2012年5月21日月曜日

IPFに対する3剤療法(Predonisone, Azathioprine, N-Acetylcysteine)の有効性 NEJM

NEJM May 20, 2012
IPFnetからの報告
日本と欧米ではIPFの治療は異なる.欧米では3剤治療をpracticeで行うことがあるようだ.negative data.


背景
predonisone, azathioprine, N-acetylcysteine (NAC)のcombination治療は,IPFの治療に広く行われてきた.この3剤療法安全性と有効性はわかっていない.
方法
無作為二重盲検試験.軽症から中等症の肺機能障害を有するIPF患者を,3群に割り付けた.①3剤治療群,②NAC単剤群,③プラセボ群で1:1:1に割り付けた.primary outcomeは60週の時点におけるFVCの経時的変化.
結果
約50%のデータ(3剤治療群77例,プラセボ群78例)が集積したときに中間解析を施行.3剤治療群はプラセボ群に比べて死亡率が高く(8 vs 1, p=0.01),入院率が高かった(23 vs. 7, p<0.001).これらの結果より3剤治療群には何ら生理学的,臨床的有益性はないことがわかり,independent data and safty monotoring boardは平均32週治療の時点で3剤治療の中止勧告を行った.現在進行中である,NACとプラセボの比較試験は今回報告しない.


文献的考察
●軽症のIPF患者に対する治療調査
50%が2剤 (predonisone, azathioprine)かまたは3剤(predonisone, azathioprine, NAC).
Respir Med 2008; 102: 1342-8.
●2剤併用療法より3剤併用療法のほうがよりよく肺機能が保持される。
 N Engl J Med 2005;353:  2229-42.
→しかしpredonisone, azathioprineにたいするプラセボが含まれなかったので3剤併用療法の有効性はcontroversial.

従って、国際的なガイドラインは、この3-剤併用療法に「弱いno"1または「弱いyes"6という異なった勧告を与えることになった。

1. Am J Respir Crit Care Med 2011;183:788-824.
6.  Interstitial lung disease guideline: the British Thoracic Society in collaboration with the Thoracic Society of Australia and the New Zealand and the Irish Thoracic Society. Thorax 2008;63:Suppl 5:v1-v58.  [Erratum, Thorax 2008;63:1029.]


対象患者
●2011年のATS/ERS/JRS/ALAT statementの診断基準を満たす.
●mild-to-moderate lung-function impairment:
defined as
a FVC of  >50% and
a DLco of  >30% of the predicted value

治療
azathioprineは最大150mg/day
NACは1回600mgを1日3回
スクリーニングはbaseline, 4, 15, 30, 45週

secondary outcome:
the rate of death, time until death, frequency of acute exacerbations, frequency of maintained FVC response, time to disease progression, and a broad panel of other clinical and physiological measures


結果補足
中間解析の時点で,3剤併用群とプラセボ群の間でFVCに有意差を認めなかった(-o.24L vs. -0.23L, p=0.85). 

重篤な有害事象は、プラセボ群よりもより併用療法群で有意に多い(24対8、P=0.001).
死亡9例中8例は呼吸関連死.

 
考察
In the Idiopathic Pulmonary Fibrosis International Group Exploring N-Acetylcysteine I Annual (IFIGENIA) study  NEJM 2005;353: 2229-42.
 
3剤治療を行った唯一の無作為臨床試験
この試験における患者肺機能 %FVC 65.6%, 平均%DLco 43.9% →今回の研究と類似.
併用群の死亡率は9%で今回の研究10%と類似.
いくつかの研究でIPF患者にプラセボを投与したときの死亡率は3.6%-9.0%.これは本研究のデータと類似(2.0%; 95%CI、0.3~13.6).
死亡率が3剤治療群で多かった理由は不明.