2012年7月27日金曜日

第368回熊本チェストカンファレンス

1.教育症例
平成とうや病院
2.症例提示
①熊本労災病院
88歳,女性.亀背,慢性呼吸全 HOT施行中.意識消失発作,低酸素血症.心電図,心エコー上原因を示唆する所見なし.
胸部CT上肺野に著明な低酸素血症をきたす病変なし.→血管系の病変.右ー左シャントが示唆される.肝機能障害はなし.心エコー上は所見なしとのことだが・・・?
仰臥位にて低酸素血症増悪=platypnea-orthodeoxia syndrome (POS)あり.
本症例にて認められたPOSの原因は,フロアからも鑑別診断にあがっていた卵円孔開存(PFO)が答え.PFO, POSの病態については様々な説がある.
②公立玉名中央病院
78歳,男性.4年前に胸部異常陰影を指摘され,NTMを疑われたが,菌の検出なし.今回喀痰,咳嗽,胸部陰影の増悪にて紹介受診.
胸部CTでは肺野に小葉中心性粒状影を瀰漫性に認め,結節影,薄壁空洞,浸潤影.右中葉volume loss.
HTLV-I抗体陰性.
画像はNTMにcompatible.
その他の鑑別診断として,TB,DPB,fungal infection (aspergillus),Nocardiosisなどを考えたが・・・.
喀痰検査にて頻回にNocardia spp.が分離.またM intracellulareも分離されていた.ST合剤にて炎症所見,臨床症状とも改善.画像も薄壁空洞など一部の陰影は改善傾向.
Nocardiaの関与は間違いないようだが,NTMがどこまで肺病変に関与しているのかが興味深い点である.
なお,NTM likeの陰影を呈したNocardiosisの報告はあまり多くないようだ(自分も1例経験あり).NTMの合併例の報告はさらに少ない.
治療期間が6か月でよいのか?8か月で再発した症例報告もあるようだ.
Nocardia 環境中に存在.口腔内常在菌ではないので喀痰からの検出は重要な診断根拠となる.診断に関して,喀痰からの検出率は30%という報告あり.
③熊本市民病院
83歳,女性
11年前にuveitisがありSa症を疑われたが,BHLなし.ECGも異常なし.ACE上昇なし.BFは施行せず.下肢疼痛→食思不振→めまい,おう吐,低酸素血症にて搬送.
胸部CT上胸膜直下の浸潤影(consolidation,lobular consolidation),bronchovascular bundleにそった浸潤影が認められる.Sa症のような累々としたリンパ節腫脹はないが,一部腫大がありそう.
画像は広義間質を中心とした病変と読んだが.
採血データーではLDH 799,s-IL-2R 2777と増加しており,鑑別診断としては lymphoproliferative disorder,その中でもlymphoma, その他Sa症などを考える.
→答えはDLBCL.
呼吸不全にて来院しステロイドパルス療法にて,呼吸不全は著明に改善したが徐々に病態悪化.32病日に多臓器不全にて死亡.病理解剖では全身への転移あり.肺病変には腫瘍細胞の浸潤.結節性病変の周囲にはOP likeの所見あり.
肺病変は血行性か,リンパ行性か?→画像上は肺門から広がる所見ではないので血行性?
病理診断は生前にはついていないようだ.血液内科にコンサルトするも診断がつかず.
その他診断におけるBALの有用性乏しい.など.