2014年10月29日水曜日

COPD増悪に対するtriple therapy(ICS/LABA/LAMA)継続群とICS減量中止群の効果.

Withdrawal of Inhaled Glucocorticoids and Exacerbations of COPD
NEJM 2014;371(14):1285-1294.

WISDOM (Withdrawal of Inhaled Steroids during Optimized Bronchodilator Management) trial

Abstract
背景
重症COPDで増悪を繰り返す患者において,長期作動性気管支拡張薬にICSを追加する治療が推奨されている.しかしLABALAMAに加えICSを追加するbenefitについては十分には明らかにされていない.
方法
12か月の二重盲検並行群間試験.2485例の増悪歴を有するCOPD患者に6週間のrun-in periodを設け,Triple therapy (ICS/LABA/LAMA,ICSは1,000μg/day)を行い,その後以下の群に無作為に割り付けた.
    Continued triple therapy.(ICS継続群)
    12週かけて3段階でICSを減量,中止する.(ICS中止群)
Primary end pointは最初に中等症,または重症のCOPD増悪を起こすまでの時間.
スパイロメトリーの所見と健康状態,呼吸苦もまたモニターした.
結果
ICS継続群と比較して,ICS中止群は,最初の中等症から重症のCOPD増悪について,あらかじめ非劣性のクライテリアである,95%信頼区間の上限である1.2以下であった(HR, 1.06; 95% CI, 0.94 to 1.19).ICSが完全に中止となる18週において,ベースラインからのトラフFEV1の低下はICS中止で継続群と比較して38 ml以上であった(P<0.001)52週では両群の差は43mlであった(P=0.001)ICS中止群において呼吸苦の変化はなく,健康状態の変化はわずかであった.

対象
40歳以上で,former smokerまたはcurrent smoker (10 pack-years以上)
経口ステロイドの使用は不可.SABAの頓用吸入は可.去痰剤,キサンチンの使用は可.
気管支拡張薬吸入後FEV1<=70%%FEV1<=50%
スクリーニング前の12か月間に少なくとも1COPDによる増悪が記録されている.
 

triple therapy(ICSはmaximal dose,FP 1,000μg/day)を6週間.
その後無作為に2群に割り付け12週の治療.

*中等度の増悪の定義
COPDに関連した下気道症状の増加,またはそのような症状が2回以上新たに出現.そして一つの症状は,少なくとも3日以上続き,医師が抗菌薬,全身性ステロイドのいずれか,または両方を処方した場合.
*重度の増悪の定義
緊急ケアユニットに入院が必要な増悪.
症状出現日はCOPDの症状が最初に記載された日.

Secondary end point
最初に重度のCOPD増悪をきたすまでの時間,中等度から重度のCOPD増悪の数,肺機能 におけるベースラインからの変化(FEV1, FVC, PEFR).

健康状態はSGRQで評価.
重症または最重症患者において,LABA, LAMAを有するレジメンにICSを加えることのbenefitについては,適切なパワーを有した研究がなく不明なままである.


吸入ステロイド中止により増悪しやすいと考えられるサブグループを抽出し,最初の増悪に関する影響を調べたが,どのサブグループもICS中止群と継続群で有意差はなかった.
 
問題点
ICSを段階的ではなく,一度に中止した場合は,今回と同じ結果が得られるか?ICS中止前にtriple therapy (maximal therapy)を6週間行う必要があるか?
 
このトライアル(と他の研究)から得られた所見
ICSは増悪の予防よりもむしろ症状の改善に基づいて処方されるべき.
重症患者であってもICS中止は増悪のリスクを増加させない.