2012年5月28日月曜日

Case 2-2012: A 63-year-Old Woman with Dyspnea and Rapidly Progressive Respiratory Failure

New Engl J Med 2012; 366: 259-269.
68歳,女性.
Poland syndrome (agenesis of the right breast, pectoralis muscle, and the third and fourth costal cartilages)があり,28年前に右乳房へのsilicone implantの既往あり.入院5年前にgranulomatous polyangitis (Wegener's granulomatosis)と診断,ブドウ膜炎と肺出血による呼吸不全にて,挿管.以後azathioprineとST合剤にて加療.症状改善し,治療開始5か月後にはMPO-ANCA陰性となる.
入院9か月前に,胸部implant部の痛みが出現.saline implantに入れなおしたが,症状改善せず,入院7か月前にimplant除去.入院3週間前に胸壁形成術を行った.更に入院5週間前には労作時呼吸苦と観血的背部痛出現.ANCAは陰性.

入院後撮影された胸部CTにて,多発性の境界不明瞭なGGOやconsolidationを認め,結節性陰影の周囲にground-glass haloを認めるものもあった.胸水は両側に認められ,右のmajour fissure内にloclated effusion.また胸膜や,胸膜直下に多発性の結節あり.
入院後さまざまな抗菌薬投与を行ったが,呼吸状態増悪.入院3日目に挿管.ICU入室.そこで気管支鏡検査を行い,右中葉のBALF回収.血性(ヘマトクリット3%,refference range, 0)で,白血球分画では好中球の増多あり.またhemosiderin-laden macrophageも認められた.fungal infectionを疑う所見はその時に得られなかったが,気管支鏡検査後liposomal amphotericin Bを開始.入院10日目,3日目に行ったBALFのガラクトマンナン抗原indexが1.03 (negative test, <0.5)であることが判明.入院13日目にBALFよりaspergillusが分離された.VCZ開始.入院15日目に死亡.

画像
①右胸壁の病変
②肺病変
まず分けて考えてみるべきであろう.

①の鑑別診断
感染症
NTM (M chelonae, M fortuitum)が最も疑わしい?,その他aspergillus感染,actinomycosisなど.
Vasculitis
ステロイドやcyclophosphamideに対する反応がない,ANCAが陰性であるなど,やや所見は弱い?
悪性腫瘍
breast cancerは画像所見から考えにくい?breast implant capsuleと悪性腫瘍との関係→まれな腫瘍が多い.たとえばanaplastic large-cell lymphoma.しかしこの腫瘍は本症例と異なり,胸壁に浸潤しない.次に考えらえるのが,mesenchymal tumorであり,fibromatosis,やさまざまなsarcoma.sarcomaの中ではangiosarcomaが可能性として最も高い(出血性の胸膜,肺転移をきたす可能性もある).

②の鑑別診断
CT hallo signをきたす疾患
invasive aspergillosis (最初にこの疾患で報告された)
angioinvasiveなプロセスをきたすものは同様の病変を呈する.
すなわち,他の真菌感染,出血性の腫瘍(angiosarcoma, choriocarcinoma, melanoma,osteosarcoma, renal-cell carcionma, Kaposi's sarcoma)や,非腫瘍性のものとして肺の脈管系を傷害するANCA関連血管炎.
また非出血性のプロセスでも,同サインをきたすことがある.すなわち,結節性の肺病変から周囲の肺実質に浮腫や,細胞浸潤を生じた場合である.

検査成績
血清1,3-β-D-glucan
invasive fungal infectionの診断に用いた場合,感度64%,特異度84%.一方

ガラクトマンナンアッセイ
1,3-β-D-glucanと比較し,aspergillus speciesから産生される細胞壁構成成分によりspecificである.
本症例では,血清検査は2回とも陰性で,BALF検体は2回とも陽性であった.この違いは,BALF検体の方が少し感度が高くなるためと考えられる.(血清:感度71%,特異度89%,BALF:感度88%,特異度87%, カットオフ値を>0.5とした場合).


thrombocytopenia
angiosarcoma→Kasabach-Meritt syndrome?

などが議論.

病理診断は
breast implant -associated angiosarcoma with pulmonary metastasis
Invasive pulmonary aspergillosis