2012年10月26日金曜日

第370回熊本チェストカンファレンス

1025日ホテルニューオータニ熊本

ミニレクチャー

胸部レントゲン写真診断:見落とさないための読影ポイント

熊本中央病院 牛島 淳先生

 特別講演

呼吸器感染症―恩師からの継承

川崎医科大学 総合内科学1 准教授 宮下修行先生

成人肺炎 クラミジア肺炎 2-4%(これまでいわれているより頻度は低い)

     マイコプラスマ肺炎 10-15%

     レジオネラ肺炎   3-4% (新しい診断法が使えるようになるとこの割合が変わる可能性あり)

 

クラミジア

細胞内でのみ増殖

細胞内に取り込まれたクラミジア

基本小体(EB)―感染性を持っているが増殖能力なし

網様体(RB)―感染性はないが増殖能力を持つ

基本小体から網様体への変換により増殖

 

肺炎クラミジア感染のあるDPB症例.剖検を行うと肺以外の臓器にもクラミジアが見つかった.動脈硬化病変にも.

 

フロアからの質問:

クラミジアIgM抗体陽性の解釈について

肺炎クラミジア感染に関する適切な検査方法がない.LAMPcopy数少ない.IgM抗体は再感染時に上昇しない.高齢者で陽性になることが多い(疑陽性が多い).chronic(持続感染)なのかacuteなのか.鑑別が困難.IgGのペア血清診断が必要?

 マイコプラスマ肺炎の胸部画像

Tip構造を介して健康な繊毛に付着,滑走→気道繊毛上皮,気道壁の炎症→娘枝領域に入る→気管支壁の肥厚,細気管支・肺胞病変

 
咳外来の経験
マイコプラスマ肺炎は,胸部単純X線にて指摘できないcaseがあることを知っておく.

胸部CTMycoS pneumoniae肺炎との比較は有効,H influenzae S aureusとの比較は困難か.

クラミジア肺炎(肺炎クラミジアによる) 比較的区域性の分布をとる浸潤影→画像的特徴はない.

 マイコプラスマ肺炎診断の陽性的中率についての検討 N=68

イムノカード   24例(35.2%

胸部CT      48例(70.5%

JRS scoring system 57例(83.8%

 
イムノカードマイコプラスマ
感染して10日程度でIgM抗体が上昇するので,いつ測定したかが重要.また最長陽性期間は512日という報告→follow upに使用してはいけない.

 

Macroride耐性Myco 
2063, 2064point mutation
MLs, MINO, TFLXの治療効果の比較
→治癒するまでの期間は3者とも同じ.MLs治療で重症化したものもない.しかし解熱までの期間がMLsで長かった.

フロアからの質問:
耐性なのか,複数菌感染によりMLsが効かないように見えるのかという問題.

 
<補足>
           JRS scoring system
細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別(レジオネラ肺炎はのぞく)
 
鑑別に用いる項目

1.       年齢60歳未満

2.       基礎疾患がない,あるいは,軽微

3.       頑固な咳がある

4.       胸部聴診上所見が乏しい

5.       痰がない,あるいは,迅速診断法で原因菌が証明されない

6.       末梢血白血球数が10,000/μL未満である

鑑別基準

上記6項目を使用した場合;

6項目中4項目以上合致した場合 非定型肺炎疑い

6項目中3項目以下の合致    細菌性肺炎疑い

この場合の非定型肺炎の感度は77.9%,特異度は93.0%

上記1から5までの5項目を使用した場合;

5項目中3項目以上合致した場合 非定型肺炎疑い

5項目中2項目以下の合致    細菌性肺炎疑い

この場合の非定型肺炎の感度は83.9%,特異度は87.0%