2013年2月5日火曜日

High-Frequency Oscillation in Early Acute Respiratory Distress Syndrome
N Engl J Med 2013.
Niall D. Ferguson, M.D., Deborah J. Cook, M.D., Gordon H. Guyatt, M.D.,
Sangeeta Mehta, M.D., Lori Hand, R.R.T., Peggy Austin, C.C.R.A.,
Qi Zhou, Ph.D., Andrea Matte, R.R.T., Stephen D. Walter, Ph.D.,
Francois Lamontagne, M.D., John T. Granton, M.D., Yaseen M. Arabi, M.D.,
Alejandro C. Arroliga, M.D., Thomas E. Stewart, M.D., Arthur S. Slutsky, M.D.,
and Maureen O. Meade, M.D., for the OSCILLATE Trial Investigators
and the Canadian Critical Care Trials Group*

 
背景
高頻度振動換気(HFOV)が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)において成人死亡率を低下させたことを示唆した以前の試験は、旧式のコンパレータ―換気戦略と小さいサンプルサイズにより制限があった。
方法
5カ国の39ICUで行われるマルチセンター、無作為対照試験.新規発症の中等症から重症のARDS成人患者を,HFOVターゲッティング肺補充療法群,またはコントロールのlow tidal volumes high PEEPによる肺補充療法群の2群に無作為に割り付けた.
主要評価項目は、院内全死因死亡率であった。
結果
データをモニタしている委員会の勧告により、計画していた1200例の患者のうちの548例がランダム化した後、試験は中止された。
試験開始時2つの研究群はよくマッチしていた。
HFOV群は、HFOVを受けた日数が中央値で3日間であった(四分位数間範囲、28; 更に、コントロール群の273例の患者のうちの34例(12%)は、不応性低酸素血症に対してHFOVを行った.
院内死亡率は、コントロール群の35%と比較して、HFOV群は47%であった(HFOVによる相対的な死亡リスク1.33; 95%CI1.091.64; P=0.005)。
この所見は、酸素化,または呼吸コンプライアンスにおけるベースラインの異常値とは独立していた。
HFOV群の患者はコントロール群と比較してより多くのミダゾラムを投与された(199mg/日[四分位数間範囲、100382]対141mg/日[四分位数間範囲、68240]、P < 0.001).HFOV群はコントロール群と比較してより多くの神経筋遮断薬を投与された(83%68%P < 0.001).
加えて、HFOV群は、コントロール群と比較して血管作用薬をより多くの患者に投与され(91%84%P=0.01)、より長期間投与された(5日対3日、P=0.01).
結論
中等症から重症のARDSの成人において、HFOVの早期使用は、low tidal volume high PEEPの換気戦略と比較して、院内死亡率を低下させず,院内死亡を増加させる可能性がある。

Introduction
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、重篤な疾患によく見られる合併症である。
死亡率は高い、そして、生存者はしばしば長期的合併症を有する。
機械的人工換気はARDS患者の生命を維持するが、それは肺損傷を永続させる。
基礎研究によると,各呼吸サイクルによるlung unitsの反復過伸展または虚脱が局所および全身性炎症を起こし,それが多臓器機能不全と死亡の一因となることを示唆している.
これらの所見に一致して,より小さい一回換気量(12mlに対して6ml/予測体重kg)の使用とより高い終末呼気陽圧(PEEP)を支持する臨床試験データがある。
しかしながら、死亡率は高いままである、そして重症ARDSの場合,付加的な治療法が肺を保護するために必要である。
そのようなアプローチの一つが高頻度振動換気(HFOV)である。それは非常に高い頻度(315呼吸/秒)で,非常に小さい一回換気量(約12ml/kg)を送る方法である。
以前のARDS成人患者におけるHFOV使用の無作為試験は,この戦略が酸素化と生存の改善に寄与することを示唆した.しかしこの試験の限界は,サンプルサイズが小さく,コントロール群が旧式の換気戦略を行っていたという点である.
従って、従来の機械的人工換気に対し十分な反応を呈しない患者におけるHFOVの頻繁な使用と,疾患経過のより早期の段階におけるHFOV使用頻度の増加にも関わらず,この方法は、成人のARDSに対する証明されていない治療法のままである。
従って我々は、新規発症,中等症から重症ARDS患者において, HFOV群と通常の換気戦略であるlow tidal volumes high PEEP群とで比較検討を行った。

Discussion
重篤な不応性低酸素血症患者だけに使われるHFOVに関して、この多施設共同無作為試験の主要な発見は、中等症から重症のARDS患者の間で、HFOVの早期使用がsmall tidal volumes + high PEEPを使用した換気戦略よりも高い死亡率と関係していたということである。
HFOVは、より高い平均気道内圧と相関し、鎮静剤、神経筋遮断薬と血管作用薬のより大きな使用と関連した。
我々はたとえ事前に予想された中止閾値に達しなかった場合であっても、HFOVにおいて死亡率が増加したため,早期に試験中止を行った。
危険性(または有益性)を基にして早期に終了した試験は一般的に効果の大きさを過大評価する。
我々は、3つの理由のために本研究の終了を選択した:
94300例と500例の患者の登録の後行われた3つの連続的な分析においてHFOVの死亡率の一貫した増加が認められた;
HFOV群において血管作用薬使用の増加は、より良好な酸素化と肺補充によっても抑制されない障害の機序を示唆した;
そして、その影響は十分に大きく,初期のHFOVが死亡率を上昇させなかったとしても、死亡率を低下させることはないと我々は結論した。
我々は登録を続けることの有益性はほとんどなく,むしろ危険にさらすことになると考えた.
我々の結果は、HFOVの生理的な理論根拠や,動物における研究結果と矛盾する。
HFOVの有益性が観察された動物研究において、肺損傷は、生理食塩水洗浄により誘発させた.HFOVの有益性が観察された動物研究において、肺障害モデルは生理食塩水洗浄によって誘発されたーサーファクタント欠損によるhighly recruitable modelー.従って,我々の結果は直接recruitabilityheteroであるヒト成人のARDSに適応できない.我々の結果はまた、成人の以前の無作為試験の結果と対照的であった。
考えられる説明(それは我々の試験の動機であったが)としては、以前の試験において,コントロールとして潜在的に有害であることが現在明らかな換気戦略を使用したことである。
我々は、現在の換気戦略がコントロールとして使われた時,HFOVにおける有益性を見出すことができなかった。
この死亡率に関して有益性がないことは、現在報告されている別の試験の結果と一致している; その試験はイギリスで行われたものであり、現在の標準的肺防御が提案された.しかし命令されたものではなかった。
より驚くべきことは危険性に関する我々の結果である。
いくつかの考えうる機序は、HFOVにおける増加した死亡率に寄与する可能性がある。
より高い平均気道内圧は、静脈還流を減少させるか、直接右室機能に影響を及ぼすことによって、血行力学的な異常をもたらすかもしれない。
血管拡張性鎮静薬剤のさらなる使用は、血行力学的異常の一因となる可能性もある。
さらに、我々はHFOVに関連して増加した圧外傷の可能性を無視することができない。
我々が選んだHFOV戦略は,前臨床医学データと前向きな生理的研究によって支持され,用量ー圧曲線の収縮脚における平均気道内圧を調整し,振動量を制限するために可能な限り最も高い周波数を使用することを目的とした.
このアプローチは比較的高い平均気道内圧をもたらした。たとえ我々の研究の様に,平均気道内圧が1:2の吸気ー呼気比で供給されることを考えても、HFOVの間、開いている気道で測定される圧力は気管で測定されるそれらよりいくらか高かった。
低い平均気道内圧を使用するHFOVプロトコル、吸気ー呼気時間の異なる比率またはより低い発振周波数は異なる結果をもたらしたかもしれない。
本研究の長所はその方法論的な厳格さである.すなわち最も有用なエビデンスに基づいて両群における患者の肺ユニットを開くことをデザインしたプロトコルの適用と,数カ国のセンターにおける登録である.それは我々の所見の一般化を強調するものである.      
我々はHFOVの使用に関する学習曲線があることを認識していたので、HFOに関する経験のあるセンターにほとんどの患者を登録した.したがって治療効果と施設毎の登録患者数の間に関連を認めなかった.
我々の結果は、成人においてARDSの管理のために、HFOVの早期使用に対する重大な懸念を引き起こす。
致命的な不応性低酸素血症患者に使用されるときでも、本研究の結果はHFOVの有益性についての不確実性を増大させる.
結論として、中等度から重度のARDSの成人において、HFOVターゲッティング肺補充の初期の応用は、 low tidal volume + high PEEPを使用し不応性低酸素血症の場合だけHFOVを許す換気戦略と比較して,死亡率を低下させず,有害かもしれない.