2020年10月29日木曜日

PTTM

2019年内科学会学術講演会CPCより

PTTM  pulmonary tumor thrombotic microangiopathy

症例は60歳代の男性、主訴は労作時呼吸困難、咳嗽

縦隔リンパ節腫脹、肺内は気管支血管側に沿った微細粒状影。

診断は

1.低分化型腺癌(印環細胞癌)(骨転移、癌性リンパ管症、リンパ節転移)

2.PTTM


1991年 von Herbay  Cancer

「悪性腫瘍において、肺の亜区域枝よりも末梢の細動脈への腫瘍塞栓に引き続き、内膜の線維・細胞性(fibrocelluar)肥厚により特徴づけられる病態であり、腫瘍塞栓部での凝血亢進と内膜肥厚により、肺動脈内腔の狭小化、あるいは閉塞をきたし、肺高血圧をもたらす。」

<PTTMの病理学的な特徴>

①細動脈の線維細胞性内膜肥厚     →PTTMの最も特徴的な所見

②腫瘍塞栓

③血栓の器質化、再疎通像

〇肉眼でも認識しうる太い肺動脈に認められる腫瘍塞栓→

〇血管外の浸潤巣の一部にみられる腫瘍塞栓     →これらはPTTMから除外される。


*PTTMにおける内膜の線維細胞性肥厚について

BMC Cancer 2014, 14:14

血管内の腫瘍塊のみでは肺高血圧症を惹起できない。血管内皮障害+腫瘍の内膜への付着により肺高血圧症がおこるとされる。


<PTTMの機序>

①細動脈レベルの腫瘍塞栓

②腫瘍細胞の内膜付着、内皮障害

③腫瘍細胞が局所でtissue factorなどの因子を放出

㋐凝固系の活性化⇒血栓形成

㋑炎症性メディエーターやVEGFを含む成長因子⇒血管内膜の線維細胞性肥厚→血管内膜の線維化

㋐㋑により血管内腔の狭小化・閉塞 →  肺高血圧症  DIC


<PTTMの進展経路>

1.大静脈系へ腫瘍が直接浸潤→右心系→肺動脈

2.腫瘍の所属リンパ管浸潤→胸管→上大静脈→右心系→肺動脈

本症例は原発巣の静脈浸潤が明らかでなく、リンパ管侵襲が高度であり、2の機序が考えられる。


かつて担当したcase

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17539970/

その他の報告

http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/049020122j.pdf