2017年3月31日金曜日

膠原病的背景を持つ間質性肺炎 2016夏の呼吸器地方会より 

須田先生(浜松)
膠原病的背景を持つIP
IIPsと膠原病肺との関連
UCTD  Kinder  2007
LD-ILD Fisher  2010
AIF-ILD Vij  2011
そして現在ATS/ERSよりすべてを包括する概念としてIPAF

UCTD
非特異的炎症の項目―たとえば体重減少,CRPなどが入っている.
UCTDの診断基準を満たすのは特発性NSIP88%IPF5% →特発性NSIPUCTDの肺病変との結論
IIPsにおいてUCTDの診断は予後良好(肺機能の改善)と関連 Kinder Lung 2010
しかしその反論:CorteらはUCTDの基準をmodify=厳しい基準strict definition
UCTDの比率は・・ strict definitionでは   IPF 13%  NSIP 31%
Broad definitionKinderらの診断基準)では    IPF 36%  NSIP 71%
したがって結論:特発性NSIPUCTDの肺病変とは言えない.IIPsにおいてUCTD診断は予後と関連しない.

そこで特発性NSIPに限ってみてはどうか? Suda Respir Med 2010
KinderUCTD診断基準を満たすものは47%であった.UCTD-NSIPNon-UCTD-NSIPを比較
⇒特発性NSIPではUCTD診断を満たすと予後良好.
同じような論文 ERJ 2015 Nunes H →組織学的にNSIPと診断した症例の検討:特発性NSIPよりもUCTD-NSIPの方が予後が良い.

ではIPFに限ってみてはどうか?
Kim Chest 2015 UCTD strict definitionをみたすもの. IPF 8%, NSIP 26%
UCTD(-)IPF vs UCTD(+)IPF
UCTDをみたすIPFの方が予後良好.
外科的肺生検を施行したUCTD 58例.50%NSIPUIP41%
UCTD-NSIPよりもUCTD-UIPの方が予後不良.UCTD-IPは組織パターンによって予後が異なる.

LD-CTDについて
診断基準の特徴は肺病変が主体ということ.膠原病を疑う症状,症候が診断基準に入っていない.組織所見が診断基準に入っているのが特徴.
Omote Chest 2015  外科的肺生検を行い,LD-CTDの血清学的診断基準を満たした44例について.57%UIPNSIP30%

LD-CTD-UIP vs LD-CTD-NSIP
組織所見別予後は NSIP>UIPパターン

AIF-ILDについて
診断基準の特徴:体重減少など非特異的な症状が入っている.炎症所見は臨床的に意味のあるタイターや,比較的疾患特異性の高いANCAなどの自己抗体が入ってる.
2005-2008年連続200例 ⇒152例 IPF 29%  AIF-ILD 32%  CVD-IP 19% (もともと膠原病もどきが集まりやすい病院?)
予後:AIF-ILDはほぼIPFに一致.画像および組織パターンはUIPが多い.

まとめ
各診断基準と予後との関連(IIPs全体)
Corte criteriaのみがGAP scoreで補正すると予後良好と関連
Assayag Respir Med 2015


IPAF interstitial pneumonia with autoimmune features
様々な疾患概念を統一したもの.2015ERJ報告
A臨床的 B血清学的ドメイン,ANCAは入ってない.一番の問題点は,UIPパターンがIPAF診断基準に入ってないこと=画像および組織学的にUIPパターンを除外する方向性が見える.
1報 Oldham JM ERJ 2016 144例のIPAFIPF 18% NSIP 30% COP 60%
肺生検を行った7割がUIPであった.

問題点は後ろ向き研究であるということ.前向き研究が必要.



2017年3月30日木曜日

第414回熊本チェストカンファレンス

2017年3月16日

教育症例
78歳の女性.主訴は咳嗽.WBCの増多なし.炎症所見は乏しい.
右上葉の腫瘤陰影.
縦隔リンパ節の腫大があり,肺内陰影と縦隔リンパ節は一塊となっている.
リンパ節は内部がlow density(単純CTのみ).
塊状陰影周囲にすりガラス影あり.

2か月後肺内の腫瘤影ははっきりせず.しかし縦隔リンパ節は更に腫大.
縦隔に空洞性陰影?

鑑別診断
肺癌,縦隔腫瘍,異所性甲状腺腫,その他縦隔リンパ節の所見より結核も考えておくべきとの意見あり.

診断は結核
喀痰塗抹G2号,TB-PCR陽性,MGIT陽性.
→気管支結核を合併しているのではないかとの意見あり(同意).

解説
結核のリンパ節病変
CT 像としての報告
1)右気管気管支リンパ節,右傍気管リンパ節に好発 する.これは縦隔リンパ流が右縦隔リンパ管や胸管に注 ぐためとされている 2)内部の乾酪化,膿瘍化壊死病巣に一致して中心部 に不均一な低濃度領域を認める
3)炎症性の血管増生のため造影にて辺縁部が不規則 な厚さで強調される15).
4)結核性縦隔炎に線維化を伴い縦隔近傍の脂肪織が 消失する16)
金地ら 日本呼吸器学会誌 39(11) 2001
http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/039110857j.pdf
空洞→脂肪組織の消失とは驚いた.


症例提示
症例1 74歳,女性
主訴は咳嗽
DMあり.HbA1c 8.0%
WBC 4200/μl,Neu 66.5%, CRP 0.39 mg/dl,sIL-2R 6000

肺内に多発粒状影あり.肺門縦隔リンパ節腫大

鑑別診断
リンパ増殖性疾患,サルコイドーシス,Miliary TB,IgG4関連疾患,

PET-CT :肥厚した胸膜にuptake,両肘,右臀部皮下,左前額部などにもuptakeあり.(触診では可動性あり,圧痛なし,餅のような柔らかさ)
血清ACE, リゾチームも増加.
BALにてLy30%,CD4/8 6.03

skin biopsy+EBUS-TBNAにてSa症と診断.肺,皮膚,心臓に病変あり.

症例2
87歳,男性
関節リウマチにて,MTX, steroid投与(PSL 5mg/day, DXM注 2.5mg 2週間毎)

主訴は発熱
胸部単純X線にて両側肺野に多発性の浸潤影あり.結節のようにも見える.陰影はかなり大きい.
CTRX,MEPM,VCMに無効.
空洞形成あり

bacterial pneumonia, Septic emboli, fungal infection, PCP, 放線菌,Nocardia, TB, tumor(MTX関連リンパ腫など),GPA
(Actinoなら多少抗菌薬が効くでしょうとのコメントもあり)

診断は肺クリプトコッカス症
クリプトコッカスネオフォルマンス抗原 1024倍
経皮針生検生検針よりクリプトコッカス陽性
髄液検査は行っていない.
HTLV-I抗体の測定は行っていない.

cavitationは30%に見られる.
免疫抑制患者の方がcavitationつくりやすい.

RFが陽性だとクリプトコッカス抗原が偽陽性になることもあるとの意見もあった.


2017年3月29日水曜日

2016年呼吸器学会総会 NTMに関する講演より

記憶が定かでないので誤記の可能性あり

ランチョンセミナー
NTM
ゴルドネ99%が臨床的にコンタミと考えられている.ゴルドネの診断は培養3回陽性,塗抹1回陽性など診断基準を厳しくすべきか.
M. avium
M. intracellulare
M. chimaera

M. intracellulareの患者にchimaeraあり.しかし日本ではchimaeraはきわめてまれ.

MAC増えている.abscessusも増えている.
M. abscessus ほとんど治療に反応しない.
M. massiliense マクロライドに反応性良い.
Erm遺伝子が,マクロライド曝露により活性化され,マクロライドの結合阻害.
M. abscessus species abscessus  感受性試験で感受性があってもすぐに耐性化.


(参考文献)


Massiliense 菌陰性化88%AJRCCM 2011: 183;405
NTM
10万対14.7  2014年有病率100を超える.日本は世界でも有病率,罹患率高い

Wallace Chest 2014; 
投与中の再排菌 14.1 73%再感染
治療終了後の排菌 48% 75%再感染
IFNγ中和抗体陽性  複十字病院の100例以上のMAC症例にて抗体価の上昇なし.
検査の特徴はQFT検査陽性コントロールが上昇せず「判定不可となる」


治療
線維空洞型
NBタイプ
一側肺の1/3を超える
BEが強い
排菌量が多い
喀血など症状が強い

複十字病院
CAM耐性90例 CAM単剤,CAM+キノロン,EBなし,などが6割を超える
5生率 71%
耐性菌の問題: CAM単剤,CAM+キノロン,EBの中止
                EB 15mg/kg 視力障害0.3%
北米の報告も似ている.専門医でありながらATS/IDSAのガイドラインに従っていたのは13%,耐性を誘導しやすいレジメンを行っていた.

Opeについて
複十字病院は月2-3例.増加傾向にある.RCTはできない.

新しい薬剤
Arikace  リポゾーマル化アミカシン.吸入で使用. Phase III on going

NB type
CAM+EBのレジメン

午後のシンポジウム

線維空洞型  CAM 1000mgRFP 600mgEB 15mg/kg連日
NB型    CAM 1000mgRFP 600mgEB 25mg/kg3
Chest 2014;146:276-82
180例のNB MAC  菌陰性化率は 連日で88%76%が副作用で間歇へ),週3回で85%3%が副作用で連日へ)
Chest 2015;191:96-103
217 NB MAC 菌陰性化率は 連日で76%46%が治療変更),週3回で67%21%が副作用で治療変更).週3回⇒EB中止は非常に少ない.
AZMCAMで菌陰性化率の差はない.菌量の多い患者は間歇両方の効果乏しい.
※間歇療法を考慮する患者:NB type,喀痰塗抹陰性,初回治療,高齢女性,EB試用期間150

CAM, EB, RFPMFLX30%程度が菌陰性化.MFLX開始⇒菌量が少ない患者に効果が期待できる.

アミカシン吸入⇒5人に1人が菌陰性化?
L-AMK 44%菌陰性化
クロファジミン:フェナジン色素の1種,脂溶性で抗酸菌DNAに結合.副作用として消化器症状,色素沈着あり.
クロファジミン+EB+CAM or AZM100%菌陰性化


STFX, MFLX >LVFX


NTM講演 近畿中央病院
播種型NTM   診断のポイントQFT判定不可になるときは,抗IFN-γ抗体の測定を!
HOT Tub lung
BALにてCD4/8がきわめて高い.
HOT Tub lung4症例.いずれもaviumで,類似の菌遺伝子型.欧米をみてもaviumが多いようだ.
M kansasii
横ばい.男性の喫煙者.地域集積性が高い.堺.薬剤感受性.RFPのデータのみチェックを.RFPが重要.耐性なら専門病院へ.
M. abscessus
中年以降の女性に多い.もっとも予後不良のNTMIPM/CS, AMK, CAMが有効.現在3亜種に再分類.Massilienseが予後よい.入院させてCAM+AMK+IPM/CS連日投与1ヶ月.その後MFX, STFX, FRPM, RFP, EBなどをCAMに併用.外来で前述のレジメンに週2-3AMK, IPM/CSを行うこともある.