2012年5月1日火曜日

5/1抄読会

An Association between Neutrophils and Immunoglobulin Free Light Chains in the Pathogenesis of Chronic Obstructive Pulmonary Disease
AJRCCM 2012: 185; 817-824.





要約
研究の根拠
好中球は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の鍵となる細胞であり、そして、COPD患者の痰と肺組織にて増加する.
興味深いことに、免疫グロブリンfree light chain(IgLC)は、好中球の寿命を延長させることが可能である;
従って、IgLCは慢性炎症に関与する可能性がある。
目的:
この研究において、IgLCとCOPDの関係を調べた。
方法:
我々は、異なるネズミ肺気腫モデルでIgLCの存在を調査した。
それぞれ、マウスとCOPD患者からの血清IgLCレベルが,ウェスタンブロット解析とELISAによって測定された。
肺組織中のIgLCレベルは、免疫組織化学で測定された。
FACSと免疫蛍光分析法を用いて、IgLCとヒトの好中球の結合を検出した。
IgLCとincubation後の好中球によるインターロイキン-8(CXCL8)放出は、ELISAにて測定した。
F991(IgLCアンタゴニスト)の効果は、5日のタバコ煙曝露の後、ネズミ肺で好中球流入に関して調べられた。
測定と主要な結果:
制御マウスと比較して,たばこ煙に曝露したマウスの血清と,タバコ煙抽出物にて処理したマウスの血清においてIgLCが増加していた.
COPD患者は、健常ボランティアと比較して血清IgLCと肺組織におけるIgLCの発現が増加した。
興味深いことに、IgLCは好中球と結合して、活性化しCXCL8を放出させた。
F991はIgLCの好中球への結合を阻害して、ネズミ肺におけるタバコ煙によって誘発された好中球流入を減らした。
結論:
本研究はCOPDの病態生理学で初めて好中球とIgLCの間の関係を示した。そして、それはこの慢性疾患の治療ターゲットへの新たな道を開くことができるであろう。

※COPD患者の肺組織において,κ,λ chainの局在を免疫染色にて調べた.いずれの軽鎖ともlarge airwayの周囲と濾胞内に認められた.

IgLCには好中球性を惹起する可能性があること,自己免疫作用を増強する作用,抑制する作用などさまざまである.以下はEditorialより一部抜粋.

の論文が重要である理由として,現在,COPDにおいてBリンパ球が病因となりうることを示唆した新しいエビデンスが増えていることにある.
IgLCはB細胞由来のプラズマ細胞より産生される.そして健常人では体液中に普通に認められる.生理学的には一日約0.5g産生されている.
B細胞は重鎖を補完するのに必要な量よりも約40%多くIgLCを産生し,細胞が刺激されたり病気の時には,さらに多くのIgLCを産生することができる.
IgLCはenzymatic proteasesであり,直接白血球を刺激し,その生存を延長させる.また多様な細胞,組織にて酸化ストレスを誘導し,心筋細胞や腎上皮細胞に直接障害を与えることから,COPDによくみられる合併症である心不全や腎機能障害におけるIgLCの関与が疑われている.IgLCのレセプターとして可能性があるものは,アイソタイプにより異なるかもしれないが,まだ同定されていない.
しかしもっとも重要なことは,この研究が,COPDと,自己反応性抗体の役割における,免疫調整不全の性質について明らかにしたことである.
なぜ重要か.これには2つの理由がある.第一は,進行したCOPDにおいて,B細胞数の増加とリンパ濾胞の出現がここ数年明らかにされてきたこと.IL-10分泌B regsとして作用するB細胞は,炎症を鎮めることができるが,B細胞は自己免疫を引き起こすのに十分なIL-6を分泌することもできる.
免疫グロブリン軽鎖の編集(editing)はB細胞性の自己反応を鎮める主要なメカニズムである.軽鎖が選択的に自己抗体の形成を抑制するーすなわちIgλ鎖がκ鎖に比べてより効果的な自己反応性B細胞のサイレンサーであるーというエビデンスがある.軽鎖を介するこの抑制作用がCOPDでは失われてきたのであろうか?