2012年5月28日月曜日

COPDにおける細気道閉塞と気腫との関係 JC Hogg

Small-Airway Obstruction and Emphysema in Chronic Obstructive Pulmonary DiseaseN Engl J Med 2011;365:1567-75.

先の日本呼吸器学会学術講演会で講演をされたJC Hoggの論文.今やCOPDの病態を考える上で,気腫よりも細気道病変が重要であることは周知の事柄であるが,細気道の閉塞と肺の気腫性破壊との関係はよくわかっていない.

Abstruct
背景
COPDの閉塞の主要部位は、細気道(直径<2mm)である.
我々は、COPDにおいて細気道閉塞と気腫性破壊の関係について検討した.

方法
我々はさまざまなstageのCOPD患者78例において,2.0~2.5mmの気道数を比較するためにMDCTを使用した。stageはGOLDスケールを使用し,肺移植のために摘出したCOPD患者肺と,ドナー肺(コントロール)を用いた.

MicroCTは、気腫の範囲(平均肺胞径)を測定し,肺気量mLに対する終末細気管支の数と,終末細気管支の最小径と断面積を比較するために用いた.

結果
MDCTに関して、COPD患者からの検体は、コントロール標本と比較して、直径2.0~2.5mmの気道数はGOLD 1期(P = 0.001),GOLD 2期(P = 0.02),GOLD3または4期(P < 0.001)で減少した。

GOLD 4期患者の肺標本のMicroCT所見は、終末細気管支の全断面積の81~99.7%の減少と,終末細気管支の数の72~89%の減少を示した(P < 0.001)。

COPDにおいて,終末細気管支の数と,それぞれのレベルにおける気腫による破壊(平均肺胞径の増加)は、終末細気管支の狭窄化と喪失が気腫の破壊に先行することを示した(P < 0.001)。

結論
気腫による破壊が出現する前に,細気道の狭窄化と消失が出現するという結果は,COPDで報告される末梢気道抵抗の増加を説明することができる。


Fig2A:78例のCOPD患者においてMDCTを施行.各stageのCOPD肺lung pairにおける直径2.0-2.5mmの気道数を計測したもの.
Fig2B:lung pairにおける各気道generationごとの気道総数を示したもの.棒グラフは過去のWeibel(文献16)の行った気管支鋳型標本から得られた結果を示したものである.この標本は2mmの大きさの気道の解析も可能(MDCTは解像度の関係から2.5mmの気道は可能だが,2.0mmの気道はdetectできないことがある).他のグラフは摘出肺からのMDCTのデータである.このグラフからコントロール摘出肺と比較して,COPD摘出肺(GOLD4期)においてCLE(小葉中心性肺気腫),PLE(汎小葉性肺気腫)の2.0~2.5mmの気道が減少していることがわかる.
コントロール肺におけるmean linear intercept(平均肺胞径)の95%信頼区間の上限値は489μmであった.すなわちそれ未満ということは正常の肺胞径と推測される.この表Fig 3Dは摘出肺組織にたいするMicroCT 画像より得られた平均肺胞径と,単位肺容積mLあたりの終末細気管支数との関係を示したものである.CLE (centrilobular emphysema ) phenotypeにおいては,正常肺胞径<489μmの領域においてすでに終末細気管支数の減少が認められている.
micro-CTにて使用された標本に近接する組織より,small-airway profiles数を測定(Panel A),気道壁の厚さを測定した(Panel B).疾患肺における<489μmの平均肺胞径の組織標本において,著明なsmall-airway profiles数の減少(cm2あたり)と,気道壁肥厚が認められた.