2016年8月30日火曜日

アスピリン喘息(AERD or N-ERD) 福岡にて講演会

製薬メーカーの講演会.AERDをテーマにしたものではないが・・
呼吸器フォーラム in 九州
2016年8月27日ソラリア西鉄ホテルにて

谷口正美先生

ICSを使用していない症例で重症喘息に関連する因子
IgEが高い
真菌に感作されている

ICSを使用している症例で重症喘息に関連する因子
女性
BMIが高い
痰のからむ咳(⇒好酸球性気道炎症が強い)

ENFUMOSA, SARP,相模原病院 いずれのデータも,難治化に関連するものは,長期の罹病期間,女性の肥満者,アスピリン喘息 (肥満の基準⇒日本ではBMI 25以上でもよい?)

難治性喘息は,AERDとATAで分けて考える.
難治化の最重要因子はNSAIDS過敏(AERD)である.

AERDという名称は米国からの提唱.
アスピリンという言葉を入れると誤解が生まれる.ヨーロッパ,日本はN-ERD(ナード)を提唱.ただしこの用語は他疾患との誤解を招くかも.米国からの返事待ち.
N-ERD; NSAIDS-exacerbated respiratory disease

AERDに対するNSAIDS投与の実際
アセトアミノフェン 500mg以上はリスクがある.300mg以下だと発作を誘発しない.
セレコックスはもっとも安全(ハイペンなどはselectivityがやや低い).
セレコックスは世界で3例発作が悪化(喘息症状がありコントロールが悪い症例).
ただセレコックスにて悪化といえるのか?全く大丈夫という専門家の声もある.
ソランタールは効果が乏しくあまり使われない傾向.
湿布について.MS冷湿布,温湿布は安全.

アスピリン喘息は,30歳代で鼻症状にて発症.喘息,NSAIDs過敏性が数年以内に生じる.
鼻症状.好酸球性鼻茸,副鼻腔炎は篩骨洞周辺.したがって嗅神経の障害.匂いがわからないなど.
気管支以外の症状が問題.中耳炎,胃腸炎.異型狭心症の症状もある.胃腸炎は急性腹症のよう.腸管に浮腫.PPIやブスコパンは効かない.ボスミンやステロイドが効く.

アスピリン喘息の病態
2013年日本内科学会誌のシェーマ
COX-2の抑制⇒PGE2(抗炎症作用)の低下

尿中LTE4 非常に高い症例のsourceは鼻茸

○少量のASA(100mg以下)にて誘発される.
○アスピリン誘発後に不応期が数日間生じる.
ウイルス感染を疑いこれまで様々調べてきたが,明らかなものは見つからなかった.
⇒血小板仮説

アスピリン喘息は血小板の活性化が特徴的.
AERDでは血小板とEosの付着が増加(⇒循環血漿中に)
AERDにおいて血小板活性化と尿中LTE4は相関.
血小板はLT産生経路の後半が存在.CyLTRもある.
P2y12のblockerの治験中. パナルジン

ゾレアはアスピリン喘息に良く効く.ほぼ100%.最もゾレアが効くgroupはアスピリン喘息と言い切ってもいい.肺機能の改善効果は乏しいが,自覚症状(鼻症状も含めて)が著明に改善する.
効果の発現が速い,投与したその日に発現することもある.
尿中LTE4,尿中PGD2M(肥満細胞の活性化を示す)のいずれも著明に低下する,ゾレアを投与してもEosは減らない.mast cellに作用している?

特発性蕁麻疹にゾレアが著効する.喘息に対してより効く.非常にquickに効く.投与して翌日に蕁麻疹が消えることが多い.
⇒アスピリン喘息と効果がよく似ている.アスピリンと共通の機序を介しているのではないか?

難治化に関するアレルゲン.1000名以上の患者の解析を相模原病院で行った.
ダニは重症化しにくい.アスペルギルス・レストリクタスは重症化に関与.

ABPAについて
アスペルギルスはプロテアーゼ活性を有する抗原を多種有する.体温で発育しやすい性質.水回りにはいない.換気の悪いところ.喘息症状よりもリモデリングの症状(咳,痰)が大きい.ゼーゼーあまりいわない.ABPAはAsp喘息に比べて気道可逆性が不良.
アスペルギルス陽性率は西高東低.
「線維化期」⇒実際は線維化ではなく末梢の嚢胞性変化が特徴.
ABPAはAsp1,2に対するIgE抗体の特異性が高い.⇒まだ保険適応なし.
中高用量ICS吸入中のBAで新規にアスペルギルスに感作されるcaseが2000年以降にある.

EGPA
好酸球性細気管支炎をきたしやすい.
過敏性は軽度で,可逆性が低い,咳,痰,息切れの症状が主.
Mepolizumabが非常によく効くだろう.Eos低下,ANCAも低下.国際治験中.

最近,大発作症例は減っているが,女性,ペット飼育,喫煙のある人の割合が増加.
アドヒアランス不良,軽症例.これらの症例は(SABAのみを使って増悪する可能性があるので)あえてSABAを使用せずレリーバーの機能を持ったICA/LABAを処方するのが良いだろう.