2013年4月30日火曜日

4月25日 第375回 熊本チェストカンファレンス

2013425日(木)19:00
375回熊本チェストカンファレンス定例会

教育症例:朝日野病院
63歳.弁当を食べた後嘔吐,下痢を繰り返し,その後胸苦しさ出現..
BP 104/68PR 91/min, BT 37.7
血液データはWBCLDHの上昇.BGA PaO2低下.
胸部単純X線:縦隔の拡大と,気管周囲の透亮像.
胸部CTにて皮下気腫,縦隔気腫,右胸水貯留.気胸はごくわずか認める程度.
答えは予想通りBoerhaave syndrome(特発性食道破裂).

縦隔内限局型,胸腔内穿破型.右胸水の割合は数%
Emergency疾患なので注意!

症例提示
症例1
熊本大学放射線科
51歳,女性.胸腔内前胸壁にextrapleural sign陽性の境界明瞭で辺縁整なtumorあり.
鑑別診断は
MPM(限局型),SFTneurinomahemangioma, 肉芽種性病変(TBを含む)など.
CT :腫瘤内CT値は平均23.2 HU, 石灰化なし,MRI T1WI 筋より高信号,脂肪抑制T1WIで抑制されない.T2WI 筋より高信号,DWI 一部高信号,ADC値周囲組織より上昇,拡散制限乏しい.Dynamic study 徐々に増強される.FDG-PET SUVmax=1.3の軽度集積.
これらの所見から①線維化組織が豊富?,②血流は入り込んでいる(しかしhypervascularではない),③脂肪抑制のデータより脂肪成分は少ない

症例3
熊本地域医療センター
53歳,男性
既往歴にBA(無治療).感冒様症状後の呼吸苦.肺炎疑いにて入院.
聴診所見はwheezes
WBC 12900CRP 1.02TP 8.6IgG 3526ANA陰性,抗SS-A, SS-B陰性,sIL-2R 969
画像は粒状影,perilymphatic distributionmediastinal lymphadenopathy (癒合傾向なし),気管支壁肥厚.

鑑別診断:Sa症,PLClymphomamyelomapneumoconiosisAEPIgG4関連疾患,Castleman`s disease,肺水腫,膠原病関連肺疾患,肺水腫など

BALCD4/8=0.82, Ly 52%, TBBにて plasma cell+Eos, plasma cellIgG4陽性,CD138陽性
→腹部CTの読みができていなかった.左腎盂および腸骨動脈・下行大動脈周囲の軟部陰影あり.
血清IgG41320 mg/dLと著明に増加.

答えはIgG4関連疾患.

後腹膜線維症はよく知られているが,「左腎盂および腸骨動脈・下行大動脈周囲の軟部陰影」→IgG4関連疾患を思い浮かべることができなかった.
●総説→plaza.umin.ac.jp/~s-igaku/DATA/60_04/60_04_02.pdf
●NEJM総説→http://edukobiyori.blogspot.jp/2012/05/igg4n-engl-j-med-2012366539-51.html

Discussion
PSL 5mg/day服用中.減らすとIgG4上昇.
Steroidはいつまで続けるか?

症例4
熊本大学呼吸器内科
84歳,男性
時々咳が出るようになった.3ヵ月後近医受診.右下肺野に腫瘤影を指摘.紹介.WBC 6900/μL, CRP 4.82 mg/dL,β-D glucan上昇なし,アスペルギルス抗原陰性,クリプトコッカス抗原陰性,プロカルシトニン 0.08, sIL-2R 884
画像はrt S6-S9にかけてすりガラス影,結節影

鑑別診断:感染症 Actinomycosis, Nocardiosis, 抗酸菌症,LC, lymphoma

経過:rt B6よりTBLBにてmalignancy陰性,擦過,洗浄いずれも陰性
ところがrt S6組織のGrocotto染色にて糸状菌を認めた.多核巨細胞,好酸球浸潤あり.
さらにアスペルギルス沈降抗体陽性であった.

答えは肺アスペルギルス症.

Discussion
IPA, CNPAなどどのような疾患の範疇に入るのか?.多核巨細胞はどのようなタイプのものか(たとえば異物=誤嚥に対する反応?)さらに,このようなimmunocompetent patientにアスペルギルス症が発症する頻度は?