2016年7月29日金曜日

咳を主訴とする呼吸器感染症の診断と治療(講演メモより)

平成261030日(木)
ホテルニューオータニ熊本
特別講演:咳を主訴とする呼吸器感染症の診断と治療
琉球大学 藤田次郎教授

Irwin RS NEJM 2000;343:1715-1721.
We propose that cough be divided into three categories: acute, defined as lasting less than three weeks; subacute, lasting three to eight weeks; and chronic, lasting more than eight weeks.

Subacute 日本では遷延性咳嗽という.

気管分岐部 角度は右25°,左35°.胸骨角の高さに存在.
気管は20分岐し肺胞へ至る.
終末細気管支⇒呼吸細気管支(1719分岐).呼吸細気管支には繊毛がない(重要).

繊毛大好き病原体
百日咳
Mycopalasma pneumoniae
Chlamydophila pneumoniae
いずれも繊毛にくっついたり,繊毛の間にはまり込んで,繊毛の動きを止める.
これらの病原体による肺炎は繊毛のあるところに陰影が出る.

肺容積の減少を呈する肺炎のときはマイコプラズマ肺炎を疑う.(繊毛の動きが止まる⇒粘液が貯留する⇒無気肺になる)
(容積の増加する肺炎:大葉性肺炎 K. pneumoniaeS. pneumonia, X線所見はBulging fissure sign

マクロファージ大好き病原体
Legionella
Chlamydophila pneumoniae

レジオネラは自然界ではアメーバーを自然宿主としてその中で増殖する.人体では同様のメカニズムにより,マクロファージ内で増殖する.
クラミドフィラもマクロファージ内で盛んに増殖.
マクロファージは1つの肺胞内に1つ存在する.したがってマクロファージ内で増殖するこれらの病原体による肺炎は肺胞領域主体⇒胸膜に接した陰影.

<イムノクロマトグラフィー法を用いたMycoplasmaの迅速診断キット>
プライムチェック・マイコプラズマ抗原(マイコプラズマのP1蛋白を検出)⇒false positiveが多く回収となった.

リポテスト・マイコプラズマ(旭化成)(マイコプラズマのリボソーム蛋白であるL7/L12蛋白を標的)⇒現在も使用可能.

 非定型肺炎(呼吸器学会 市中肺炎ガイドライン)
比較的除脈について
通常体温39℃の時の脈拍は110/min40℃の時は130/min

 CAPについて最近の詳細な検討ではChlamydophila肺炎がほとんどないとする報告が多い.
咳⇒そのあとに発熱の経過をたどり肺炎と診断された症例を提示.血清学的にChlamydophila pneumoniae陽性,喀痰からH influenzaeが分離された.血清診断は気管支炎を反映?Chlamydophilaによる気管支炎からH influenzaeによる二次性細菌性肺炎をきたしたのではないか?そうするとChlamydophilaは肺胞領域より,気道領域に病変をおこすと考えるべきか.

CT画像
二次小葉内に細葉が存在.細葉の直径は5mm程度.したがって細葉中心は胸膜から2.5mm離れて存在する.細葉中心には呼吸細気管支が存在.

非常に面白い講演でした.いつものことだが2030分までしか拝聴できなかったのはとても残念.

 

Aschoffの細葉について

http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0800020070.pdf

Mycoplasma肺炎

今年の呼吸器学会総会講演より

<マクロライド耐性> 小児 2000年 成人 2007年   耐性はpoint mutationでおこる.
EM, CAM vitroでは全く効かない

小児 60-70% 耐性率  2013年以降減少.TFLXを使い始めたためか.
小児 48時間以内の解熱の割合

MLs MINO TFLXの順番に  44%  87%  69%
成人 48時間以内の解熱の割合

MLs MINO TFLXの順番に  28%  85%  77%
解熱するまでの平均     4.15 1.83  1.91

最終的にはMLsで解熱しており,更に耐性株だから重症というわけではない.また合併症が多いわけではない(日本において).耐性なのになぜ効くのか.CAMの抗炎症作用?

Mycoの気道感染症ではどうか?

咳,痰などの症状はMLs投与にて7-14日間で効果あり.

日本の治療指針参照
http://square.umin.ac.jp/jsm/shisin.pdf

 

2016年7月20日水曜日

Meigs症候群:浸出液か?MGH case report,UpToDateなど 

Meigs syndrome
Demons-Meigs syndrome

UpToDateより
Ovarian fibromaascitis and/or pleural effusionの合併.
水の貯留はVEGF様物質の関与が示唆されている.VEGFは毛細血管の透過性を亢進させる.
血清CA125の上昇がみられるcaseがある.
Ovarian fibromaの最も一般的な治療は片側のsalpingo-oophorectomy(卵管卵巣摘除術).Opeにより胸水・腹水は消失する.

Pseudo-Meigs syndrome
Fibromafibroma-likemass / tumorではない卵巣腫瘍に胸水や腹水を伴ったもの.たとえばleiomyoma, struma ovariimucinous cystadenoma, teratoma,悪性腫瘍の卵巣転移(特に大腸―直腸がん)

MGH
Case18-2016: A 52Year-Old Woman with a Pleural Effusion
Cancer screening目的で行った乳房MRIにて偶然発見されたwaxing and waning pleural effusion右側胸水で,少量.胸水採取はできず.その後骨盤内腫瘍が発見された.Opeを行い,ovarian fibromaと診断された.

Demons-Meigs syndrome
1887Demonsが,様々な良性卵巣腫瘍と胸水の増加との関連を初めて報告した.この症候群の詳細をより洗練したものがMeigsらのovarian fibromaに胸水(通常片側で,右胸水が多い)と骨盤内のfluidまたは腹水を伴った7症例の報告である.Ovarian fibromaのわずか1-2%Demons-Meigs syndromeを呈する.

CA125がしばしば上昇するため,癌との鑑別が難しくなる.Ovarian massの摘出により胸水貯留は永久的に改善する.

exudateなのかtransudateなのか?
UpToDateではexudateに分類されているが,実は胸水の性状の報告は非常に少ないようだ.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26656338

2015年の報告.454論文,541症例を検討した.
この報告によるとLight's criteriaを使用した報告はわずか7例で,6例がexudateであったとのこと.蛋白濃度>3.0以上がexudateとする基準を用いれば88.8% (80/90)exudate

 

2016年7月14日木曜日

KRCCM seminar

201834
熊本大学 山崎記念館にて

沖縄県立中部病院呼吸器内科部長 喜舎場朝雄先生の講演から メモ

39℃ PR 110/minが基準.
呼吸数x5=脈拍数に一致
呼吸数>脈拍  呼吸器疾患が主
脈>呼吸数   循環器疾患が主

DMストレスの割に除脈
除脈にする薬剤の服用はないか調べること
プレタールは脈を速くする

呼吸数の測定は重要!
体温が1℃上昇すると呼吸数は約3.5ずつupする.
呼吸数が30/分以上の場合は呼吸不全の合併を疑う.
呼吸数40/分以上では挿管の可能性を考える.
敗血症の最も初期の兆候は呼吸数の上昇である.
DMがあっても呼吸数は嘘をつかない
ALP上昇
SBT/ABPC投与歴―胆汁鬱滞型
粟粒結核

PurpuraLivedo

口腔内評価は必ず行う.

鉄さび色―肺炎球菌
イチゴゼリー状―クレブシエラ
マーマレード様の粘秱痰―レジオネラ

突然の悪寒,戦慄
1回のみ(one shaking)⇒肺炎球菌肺炎の特徴

胸部痛
Abrupt onset
肺炎球菌
間歇的なpainは気管支拡張症

インフルエンザ桿菌
Aex of COPDに多い
つまり障害を受けた気道を好む.喫煙者にも.
臨床経過:最初から悪くなるわけではなく途中から増悪etc.の経過.

Acute  1週以内
Subacute 数週      H. infuluenzae, Mycoなど.
Chronic 1ヶ月以上

誤嚥性肺炎
89胸椎のレベルが最も深い

Orientation

肩甲骨下角(Th8レベル)と前上腸骨棘の間の中心がTh12



第406回熊本チェストカンファレンス

2016526日 熊本大学にて

症例1
75歳,女性
22年前にmyoma uteriに対し子宮全摘+片側附属器切除術の既往あり.18年後にLC ope. pT1aN0M0 stage IA.その4年後S8-9に淡い結節影出現.徐々に増大.    

鑑別として
Benign metastasizing leiomyoma (BML)
BMLMyomaope3-20年経過して健診等で偶然発見されることがある.
BMLが悪性転化することはないとされている.

診断は平滑筋肉腫(おそらく子宮)の肺転移.すりガラス様に見える病変は,肺胞の間質に肉腫細胞が浸潤.
肺原発の平滑筋肉腫ではないかというdiscussionあり.

症例2
45歳,女性
咳嗽,喀痰が普段より増強し,近医を受診.肺炎の診断にて同日同院に入院.胸部CT所見より専門的治療が必要と判断され,入院4日目に転院.
右中葉の陰影.浸潤影or結節影.右中葉の気管支が見えない.右下葉には小葉間隔壁の肥厚,小葉中心性粒状影.
WBC 26700/μlCRP 32 mg/dl,プロカルシトニン陰性,
SBT/ABPCTAZ/PIPCにて軽快.しかし退院6か月後chest painにて来院.

診断は放線菌症
Actinomyces israellii

診断は喀痰検査!sulfar granuleの喀出で診断がついた.

 2005年の呼吸器学会雑誌にこんな報告がある.
http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/043040231j.pdf
硫黄顆粒の喀出により診断し得たActinomyces odontolyticusおよびActinomyces meyeri による肺放線菌症の1 例 
抜粋;「当院入院12 カ月前より時折,直径23 mm 大の黄褐色の固形物を痰と共に喀出することが判明した.」

 
今回の治療はSBT/ABPCABPCAMPC 1500mg/day
(治療薬はペニシリンが第一選択で,26週間の点滴投与の後612カ月の内服投与という長期間の治療が原則となる.)レジデントノート20128月号

 硫黄顆粒は炎症巣内で希リン酸カルシウムを取り込んで石灰化した菌糸であり,生体内の組織より証明された場合は放線菌症と診断する根拠となり得る.(前述の症例報告論文より)

 プロカルシトニンは陰性であった.→膿瘍形成時はプロカルシトニンは上昇しにくいとの意見あり.