免疫が病因として重要性かもしれないという可能性、そして、肺が自己抗体産生のもとであるかもしれないという可能性を生じさせる。
アウトカムの違いについての明確な結論は、possibleまたはless well defined diseaseのこれらのretroに特定された患者コホートからまだ出されていない。
しかし、これまでの研究の結果は、これらの群の間に違いが存在しないことを示唆する。
呼吸器病学およびリウマチ学コミュニティーは、この学際的な分裂に対処するためにCTDの特徴づけと分類について同意する必要がある。
重要なことは、提案された用語または基準のいずれも暫定的とみなければならない.
我々はpossible または less well defined CTD-ILD(未分化CTD)は,その確立した疾患を有する患者と区別すべきである.なぜならそのあまり明確でない疾患の自然史と,それが真にCTD-ILDとしてふるまうか否かまだ価値がはっきりしないためである.
よく組織された前向き研究は、いくつかの重要な質問に答えるために必要である。
あまり十分定義されていないものから,十分定義されたCTDへ進化する時に,役割を果たす特異的自己抗体は存在するのか?
疾患が明確なCTDと関係しているかどうかにかかわりなく、ILDを有する患者で自己抗体の存在は、予後の有意性をもたらすか?
定義済みのCTDとの関連にかかわりなく、特定の自己免疫組織病理特徴は、生存と関係しているか?
我々はCTD-ILDpossible formsを伴った患者に対する多施設共同研究で使われるものよりさらに統合された、一貫した分類基準のセットをどのように 考案し、実現することができるか?