2013年5月8日水曜日

immunocompetent patientにおけるHSV肺炎

Case 12-2013: An 18-Year-Old Woman with Pulmonary Infiltrates and Respiratory Failure
NEJM 2013; 368: 1537-1545.
もともと健康と考えられた18歳,女性.両側肺野に陰影出現し急速な呼吸不全に陥った.
喫煙歴,マリフアナ吸引歴有.抗菌薬,Quinolone, ST合剤を含め無効.

問題点のまとめがこれ



Tickborne illnessesや,野兎病が鑑別疾患として詳細に述べられている.またboyfriendの存在も疾患のカギを握っているのでは・・と疑われた.

診断はBAL所見が決め手に.またcrusted lesion on lipも重要な所見である.
答えはHerpes simplex virus type 1 pneumonia.
更にAcute inflammatory demyelinating polyneuropathy (a variant of the Guillain–Barré syndrome)も合併した.5日間のγグロブリン療法にて軽度症状は残るが改善.
 
議論となったのがreactivationか,primary infectionかという点.
気道でreactivationがおこり,気管気管支炎に進展した可能性もあるが,①肺胞細胞の所見から,primary pneumoniaであり気管気管支炎ではないこと(BALFから感染細胞が回収されている=肺胞領域の感染),②acyclovirを開始して48時間以内に改善していること,③感染細胞の質・量ともに急性感染に一致すること,よりprimary infectionと考えた.

immunocompetent patientにおけるHSV肺炎はまれである.長期人工呼吸管理中の患者におけるHSV肺感染症の報告は下記.

<引用文献>
Herpes Simplex Virus Lung Infection in Patients Undergoing Prolonged Mechanical Ventilation
AJRCCM 2007; 175: 935-942.

理論的根拠:
人工呼吸管下にある免疫機能正常患者において下気道サンプルからの単純ヘルペスウイルス(HSV)の分離が,口および/または咽頭からのコンタミなのか,それ自身罹患率/死亡率を有した局所気管気管支からのHSVの排出や真のHSV肺病変(bronchopneumonitis)なのかわかっていない.

目的:
この前向きな,単一施設,観察研究は,HSV bronchopneumonitisの頻度,危険因子と関連を明らかにするするために行われた.

方法:
5日以上機械的人工換気を受けているすべての連続的な免疫能正常の患者を評価した.
気管支肺胞洗浄,口咽頭スワブと気管支生検(肉眼的に同定可能な気管支病変の存在)を,臨床的に肺感染による悪化と疑われる全例に行った.
HSV bronchopneumonitisは,気管支肺胞洗浄駅におけるHSVの存在と,気管支肺胞洗浄または気管支生検組織におけるHSVに特異的な細胞核封入体と関連した悪化と定義した.

測定と主要な結果:
HSV bronchopneumonitisは,臨床的に悪化した201例の患者のうちの42例(21%)で診断された.診断までの機械的人工換気期間中央値は14±6日であった.
HSV bronchopneumonitisに関連した危険因子は,口唇病変,咽頭のHSVの存在と気管支鏡検査にて肉眼的に認められる気管支病変であった.
HSV bronchopneumonitisを有する患者は入院時にHSV bronchopneumonitisのない患者と同等だった,しかし,機械的人工換気と集中治療室滞在期間は長く経過はより複雑であった.

結論:
HSV bronchopneumonitisは長期間にわたる機械的人工換気を有する免疫能正常患者において一般的であり,口および/または咽頭のHSV再活性化または感染を伴い,アウトカムはより劣っているように見える.