2013年1月10日木曜日

Lung dominant CTD 2

2012年11月に抄録を掲載したLung dominant CTDに関する論文
http://edukobiyori.blogspot.jp/2012/11/lung-dominant-ctd.html 



Connective Tissue Disease-Associated Interstitial Lung Disease
A Call for Clarification
Aryeh Fischer, MD.

CHEST 2010; 138(2):251–256.

診断の意味
CTD-IPは、IIPより良好な予後と最も有意に関連する。
CTDの潜在型の同定が同じようにより良好な予後をもたらすかどうかはわかっていないが,背景に存在する自己免疫についての知識を考慮した将来の決定が病因のよりよい理解とより良好な治療選択を促進すると考える。
・我々はCTD-IPの潜在型または不完全型の患者を認識し、これらを「lung-dominant CTD」の固有の表現型と分類することがより正確な疾患分類を可能にし;協同の調査が可能となるプラットフォームを提供し;そして、病理生物学、自然史と治療反応の質問に対する有益な回答を提供すると仮定する。

問題と限界
・非特異的自己抗体に関する簡易スクリーニングによってCTDを検出することは十分でない.更に現在,リウマチ学の分類方式は,IPが唯一の徴候であるとき,CTDの名称を適用することを許していない.
・実際、CTDの分類は、特異的な肺外症状・徴候と特異的血清学的自己抗体の存在に基づく。
IPがよく知られたCTDの表現型で、一般的であるにもかかわらず、全身性硬化症(SSc)のminor基準としてあること以外、IPCTDのいずれの診断基準にも含まれない。
・従って単独のIPを有する多数の患者はデフォルトで、特発性であると分類される。
・例をあげると・・例えば、30歳の女性でkeratoconjuctivitis siccaと抗Ro抗体陽性の患者はCTD(シェーグレン症候群)と診断されるが、30歳の女性で抗Ro抗体陽性かつ,器質化肺炎,胚芽中心によるリンパ様小胞、広範囲な胸膜炎と高密度血管周囲コラーゲンの組織病理学的特徴がオーバーラップしたNSIPを生検で確認した場合はCTD-IPよりもむしろ特発性と分類される.
・これらの症例からいえることは,正確なCTDの名称をつけることが許される肺外症状がなければ,CTDを疑うIPと肺症状は分類不能となる。
・呼吸器科医とリウマチ医は、CTDIPの原因として存在するかどうかで頻回に争っていることに気づく。
IPについての我々の限られた知識を考慮すると、双方はおそらく正しい。
・我々は、肺病変(すなわち、有意な組織パターンと第2の特徴)自体が特発性疾患に適合しない時は呼吸器科医が正しく、IPのみを有する患者が肺外症状なく分類できない時はリウマチ医が正しいと考える.  

潜在性CTDを特定すること 
IPを呈している患者における潜在CTDの検出は,多くの専門にわたる協同(multidisciplinary collaboration)によって最適化されると考える。 
・明らかなIIPを示す患者でおよそ15%がより徹底的に評価をすると,背景にCTDを認める。
・本間らは、CTDの唯一の表現型としてのIPIIPと区別できるかどうか評価した。彼らは、IIPを示した68例の患者を対象に,前向きに11年間経過観察を行った。13例の(19%)患者は、最終的に分類可能なCTDを発症した。 
・リウマチ因子(RF)または抗核抗体(ANA)陽性の有病率は、CTDを発症した群としなかった群で差がなかった。
・著者は、全身症状が現れる前に、IIP患者と,CTD-IP患者を区別することができないと結論した。
・潜在性CTDを検出することは難しく、ANARFが単独で陽性であることはこの努力にあまり役立たない.我々は結論の代わりとして以下を提案したい:①背景にあるCTDのわずかな肺外症状のための徹底的な評価、②より特異的な自己抗体(そして、ANA力価と免疫蛍光検査のパターンを組み込むこ)の評価,③組織病理特徴の考慮,はIP評価の重要な構成要素で、潜性CTDが検出される可能性を高める。

<自己抗体>
・現在の実地診療ではIPを呈している患者においてANARF(そして、時に他の自己抗体)を調べる.そして、いずれかが陽性である場合、リウマチ学的評価が必要となる。
・我々の意見では、このアプローチは、多くの理由により少しも理想的でない。
・最初に、低力価では特異度が特に低く、健常な人に認められることがあるので、ANARFはスクリーニン検査として劣っている。
・加えて、陰性ANARFが一部の臨床医に更なる評価の続行を思いとどまらせる可能性があると仮定すれば、ANARF陰性の場合がある潜在性CTD(例えば、antisynthetase症候群)の症例は見落とされる。
IPを呈してANA陰性であったantisynthetase症候群において、我々は最近患者コホートを報告した。すべての患者にはantisynthetase症候群(例えば、機械工の手)のわずかな特徴があった。そして、確証のための抗tRNA合成酵素抗体の更なる試験を行った。
・我々のセンターにおける評価の前に、患者の誰もCTDに関する更なる評価を受けなかった、そして、我々はこれがスクリーニングテストとして他で実行されたANA陰性、RF陰性,ANAプロフィール陰性によると推測した。
・より特異的な抗体はCTD-IPのための評価に必要な要素として用いられる、そして、しばしば、臨床家はより効果的なCTDのスクリーニングのためANARFよりも多く検査をオーダーする必要がある。
・さらにまた、我々はIPを有する患者における核小体染色ANAパターンがSScの疾患スペクトラムを暗示することから,ANAが陽性の時、免疫蛍光検査のパターンに注意することが重要であると考えている。
・特にCTD評価の一部としてIPを有する患者において要求される有用な抗体は、抗Scl-70、抗tRNA合成酵素抗体(例えば、Jo-1, PL-7, PL-12)、抗RoSS-A)、抗RNPと抗CCP抗体を含む。
・抗Scl-70抗体はSScに非常に特異的である、そして、抗Ro抗体はIPと特徴的に関連する多数のCTD(例えば、シェーグレン症候群の)において存在する。
・高力価抗RNP抗体はMCTDの診断法をサポートする.抗tRNA合成酵素抗体はantisynthetase症候群を確認する.そして、抗CCP抗体は(RFが非特異性であるのと対照的に)関節リウマチに非常に特異的である。

<それは本当にCTDなのか?それは誰に尋ねるか次第である>
・逆説的な言い方だが、自己抗体の検出は、しばしばより多くの疑問を生じさせ、分類は明確にならないかもしれない.
CTDに起因する肺外症状(例えば、炎症性関節炎、強指症)がない場合、高力価の特異的自己抗体とそれにあうIPパターンが存在するときでさえ、リウマチ医はCTDと診断するのを嫌う。
・例として、f-NSIPを有し,抗RNP抗体陽性、全身性自己免疫の肺外症状がない35歳の男性を考えてみよう.既存の分類では、この患者はCTDに分類されない。
・同様に、40歳の女性で,LIPと、高力価のspeckled ANAと唯一の肺外症状として食道蠕動低下がある患者は、CTDを有すると定義されない。
・いずれの症例もCTDの診断基準を満たさないか、または呼吸器科医によって特発性とみなされる.
・現在の分類方式に基づくと、そのような症例は、特発性(我々は、実際のところ、誤分類と言いたい)であると分類されるか、更に悪いことに、未分類のままにされる。

 <病理組織学的考察>
・外科肺生検標本からの組織病理学の慎重な再調査は、IPがその背後にあるCTDの表現型である手掛かりを提供する可能性がある。
CTDと既知の関係にある組織病理学に関して観察される多くの示唆的なパターンと特徴がある。
CTD患者において,NSIPまたはLIPはより一般に認められるパターンのうちの2つである.したがってこのような組織型の場合はどんな時も潜在性CTDが強く疑われる.
・加えて、基礎疾患としてCTDの存在を強く疑う第2の病理組織学的特徴は、高密度血管周囲コラーゲン、広範囲な胸膜炎、胚中心形成を伴ったリンパ球集簇と顕著な形質細胞浸潤を含む。これらの組織学的特徴は、病理学者に,損傷パターンが背景に存在するCTDによるものではないかという注意を促す.
・そのような場合、呼吸器科医は、生検標本がCTD-IPと整合しており、CTD-IPとして患者を管理する方を選ぶ可能性がある。
・対照的に、肺組織がたとえ何を示しても肺外症状がないとき、リウマチ学者は患者がCTDを有すると分類しそうにない.
・最近のデータは、特徴的なCTDがない場合さえ、循環する自己抗体の存在が特定の組織病理所見と関係していることを示唆する。Songらは、通常の間質性肺炎(UIP)パターン肺損傷患者の3つの群の間で、第2の組織病理特徴を比較した。
Group 1n= 39)はCTD-UIPの患者から成った;
Group 2n= 27)はANAまたはRF陽性で特発性UIPがあった患者;
Group 3n= 34)は特発性UIPがあって、抗体陰性であった患者。
おそらく、Group 2(抗体陽性、特発性UIP)の患者は、特徴的な肺外症状がないかまたはより特異的自己抗体がない時,CTDがあると考えなかった。
CTD-UIP患者の間に、より多くの胚芽中心、形質細胞と,すべての特発性UIP患者に発見されるよりも少ない数のfibroblastic foci があった。
しかしながら興味深いことに、病理組織学的特徴は、自己抗体状態に基づく特発性UIPのサブグループ(Group 23)間で異なった。
抗体陽性特発性UIPGroup 2)を有する患者すべてCTDの肺外症状がなかったにもかかわらず、抗体陰性特発性UIPGroup 3)をもつ患者と比較して,彼らはより高い胚芽中心スコアと多くの形質細胞が認められた。
CTD-UIPGroup 1)と抗体陽性特発性UIPGroup 2)において病理組織学的特徴は、違いがなかった。
特発性UIPを有する患者(Group 23)の間で、抗体ステータスは生存に影響を及ぼさなかった、しかし、著者が指摘するように、このことは各群の中のサンプルサイズが小さいことに起因したかもしれない、しかし、特発性UIPを有する患者はCTD-UIPGroup 1)患者より予後が悪かった。
基礎をなす組織病理特徴に対する,(非特異性であるが)循環する自己抗体の影響は、興味深く、全身性自己免疫がこのコホートで重要な病因である可能性高める。

未分化CTDを再定義することには問題がある
・すべての特発性NSIP患者は,肺外症状がない患者や血清自己抗体陰性患者でさえ,実際には未分化CTDUCTD)があるとする概念が提唱されてきた.
・我々の意見だが、この仮説は興味深いにもかかわらず、すべてのNSIP症例を含むこのCTD診断の修正された適応は問題を含む。
・このようにUCTD診断を再定義することは、通常、IPCTDの診断基準と認めることについて懐疑的であるリウマチ医からの情報が必要である。
・例えば、リウマチ医は55歳の女性で炎症性関節炎とANA陽性の患者をUCTDと分類するが,55歳の女性でNSIPANA陽性の患者はUCTDとしない.もし肺外症状(例えば、レイノー現象、炎症性関節炎)が存在し,CTDをより確かなものにする特異的自己抗体がなければ,リウマチ学者はNSIPのみを有する患者をCTDとみなさない。
・“UCTD”という用語を用いる別の難しさは、リウマチ学者がUCTDを軽症の疾患の表現型と考えていることである。
・我々はリウマチ医によってそれが採用されないと思うので、UCTDが単独でしばしば致命的なIPを含むと再定義することを試みることは成功しそうにない。
・本質的には、“UCTD”という用語は、リウマチ学領域の中で確立されていて、CTDのより穏やかな型か部分的な呈示を反映している疾患であって、ILDまたは他の臓器を脅すような特徴の疾患ではない.

提案された若干の解決手段
普遍的に受け入れられる診断に至らず、疾患分類についての認知の不一致そして、UCTDを再定義することを受け入れることの行き詰まりによって引き起こされる難問に直面して,我々は以下の提案をしたい。

<多くの専門家の協同 (Multidisciplinary Collaboration)
IPを有する患者の評価が多くの専門にわたるアプローチによって最適化される様に、我々はCTDoccult formsの分類に関して多くの専門家にわたるアプローチを主張する。
CTD-IPの指定は、呼吸器病学とリウマチ学領域を含んだコンセンサスを必要とする。
・現在、非常に小さい学際的な対話はこの領域でなされている.そして、この領域の発達はこの分裂を架橋する努力によってよりよく供給される。
・正確なCTD疾患の特徴描写と分類に関して呼吸器病学とリウマチ学領域の両者からのコンセンサスは、学際的な障害に対処しながら、正しい方向へ意味のある一歩を提供する.

lung-dominant CTDを考慮すること>
・新しい分類方式は呼吸器科医とリウマチ医の間にコンセンサスの方法を提供する可能性があり、我々の仮説を検証することが可能となる.
・この目的から「lung-dominant CTD」という用語を,特異的自己抗体または病理組織学的特徴によって支持されるリウマチ学的風味のIPを有し,適切な肺外症状がなく明確なCTDの診断クライテリアに一致しないCTD症例に使用することを提案する。
・「lung-dominant CTD」という提案された用語に内在している意味は、特異的自己抗体と組織病理特徴が単独で存在する時、CTD-IPを有する患者を特徴づけて、分類するのに十分ということである。
CTDで非常に示唆的な客観的な肺外症状(例えば、レイノー現象、食道蠕動運動低下、中手指節関節または手首の炎症性関節炎、指浮腫、症状のあるkeratoconjuctivitis sicca)の存在は重要で、背景にあるCTDを更に支持する、しかし、それらがなくてもlung-dominant CTDの診断を排除すべきではない。
・これらの肺外症状はCTDの診断を支持するが、主観的な解釈に影響を受ける可能性がある.したがって、CTDの組織病理や血清学的証拠がない場合,IPを有する患者におけるそれらの存在はlung-dominant CTDの名称を与えるのに十分でない。
・表1において、我々は我々がlung-dominant CTDであると考える診断基準を提案する。
・我々はこの概念とこれらの基準が暫定的であると考える.なぜならそのような分類の急な使用を支持するエビデンスはなく,前向き研究を通した確証を含む多職種の更なる調査のためのプラットフォームとして用いたい。
・多くの利点が、この新しい分類の導入にある。
・第1に、提供される基準は、客観的および測定可能である。
・第2に非特異的な症状(例えば、筋痛、関節痛、胃食道逆流病)、非特異的な炎症マーカ(例えば、赤血球沈降速度)と低力価ANAまたはRFは,全てが明確なCTDのない患者に認められることがあるので含めなかった。
・第3に、“lung-dominant CTD”という用語はこの概念が特発性IPのグループとは異なることを意味し,IPが全身性自己免疫によって呈されるCTDの「感触」を有しているがなお、リウマチ医社会によって使われる現在の分類体系に従う明確なCTDとしてより特異的に示すことができないことを認めている。
・第4に、lung-dominant CTDはより定義可能なCTDに発展する可能性があるという認識がこの定義に内在するので、より多くの定義されたCTDへの進展を監視する必要がある.
・最後に、この種の患者にlung-dominant CTDの診断を与えることは、IIPの(デフォルトの)カテゴリからそれらを除くことになるが、CTDのより定義された形態から、それらの違いを許し、このサブセットの自然史、病理生物学、治療と予後に関する質問に答えることのできるフレームワークを提供する。
・我々は、lung-dominant CTDの提案された分類は暫定的であり,将来的な研究で確証が必要となることを強調したい.

結論
・我々はIPの評価において多くの専門にわたる協同作業と、最終的にlung-dominant CTDの概念を検討することは,より正確な疾患の鑑別がなされ、IPのより良好な理解に至るかもしれないということを信じている。
・加えて、lung-dominant CTDについての知識を組み込んだ将来の決定が治療選択に影響を及ぼすのみならず,より多くの標的治療の開発につながると主張することができる。
・更なる研究は、提案された暫定的な基準の妥当性を検査して、lung-dominant CTDの自然史を決定して、それがCTD-IPのより確立した病型と類似した予後と関係しているかどうか評価するために必要である。