2017年4月27日 熊本大学総研にて
【教育症例】
20歳,男性,学生
6月喫煙開始.約2週間後に乾性咳嗽,全身倦怠感出現.タバコも吸えなくなった.
体温36.9℃,PR 124/min,呼吸数 22回/分,呼吸音 清,SpO2 95% '(RA)
WBC 11100 (Seg 83%, Ly 13%),CRP 22.8,TARC 14700,胸部CT 両側肺にすりガラス影,浸潤影,小葉間隔壁肥厚あり.更に両側胸水貯留を認めた.
BAL: 13x105/ml,Eos 43%
後日末梢血の好酸球増多を認めた.
診断は急性好酸球性肺炎.自然経過で改善傾向にあったが,ステロイド著効.ステロイド治療期間は2週間.
治療について
ステロイド
2W
4W 治療に差がない.
胸水貯留は8割の症例で認める.
【症例提示】
症例1 40歳代の女性
主訴:頸部痛,腰痛
半年前から頸部痛,腰痛の増悪あり.
骨病変の精査(CTガイド下骨生検).
既往歴に子宮頸がん,骨粗鬆症,Sarcoidosis
胸部CT:肺野病変:小粒状影の集簇した陰影.結節影,分布はperilymphatic distribution
腋窩リンパ節腫大と,腹部大動脈周囲リンパ節の腫大あり.肝脾腫あり.
採血はSIL-2Rの増加 (1348),
biopsyにて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め,診断は骨サルコイドーシス.
骨サルコイドーシス:慢性経過を呈した症例で遅れて出現.
MRI T1 低信号,T2脂肪抑制 高信号
骨粗鬆症の既往との関連,治療について興味のあるところ.
NSAIDS投与で経過をみたとのことである.
症例2
52歳,男性
主訴は右肩関節と上肢の痛み
整形外科を受診し,胸部異常陰影精査目的に呼吸器内科紹介となる.
身体所見に異常なし.酸素化の低下なし.
WBC 8700/μl(Neu 69.5%,Eos 4.5%),腎機能障害なし,各種腫瘍マーカー異常なし,CRP
右上葉に浸潤影,気管支血管束周囲の分布?その他結節影.造影効果はなし.内部は比較的均一.
診断はGPA
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/imed3/lab_2/page4/vasculitis_gpa.html
2017年6月27日火曜日
2017年6月19日月曜日
慢性咳嗽についてNEJM2016より
NEJM 2016;375:1544-51.
CLINICAL PRACTICE
Chronic Cough
この記事は、臨床的によくある問題に焦点を当てながら症例提示を行う。それから様々な戦略を支持するエビデンスを示し、更に公式のガイドラインが存在する場合はそのレビューを行う。そして最後に著者の臨床的な推奨を述べる。
63歳女性、1年続く慢性咳嗽。のどのイガイガ感を伴う。咳嗽の遷延性発作により腹圧性尿失禁を引き起こし、ときに嘔気と嘔吐が出現。咳嗽は気温、強烈な臭い(例えば、cleaning productsの臭い)、笑い、長びく会話で誘発される。彼女は特記すべき既往歴はなく健康で、喫煙歴もない。彼女は気管支拡張剤とステロイドの吸入・点鼻薬を処方されたが症状は改善しなかった。身体所見、胸部X線撮影と肺機能検査結果は正常である。
あなたならこの状態をどのように評価し管理するだろうか?
THE CLINICAL PROBLEM
咳嗽は、患者が治療を求める最も頻度の高い症状である。咳嗽の罹患率は様々に報告されているが、一般集団の12%ほどが慢性咳嗽を示すという報告がある。8週以上続いている咳嗽を慢性咳嗽と定義する。慢性咳嗽は男性より女性に多い。最も多いのは50歳から60年歳代に発症し、数年持続する。相当な身体的、社会的および心理的影響を伴う。患者が1日につき数百~数千回咳嗽をすることを想定すれば、慢性咳嗽の機能障害の影響は理解できる。すなわち慢性咳嗽は急性ウイルス性咳嗽で生じる咳の頻度と類似しているが、数ヶ月あるいは数年の間持続するのである。大部分の患者は、咳嗽について痰はないか、あっても非常に少ないと言う。過剰な痰は、気管支拡張症または副鼻洞疾患を示唆する。
慢性咳嗽は多くの一般的な呼吸器疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患、喘息と気管支拡張症)と、若干の一般的な非呼吸器疾患(例えば、胃食道逆流や鼻副鼻腔炎)の症状である。そして、咳嗽はよりまれな疾患(例えば、特発性肺線維症や好酸球増加性気管支炎)の主症状である場合がある。咳嗽はまた多くの薬物治療の副作用ともなりうる。最も一般的なのは、ACE阻害剤による咳である。ACE阻害薬で治療される患者の約20%で咳嗽が生じる。慢性咳嗽患者は様々な病院にやってくる。そして速やかに症状が改善しない場合、これらの患者は診断と治療を求めて多くの病院や多くの医師のもとへ行く可能性がある。プライマリケアにおける慢性咳嗽の自然史はこれまで十分に調査されてこなかった。しかし、専門クリニックで診断がつかず、7年以上後に再評価された一連の慢性咳嗽患者において、咳嗽は14%で自然寛解し、26%で減少した。
KEY CLINICAL POINTS
慢性咳嗽
・慢性咳嗽(咳嗽が>8週を超えて続く)は、一般的であり機能障害性にもなりうる。
・慢性咳嗽は多くの呼吸器疾患の特徴である。一般的な誘因(喘息、胃食道逆流や後鼻漏)は検査によって、または治療によって通常除外されなければならない。
調査と治療アルゴリズムは主に合意した意見(consensus opinion)に基づく。そして無作為試験によって、より多くのデータが必要とされる。
・臨床試験からの限られたデータではあるが、低用量モルヒネ、ガバペンチンまたはプレガバリンと言語療法は、他の検査と経験的治療を行っても持続する咳嗽患者に対して有益であることが支持されている。
・より新しいエビデンスによると、咳嗽反射過敏症が慢性咳嗽の基礎をなすことを示唆している。しかし、その機序とそれに関連した治療の可能性に関するより多くの研究が必要である。
STRATEGIES AND EVIDENCE
専門のガイドラインは、慢性咳嗽の評価と管理に対する系統的アプローチを述べている;
これらのガイドラインは、医学文献から得られた合意意見と観察的なデータに広く基づいている。医療業務の供給、診断検査の利用、処置戦略は国家間で違いがあるにもかかわらず、咳嗽のアプローチは概ね4つの主要なステップに単純化することができる(図1)。ステップ1:IDENTIFICATION AND TREATMENT OF OBVIOUS CAUSE
明かな原因の同定と治療
患者の事前評価には病歴、臨床検査、胸部X線撮影と肺活量測定が含まれるが、この評価によって慢性咳嗽の基礎をなす可能性がある広範囲にわたる病態を確認し、除外することができる。そして、その病態の初期管理はどんな陽性所見によってでも導かれなければならない。病歴と身体所見は、ACE阻害薬のような薬物、喫煙または職業性曝露、重篤な基礎疾患を示唆するあらゆる症状や徴候(例えば、体重減少または喀血。どちらの症状も肺癌に関する懸念を引き起こす可能性がある)を記載しなければならない。喘息は、しばしば喘鳴の既往歴によって示唆される;しかしながら一部の喘息患者は、喘鳴はないか軽度である。そのような病態を“cough-variant
asthma”という。そのような症例に肺機能検査を行うと、気管支拡張剤にて改善する閉塞性パターンが明らかになるかもしれない。異物吸入の可能性がある場合、緊急検査は是認される。
喘息、胃食道逆流症。鼻副鼻腔炎の検査
胸部X線撮影と肺機能検査が正常な状況では、慢性咳嗽を伴う最も頻度の高い疾患は喘息、胃食道逆流症と鼻副鼻腔炎である。しかし、これらの各々の有病率は咳嗽クリニックの間でかなり変化する。
喘息症例の大部分はルーチンのスパイロメトリに異常を認める。気道過敏性を評価するメサコリン誘発試験は、正常肺機能を示す患者やほかに咳嗽の原因が全くない患者において適応となる。そして呼気NOのレベルもまた上昇するかもしれない。咳喘息の管理を示す無作為試験からのデータは不足しているが、通常臨床経験ではICS治療に反応することが示唆されている。吸入薬は患者によっては咳嗽を誘発する。そして、それは必然的に気道への治療の送達を抑制する。吸入deviceの変更(例えば、スペーサ装置の使用)により咳嗽が良好な反応を示す患者もいれば。1~2週間の経口グルココルチコイド治療が有効な患者もいる。
咳嗽と胃食道逆流の関係は、複雑であるが明らかにになりつつある。ガイドラインは慢性咳嗽患者において。酸抑制治療のトライアル。例えば最高3ヵ月間のプロトンポンプ阻害剤(PPI)による1日2回の治療を提案している。しかしながら、多くの咳嗽患者は症候性の胃食道逆流症を示さない。そして、咳嗽に対する逆流治療のほとんどの無作為比較試験はこの種の治療に関連して有意な改善を示さなかった。抗逆流手術(腹腔鏡によるfundoplication)が慢性咳嗽の有効な治療であるという正当な証拠も同様に存在しない。従って手術は胃食道逆流症の症状と、この病態が存在することを確認する評価に基づいて手術の基準を満たす患者を制限しなければならない。
PPIの試験からのプールされたデータの後向き分析は全体の有益性を示さなかった。しかし食道pH監視下に胸やけ、逆流または過剰な酸逆流を有する患者のサブグループは、PPI治療に対してわずかだがより反応がありそうにみえた。しかし胃食道逆流の複雑な検査(例えばpHまたはインピーダンス試験)では、酸の抑制に対する咳嗽の反応を十分に予測しない。そして、慢性咳嗽のほとんどの患者が、コントロール群と同程度の酸と非酸の逆流であり、食道近位側に到達する逆流はほとんどなかった。最近のエビデンスは慢性咳嗽において逆流物が喉頭または咽頭に入るか、わずかに誤嚥し気道内に入るという考えを支持しない。咳嗽患者の喉頭では炎症性変化がしばしば認められ、それは近位胃食道逆流(proximal gastroesophageal reflux)即ち“咽喉頭反射”の徴候と考えられている。しかし、重篤咳嗽患者にはしばしば喉頭に外傷性炎症性変化があり、“咽喉頭反射”の喉頭徴候とする考えに関して研究者の間で十分な同意はない。慢性咳嗽患者の約50%において、逆流と咳嗽の間の相当な時間的関係が存在する。それは逆流物の酸性度にかかわりなく、偶然と予想されるよりもより多いせきの発作に先行する遠位逆流(distal gastroesophageal reflux)の"生理学的"エピソードを伴う。これは、異常なレベルの遠位または近位逆流はなく、遠位食道と気道の間のニューロン・クロストークが咳嗽を誘発しうる。したがって迷走神経経路の感作が異常の基礎をなすかもしれないということを示している。
慢性咳嗽患者は、しばしば後鼻漏の感覚を報告する。ガイドラインは点鼻グルココルチコイドと抗ヒスタミン剤をアレルギー性鼻炎と慢性咳嗽患者に推薦している。しかし、このアプローチをサポートする無作為比較試験は不足している。そして、臨床経験はこの治療に対する反応がしばしば期待外れであることを示す。慢性副鼻腔炎が確認されるとき、患者は抗菌薬と副鼻腔または中隔の手術を提案されるかもしれない。しかし、鼻疾患の外科的療法が咳嗽の改善をもたらすという客観的なデータはない。
咳嗽のまれな原因をr/oするための検査
(診断的検査又は治療トライアルに基づいて)喘息、鼻疾患と胃食道逆流が除外された患者において、慢性咳嗽を示し治療に反応する他の疾患を考慮しなければならない。そして可能なら咳嗽専門クリニックに紹介しなければならない。慢性咳嗽を伴う疾患は閉塞性睡眠無呼吸、好酸球性気管支炎、扁桃増大と再発性扁桃炎がある。そして、外耳疾患は迷走神経の耳介枝を通して咳嗽を引き起こす。咳嗽が治療に反応しない場合において、胸部のHRCTは単純胸部X線では見えない実質性肺疾患(例えば、肺線維症、気管支拡張症またはサルコイドーシス)を除外するために勧められる。気管支鏡検査はCTスキャンでは見落とされる可能性のある気管気管支軟化症、慢性気管支炎とtracheopathia
osteochondroplasticaのような疾患を確認するのに用いられる。我々の専門診療において、鑑別が明白な胸部X線撮影、肺機能試験(メサコリン誘発試験を含む)、経験的逆流治療と耳鼻咽喉頭評価の後不明なままだった患者において、約10%が気管支鏡検査で異常が認められた。しかし、異常所見が咳嗽を説明できたかどうかは不確かである。癌の疑いがある症例や異物吸入を除外する必要のある症例において、迅速な気管支鏡検査は行ってよい。気管支鏡検査法はまた、誘発喀痰が利用できない場合や好酸球性気管支炎を評価するためのサンプルを得る機会となる。好酸球増加性気管支炎は、気管支過敏性がなく、喀痰好酸球比率は3%以上で。PEFRは変動する場合に示唆される。この疾患は専門咳嗽クリニックに現れる患者の最高13%を占めると報告され、グルココルチコイド治療にしばしば反応する。現段階で確認される他のいかなる疾患も、確認された疾患の標準的ガイドラインに従って治療されなければならない。そしてこの治療に対する咳嗽の反応を評価しなければならない。
ステップ4:MANAGEMENT OF
IDIOPATHIC OR REFRACTORY CHRONIC COUGH
特発性または不応性慢性咳嗽の管理
我々の経験において、潜在的に慢性咳嗽の基礎をなしている一つ以上の疾患は、ステップ1で確認される。しかしながら、これらの潜在的原因を対象とした治療にもかかわらず、咳嗽の続く患者がいる(専門クリニックに受診する患者の42%に至る。しかし、プライマリケアでの頻度は不明である)。不応性慢性咳嗽患者は、しばしば店頭の鎮咳嗽薬に救助を求める。これらの薬剤の一部は全く活性成分を含有しないが、軽度の鎮咳嗽作用のあるメントールのように活性成分を持っているものもある。これらの治療は急性のウイルス性咳嗽に対して使用することを目的にしている。しかしその病態の治療目的であっても効果的であることを示唆するエビデンスはほとんどない。しかしながら、トローチ剤(または少量の水)に関連した嚥下は、咳嗽を一過性に抑制する可能性がある。そしてトローチ剤、シロップと蜂蜜は喉の刺激感を一時的に和らげることによって軽度の有益性を提供するかもしれない。
治療不応性であるか特発性慢性咳嗽に対してFDAまたはEuropean Medicines Agencyの承認を得た治療が現在ないにもかかわらず、ニューロン過敏症をターゲットとしたいくつかの介入は、無作為プラセボ対照試験にて効果的であることが示された。
慢性不応性咳嗽患者のプラセボ対照試験では、低用量の徐放性硫酸モルヒネ(1日2回、1回5mg)投与群はプラセボ投与群と比較して、咳嗽重症度がより低く(9ポイント・スケールで1。6ポイントの差)、咳嗽特異的QOLがより高いことが分かった。
症例シリーズにおいて、約36%の患者が臨床的に意味のある反応を示したが、ほぼ50%の患者は全く反応を示さなかった。トライアルと症例シリーズにおける副作用として、便秘、時に傾眠が報告された。特に現在のオピオイド乱用の流行を背景とした米国では、オピオイドの濫用または娯楽の可能性は、重大な懸念である。
慢性咳嗽患者が関係した二重盲検プラセボ対照臨床試験において、鎮痙性のガバペンチンは、プラセボと比較して咳嗽に特異的なQOLの大きな改善と、ベースラインとの比較において咳嗽重症度のより大きな減少と関連していた(100mmのvisual analogue scaleにおいて咳嗽重症度の2群間の差は12mm)。臨床経験は、反応に大きな変動があることを示唆している;多くの患者では、副作用(鎮静と眩暈感または不安定を含む)はどんな有益性にも上回る可能性がある。この薬物と関連したリスクは、鬱病と自殺的な考えまたは行動を含む。ガバペンチンとそれに関連した鎮痙性薬のプレガバリンは、副作用と有効性の間の釣合いを確立するために個別的用量調整が必要である。アミトリプチリン(就寝時の10mg)は、コデイン+グアイフェネシンより咳嗽に特異的な生活の質を改善する作用が優れていると報告された;鎮静作用は、慢性咳嗽患者が眠ることをより容易にするかもしれない。
無作為偽対照試験では、4つの構成要素(教育、喉頭刺激の減少、咳嗽コントロール技術と心理教育的カウンセリング)を含む言語病理学治療も、不応性慢性咳嗽患者において咳嗽重症度と生活の質を改善することが示されもした。成功した治療法の必須の部分を理解するためにより多くのデータが必要である。抗痙攣薬プレガバリンを言語病理学治療に加える効果を評価した最近の無作為比較試験では、プラセボを投与された患者と比較してプレガバリンを投与された患者は、咳嗽の重症度と咳嗽関連QOLの有意な改善を認めた。しかし咳嗽の頻度(非主観的primary outcome)は改善を示さなかった。プレガバリンの一般的な副作用は、眩暈、疲労と認識機能の変化等である。
不確定の領域
喘息、胃食道逆流と後鼻漏の“diagnostic triad“は慢性咳嗽の主な原因であると考えられてきた。そして、これらの疾患にターゲットを当てた治療に高い成功率が求められてきたが、いくつかの観察はこの概念に関する疑問を引き起こした。第1に、これらの一般的な疾患を示す患者の大多数は、過度の咳嗽を示さない。第2には、慎重なガイドラインに基づく検査と治療にもかかわらず、多くの慢性咳嗽患者は基礎病態に対する治療に反応を示さないか、咳嗽の同定可能な原因が見つからず咳嗽が持続する。これらの患者の主要な異常は、咳嗽をコントロールする神経経路の異常である。同定可能な原因(喘息、胃食道逆流、後鼻漏)は神経性咳嗽過敏症候群の意味においてのみトリガーとして働きうる。(図2)この仮説を支持する様に、カプサイシン(刺激性エアゾール)の吸入の研究では、この薬剤が慢性咳嗽患者において健常対照群の2倍の咳嗽反応を引き起こすことを示した。
ニューロン過敏症が慢性咳嗽の基礎をなすという概念は、これらの患者の病歴とも整合している。即ち彼らは咽喉刺激感や咳嗽をしたい衝動と咳嗽発作が、低レベルの環境刺激物質(例えば、香水やホコリや喉頭に対する物理的刺激(例えば、会話、歌、食べること)、体温と湿度の変化、によって引き起こされると言う。患者の間で咳嗽の特定のトリガーが異なるにもかかわらず、大部分の患者は咳嗽をしたいという抑えられない衝動とそれに伴う気道刺激感覚(75%は喉で、15%は胸部で刺激を感じる)を報告する。
“咳嗽過敏性症候群”という用語はこの病像を述べるための最近の造語である。しかし、現在のところ臨床クライテリアや診断のための検査に関するコンセンサスはない。
恐らく慢性咳嗽は機序的に単一の障害ではない。咳嗽過敏症の基礎をなしている神経学的機序は、末梢および中心神経系の両者において特異的神経レセプターをターゲットにした新薬の研究(例えば、P2X3、neurokinin-1、と一過性受容器電位[TRP]vanilloid 1[TRPV1]。vanilloid 4[TRPV4]、ankyrin 1[TRPA1])(図2)を含む更なる研究が必要である。例えば、不応性慢性咳嗽患者に関する最近の無作為比較試験では、P2X3アンタゴニストによる治療はベースラインと比較してプラセボ群より咳嗽回数が75%減少していた。しかし、臨床診療におけるこの薬剤の潜在的役割はいまだ明らかでない。
GUIDELINES
ガイドライン
ACCPは、慢性咳嗽の管理ガイドラインを発表してきた。それは現在修正、更新中でありヨーロッパ諸国のガイドラインと類似している。本論文の勧告は、概ねこれらのガイドラインと一致している。
CONCLUSIONS AND RECOMMENDATIONS
結論と勧告
慢性咳嗽患者は、呼吸機能と胸部画像が正常で、基礎をなす肺や肺外病変の存在を示唆する特異的な症状や徴候がない;喘息と鼻炎の治療試験は、効果的でなかった。現在のガイドラインに従って、我々はPPIによる2ヵ月の胃酸抑制療法の試験を提案する。実際には、我々はときにそのような治療法の後、咳嗽の著しい改善を経験することがある。しかし、胃酸抑制の無作為試験では概ねこの集団において咳嗽の有意の改善は見られなかった。これといった反応がない場合、我々は治療を中止するだろう。平行して、更に反応性気道の可能性を評価する検査(メサコリン誘発試験とFeNO測定を含む)を開始する。これらの測定結果が正常であり、胃酸抑制の試験がうまくいかないなら、胸部HRCTと鼻鏡検査の適応がある。すべての試験が陰性である場合、我々は慢性咳嗽の基礎となる悪い原因がないことを説明して患者を安心させ、咳嗽反射をコントロールしている神経の異常が最もその問題の根幹であることを説明するだろう。慢性咳嗽に対して現在公認されている治療はないが、限られた臨床試験データでは徐放性低用量硫酸モルヒネ、ガバペンチンまたはプレガバリンまたは言語療法が治療の有益性を支持してる。我々は、各オプションの潜在的利点と副作用について彼女と話し合だろう。我々は、不応性慢性咳嗽は消失するかまたは、時間とともに自然に軽減するだろうと説明し彼女を安心させるだろう。
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